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                                    屋久島へ・・・・・

                 

第12回     1000年の旅編


あなたが旅の計画を立てたとする。

すると買い物をしていてもテレビを見ていても、

常に計画中の旅先に

結び付けて考え

たりはしないだろうか。



私はこの半年、屋久島のことだけを考えて過ごした。
洋服を買うときでも「あ、これは屋久島で着よう。」と思った。疲れきっていた時も「これは屋久島で登山をするための修業なのだ。」そう思って耐えてきた。

旅立つ前から心は屋久島にあった。それは「私にとっての幸せ」を意味していた。
何ヶ月か先の、遠くに輝く太陽を見る思いで屋久島を思っていた。遠くとも太陽であるには違いなく、燦然とした光を放っていた。



その光が消え果ようとしている。
この屋久島編を書くに辺り、題名をどうしようか考えた。
そのとき初心に「屋久島に光があるに違いない」と思ったことを思い出したのだ。


そして・・・・・・・・・・・


メインの縄文杉登山が終わってしまったではないか。


ところがだ。

一つのお楽しみが終ってもまた次が待っているのが屋久島の偉大なところである。

縄文杉の下山は標準で4時間半である。
俺たちはその半分で降りる!といってみたものの・・・・・・・・・・

力いっぱい普通の標準の平均の当たり前の  
時間を費やして、元の荒川登山口に戻っていた。







昨日はとてもドラマティックな平内海中温泉にはいった。屋久島は温泉もすべて個性的である。
今日の温泉は尾之間温泉である。

昨日の平内海中温泉とは違い外観はごく普通の銭湯だ。
まあここは「海中」ではなく「室内」温泉である。
しかしたった200円。そしてこの風情に私たちは酔いしれた。
たっぷりあふれるお湯、蛇口からも温泉が出ていることに気付いた。





ここから今日の宿泊予定地である青少年旅行村へ向かう。
地図を見ると屋久島の一番南にある。
かなり先にありそうだ。


必死で原付を走らせる。





だんだん辺りの景色が見えなくなってきた。






すでに時間は8時を過ぎている。

夏とはいえさすがに8時なら夜だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・早くついてほしい。




ちょっと怖くなってくる。



大阪と違い屋久島の道路はほとんど街灯がないのだ。
それにレンタルしたバイクのライト・・・・・・・・・・・これってついてるのかな?なんか暗い気がする。


あ、



なんか看板がみえる・・・・・。









が、それは朽ち果てた建物の看板であった。



余計に怖くなった・・・・・・。








そして悪いときに災厄は喜びを持って被災者に向かってくる。



道がなくなった・・・・・・・・。







もう道を通る車もなく、もちろん通行人もなく、なぜか叢からも虫の声は聴こえてこない。
ここにいるのは私たちだけだった。


不意にMくんがその場で立ち止まった。





「ええなあ・・・・・・。」

「へ?」


「あれ。あんなの初めてみた。」



彼は頭上を見上げている。
私も見上げた。




わあ!





こんな夜空見たことない。



バイクのスピードでは見ることのできない、驚異的な星たち・・・・・・。
バイクのスピードでも見えないし、私の住んでいる本土でも決して見えない。



数兆個の恒星たちよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。









何も言わず私たちはその場に寝転んだ。

もうキャンプ場のチェックインの時間などどうでもよい。
この間まで苦しんでいた仕事など関係ない。

あの星の光はいつ放たれたものなのだろう。私たちが生まれる前に星から旅立った光がようやくここへ到達したのだ。



ハロー!星くん、お疲れ様でした。


アホみたいだけど、本気で星の光に挨拶をしたくなっていた。




あなたは経験ないだろうか。夜空を見上げているときに誰かが絶対にこの質問をするのだ。




「なあ、北極星はどれ?」寝転んだままM君が聞いた。


うまい具合にカシオペア座が出ていたおかげですぐに探すことができた。

「あれか、小さいなあ・・・・・・・・・・・・。暗いし・・・。」
「たしかに。北極星は6等星やからな。」
「でも、あの星好きや。暗いけど、昔から旅人はあの星を探してたんやろ。」
「うん。小さいけどあの光も1000年かけて地球にやってきたんやで。」

「小さいのにみんなに探されてる星があるんやな。」

このMの言葉がずっと心の奥底から消えない。小さくてもみんなに探される光があるのだ。

小さくても愛される光は存在している・・・・・・・・・・。





キャンプ場についたとき、あたりは寝静まっていた。
静かに私たちはテントを張った。酒が飲みたかったけど、何度もバイクで走り回り結局見つからなかった。




テントに入った。




時刻はすでに23時を過ぎていた。
二人とも今日の旅を心に浮かべながら寝袋に入る。





「寝られへん・・・・・・・・・・。」Mが叫んだ。
「わお!なんでやねん?」
「目をつぶるとあの道が浮かんでくるねん。」もちろん縄文杉にいたるまでのあの原生林の道だ。
「俺もやねん。俺はあの星空が浮かんできて、なんか寝るのがもったいない。」

二人とも神経を高ぶらせていた。

どこからか潮の遠鳴りが聞こえてきた。



                                           
         

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