トップページ  掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール

 

  

                                    屋久島へ・・・・・

                 

最終回  こんなところは嫌だ!編

最終回なので長くなりました。でもどうしても最後までお読みいただきたいなと思います。
渾身の思いをかけて書きました。
  

「もうこんなところは嫌だ、早く帰りたい。」
私の心の中でそんな叫びが不愉快な余韻を引き連れて鳴り響いている。
眼下の光を見ながら。






実はお金を払っていない。散々迷ったおかげでキャンプ場の事務所が閉まっていた。
そして・・・・・・白状するが・・・・・・・・・・お金を払わないまま私たちはそこを立ち去った。
昨日星を眺めたところへ行ってみる。
道が消えた先には海が広がっていた。
星が消えた向こうにはすでに真っ青になった空がそこにはあった。
では私たちの旅が消えた先には何が待っているのだろう。



「行くで。最後から二番目の思い出を作りにいこうや。」
「そうや、早朝にあそこにいかんと!」


走り出してすぐにその場所はみつかった・・。
ここや・・・。ほんまにあった。
こんな素敵なところ、大阪には絶対にない。屋久島には二つもある。
       
 湯泊温泉 



波打ち際の温泉。

昨日の平内海中温泉は人が多くて写真は無理だったが、今日は早朝のため貸切である。
「映画『十五才」』で早朝に大介が入っていたのがこれやねん。」
「そうやったな。でも、なんか変じゃない?」
「おれも思ってた。なんか映画ででてたのとは形が違う。」


まあそれでもいい。こんな条件が潤沢な空間を独占しているのだから。
(その後の調査により、映画が撮影されたときと私たちが訪れたときのちょうど中間の時期に改装されていたことが分かった。)



「なあ、このまま探検せえへん?」Mが言った。
なんということを言うのだ。早朝から裸で海岸をうろうろするなんてとんでもない!
そんなおもろいこと、するに決まってるやんけ。



温泉の向こうに小さな道ができている。私たちは旅の高揚感から自分では平気ではあるけど、傍から見れば許しがたいスタイルでそこを歩いた。



「うお!ある!」
「ほんまや、ある!新発見や!」




どっぼ〜ん!



そこにはもう一つ、

小さな温泉が沸いていた
のだ。






温度は向こうよりぬるめだった気がする。というかかなり冷たい。
もしかしたらただの水溜りかもしれない。
でもこの時は「湯泊温泉 2」と信じていた。

本当のところはどうなのだろう。ただの水溜りなのだろうか。
それともれっきとした「2」なのだろうか。
調査はしていない。真実を知りたくないという弱気がブレーキを今でもかけている。




最後から2番目の思い出を作った私たちは、いよいよ、屋久島で最後の思い出を作りに出発した。
M君の主張するところによると、屋久島で最美の・・・・・・・・・・・・・

そして私の知る限り日本最美の森。


言うまでもない。
白谷雲水峡
である。
     

朝、温泉で騒いでいた私たちはなぜか一様に無口だった。
声を出すとこの悠久の杜を壊してしまう気がした。すぐそばを団体が大騒ぎして通り過ぎた。あの人たちは杜を見ていない。

かなりの山道だった。でも迷わぬようにピンクのリボンでポイントされていた。

いくつかのコースが設けられている。30分、60分、150分の3コースだ。
もちろん一番遠くまでいけるコースを選ぶ。

とよかったのだが、一番恐れていたことを考え始めていた。

すなわち「帰りの飛行機の時間が迫ってるよ〜。」
心の一番奥にしまっていた(仕事の悩みよりも一番奥に入れていた)事実が、
この島での全ての美麗なる記憶を押しのけて浮かび上がってきた。

時計を見てしまう。
でも時間のことは口にしない。ここは悠久の杜なのだ。


だからここから今の私も無口になろう。
何も言わず素人撮影の写真を掲載する。

無言のアルバム紹介をどうぞ。




えっと、ここは「三本槍杉」といって、屋久島でも・・・・・・

あ、すいません、黙るはずでした・・・。



   
「・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」(←きれいでしょ、といいたがっている)。





★△○◆!!




あー黙るの無理っす。黙ると死にます!
説明する!
どうぞ、私の渾身の写真をごらんいただきたい。
最美の屋久島の杜の中でも、最美の空間の最良の角度はここだと断ずる。






どうだろう。最美とはいいすぎだろうか?
実はこの景色もこうするともっと美しくなる。







けっして私が美しいというのではない。周囲の景色の大きさが分かりやすくなるために、しょうがないから入っているだけである。そう、やむをえないのだ。




ついに後戻りできない時間が来た。

これ以後の記憶はほとんど飛んでいる。
知らない間に

ここについていた。

無意識にこんな飛び魚定食なぞを食し、無意識にこれに乗り込んでいた。

やっぱり記憶にない。こんな小さなプロペラ機に乗っていたのか。
ちなみにこれは日本の航空機史上に残るYS11である。

わあ!宮之浦岳が遠くに行っちゃう!
飛行機よ、止まれ!

昨日見た夕日はものすごく美しく感じたのに、帰りのプロペラ機から見える夕日は私を現実へ引き戻す恐怖の時の鐘の役割を謀らずも果たしていた。



   
夕日はかわらず美しいのに、私はなぜかこんなに悲しんでいる。

鹿児島空港で大阪行きに乗り換えた。





さすがに現実を直視した。

もう逃げられない。

早くも眼下にはなんとなく汚そうなどこかの都市の夜景が見える。

あの車の数はヤクスギの数の何倍もあることだろう。


あの車たちは早い者勝ちで数秒の時間を得るためにエネルギーを使っているのだろう。

おそらくは「はよいけや、われ!」とか「なめてんか!」とか言い合ってるのだろう。


ああ、おれもあそこの住人なのだ。

あの空気の中に帰るのだ。



「もうこんなところは嫌だ、早く帰りたい。」

私の心の中でそんな叫びが不愉快な余韻を引き連れて鳴り響いている。

眼下の光を見ながら。








一刻も早く屋久島へ帰りたかった・・・・・。






あんなに輝いていた縄文杉も、平内海中温泉も、海からのぼり海に沈む夕日も

遠くへ行ってしまった。


半年前から彼方に探していた光は一瞬現実のものとなって、

私のそばに引き寄せられた。


だが、それは小鳥の瞬きよりも短い時間のうちに、また遠くへいってしまい、

今では1000光年の彼方から弱々しき光を瞬かせているに過ぎない。


それは北極星の光程の弱さでしかない。







北極星・・・・・・・?





ここまで考えたとき、昨日のM君の言葉が浮かんだ。


「北極星はすごいな、あんなに小さいのに旅人はみんなさがすやろ。」





そう、北極星は・・・・・・・・・・・・・





自分の強さなど誇示しない。最初から強さなど誇っていない。



でも、天空に輝く星の中でも最遠の距離にありながら、六等星でありながらも、

誰からも見つめられている。








屋久島も我々からは遠く離れたけど、


いま、


おれは、


遠くに輝く屋久島を愛している。ずっと屋久島と共に生きたい。




小さく弱々しい光だからこそ、もっと屋久島を見つめる努力をさせてもらえる。








そのことをおしえてくれたのが、Mくんの昨日の言葉だった。

遠くに輝く光こそ、みんな努力して探す。

その努力を体験したくて、人は旅をするのかもしれない。




そして・・・・・・・・・・・・・・




かけがえのない旅の仲間は、

遠い屋久島にいるときからずっと愛し続けていた彼の大切な光と

共に生きる決心をした。

彼の新しい旅立ちの式典にいるとき、なぜか縄文杉が思い出された。

北極星が浮かんできた。





Mくん、あなたはあなたが教えてくれた北極星のようにいつまでも二人で輝いてほしい。

俺たちが探した縄文杉のように命を大切にしてほしい。




Mくんも北極星も縄文杉も、もはや私から遠くにいる存在だけれど、

私は努力してまたあなたたちを見つめたい。





光は




弱いからこそ、




みんな努力して見つめるのだ。
















                    これで屋久島の話を終わります。長い間ありがとうございまいした。




         屋久島への旅 目次   

     トップページ  掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送