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                                    屋久島へ・・・・・

                 

第9回    ウィルソン株編
切り株の中に入る経験など初めてだ。

ウィルソン株の中は完全に空洞だった。


果たしてこれが切り株なのか・・・・・・・・。

水がわいている。
命の息吹を感じる。
そして小さな祠がウィルソン株を守っていた。


頭上からは光が燦然と降り注いでいた。
それは切り裂かれた切り株の裂け目からの光だった。
そしてそのおかげで、空洞の中は腐臭などもせずに、いわば健康的な森の延長とも思える雰囲気を醸し出していた。
生物学的にはとっくにこの株は死んでいるはずだ。
でもだ。
はるか昔に切り倒されているのに、差し込む光が命の息吹を生んでいるのだ。
死してなお生きつづける命がここにはあった。


株の隙間から湧き出る水は飲用できる。そのためのひしゃくもおいてあった。
というか、屋久島の湧き水はどれをとっても飲むことが出来るのだ。
これも屋久島の魅力の一つである。
普段、旅をしているときに出会う山の水はたしかにおいしいが、それを飲むのは一瞬の迷いがよぎる。
しかし屋久島にあってはそんな心配は無用なのだ。
                   水を飲むMくん


広さ10畳ほどの株の中には命のエネルギーが満ち溢れている気がした。



およそ30分もそうしていただろうか。さすがに進もう。
木々の切れ目から落ちてくる光も強さを増していた。                                                                                          
朝日ではなく、すでに昼日となっていた。




















   昼日=ピースケの造語。

   朝の太陽は朝日、夕方は夕日なのに、
   昼間の太陽を昼日といわないのはかわいそうである。


        



それにしてもこの木も大きいなあ。
なんかかいてある。
                                                                    














  これが大王杉

縄文杉が見つかるまでは、ずっと屋久島最大の杉として君臨していた木だ。
これも相当な年月を経て、ここにいるんだろうなあ。
でもこのネーミングは・・・・・・?




相当な年月といえば、我々もそういえば相当な時間を費やしてここまでたどり着いている。
こんなでかい木があるんだから、縄文杉だって近いに違いない。

正直そろそろついてほしい。

実はさっきから右の脚のつけ根が痛くてしょうがないのだ。
座り込んで軟膏を塗りこんでみたが、完全に気休めだった。
それに一歩踏む出すのも、もはや勢いを要するようになってきた。



途中上からおっちゃんたちのグループが降りてきた。
思い切って質問する。

「縄文杉まであとどれぐらいですか。」


「そうだね、あと2、3分かな。」












という答えを期待していたが、




















「あとかなりあるよ。」








へえ。

















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


















僕の心の中は・・・・・・・・・・・・・・・





























という心境・・・・・・かな?








私の心に、これまでにない混乱が生じていた。

ずっと「縄文杉に会いたい!」という一念で歩いてきた。
そのために、ここ半年の脳みそ中の思考のほとんどを費やしてきた気がする。
だからあの先月の涙ぐましいチケット争奪も、仕事を大急ぎで片付けたことも、今朝の早起きも、さっきまでのトロッコ道も、その執念が突破させてきた。


でも、だ。

ここへ来て、体の疲労がそれを上回ってしまった。

本当に辛い。

一歩脚を上へむけるだけで、全身の力を要している。
そして、そのたびに驚くほどの汗が吹き出すのだ。
脚の痛みも普通ではなかった。
股関節の骨が錐のように肉に突き刺さる気がする。







「辛い。でも縄文杉に会いたい。」







「辛い、でも縄文杉に会うためにがんばろう。」




「縄文杉に会いたい。でも、辛い。」








「縄文杉にあいたい。でもなんでこんなに辛い思いをするのか。」







「縄文杉があるから、俺はこんなに辛い!」











は!そうか!




いま

おれが

こんなに

辛いのは

縄文杉が

あるからなのだ!(結論)










「縄文杉なんて・・・・・・・・・・どうでもいいわい!」





足が完璧に止まった。


本気で、もうどうでもよくなった。
もしかしたら、私がHPのストーリを面白くするためにこんな弱気を作っているのかもしれないと、思われた方もおられることだろう。
だが本当なのだ。あの道の途中で、マジで投げ出す気になっていた。
そういえば映画の中でも大介君は「もう、いらない!」と木の根元に座り込んでいたっけ。「僕もういやだ。ここにいる。」というセリフがあった気がする。俺が今座っている根、これが偶然あの映画の舞台と一緒だったら面白いな。どうでもいいけど。





皮肉なことだ。
こんな風に凹んでいる私の前を私の最も好きな存在が横切った。


「待って!」私たちは必死で追いかけた。

                                       
         

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