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                                    屋久島へ・・・・・

                 

第8回    大株歩道をゆく 編


前回に述べた「したいことをすべてしよう」という思いは、日常でも感じることがある。でも、やっぱり無理なのだ。我慢をしたくてはいけないことは山積みであり、その山を越えたと思ったら、じつはそれは山脈が向こうまで続いていたりする。
このままずっと歳をとってしまって、気付いたときには一度しかない人生のゴールが見えたりもするのか。それは耐え難い。
365日幸せでなくてもいいけど、ポイントポイントで光を見つけたい。

そして今、縄文杉に会いに行っている私たちは幸せだった。


まだ見ぬその大杉に出会った瞬間、

幸せになるかもしれない、そんな気すらしていた。





にしても・・・・・・・・・・・

しんどい!



まだまだ続くのか、この道は。
第一、単調すぎる。線路を歩くのもすぐに飽きてしまった。




そう思う我々の前に、すごいものが現れた。




すごい!
たぶん縄文杉よりはすごくないんだろうけど、それでもすごい。
 

  三代杉

3500年前に生えた杉は2000歳でその寿命を終えた。その倒木の上に新しい命がうまれまた約1000年生きた。そして、その上にまたいのちがうまれ、今では500歳。


木の根っこの中に大人二人が入れるじゃないか。


ここは屋久島なのだ、言うまでもなく屋久島なのだ、そう思った。





Mくんが道の隅っこで何かを写している。
「何してるん?」
「これ、ええなあ。生まれたばかりの命やで。」

彼はこれを写していたのだ。
                     
線路脇に生え始めた一本の小杉がそこにあった。
考えてみれば私はどうもこの島へ来てから大きいものに心を寄せていた。
それはそれで素晴らしい存在であるのだが、あえて小さき命を見つけたMくんの心情に感嘆した。
長く大きな命も、幼い小さな命もみんないいのだ。
そしてそんな感動を持ったまま、縄文杉への道は新たな局面を迎えた。

ずっとずっと続いていたトロッコ道はついに終わり、本格的な山道へと入る。
正直飽きていたのだ。(なんという贅沢な考えだろうか。)

                                                                
入り口には看板があり、そこから山道への階段があった。
大株歩道の旅が始まった。



大株歩道は準自然歩道である。さっきまでのトロッコ線路のような人工の道は存在せず、山道を行く。が、ところどころには階段もあり、手すりもある。
そして、なによりこれまで多くの人が通ったため、土は踏み固められ、手の届く位置の木の根は人々の手の摩擦で黒光りさえしていた。

すこしだけ胸が痛んだ。俺は今屋久杉の根を踏みながら歩いているのだ。でも、ここしか歩けないしなあ・・。


周囲はすべて杉木立であった。
                     

頭上には枝が生い茂り、行く先には巨木の古道、左右は言うまでもなく、足元にもまた杉の根があった。
原生林にいま包まれながら歩いている、いや登っている。

                     

こんな山道を登りながら、自分の息が上がり始めるのを感じていた。
ほとんど90度ではないかとおもう山道を上がり続ける。
とおもったら、なぜかくだりが始まる。ラッキーと思ったら、下がった分また登らされるのだ。どうせなら平らな道にすればいいのにとも思ってしまうのだが、自然に逆らわず登山道を作るとこうなるのだろう。
この場所では苦しい状態こそが自然なのだ。

この道を行く人は大半が縄文杉目当てであろう。
しかし、どこを見ても個性あふれる命があふれている。
生まれてはじめてである。
「木」をこれほどまでに見つめたのは。
屋久島を旅したあなたもそうではないだろうか。

屋久島で「木」を見つめる癖がついてはいないだろうか。


    
この木も縄文杉ほどのスーパースターではないけれど、一目で長く生きてきたことが分かる。仙人のような様相をしていた。

でもやっぱり目指すは縄文杉だった。




上の木を撮影するために立ち止まっていたときに、妙な音に気付いた。足元からぴちゃ、ぴちゃ、と水の音がする。よくある湧き水かとおもったがそうではなかった。

私の体から流れ出す汗が岩に落ちている音だった。
こんなに汗をかいたのは生まれて初めてかもしれない。
それが苦にならないほど、心が満ち足りていた。



まだまだ登る。
途中、右足があまりに痛くて歩けなくなった。
私は体の変調を無視した。
なぜなら心が幸せだったからだ。

あと少しで縄文杉に出会える。



ポケットのペットボトルの水が空になった。
やばい。
でもこれも無視だ。

縄文杉が近いのだから。





人の姿が増えてきた。登山道で人と出会うのもすばらしい。
必ずといっていいほど、すれ違うときに挨拶をする。
街中では考えられない習慣だ。登山が好きな人は、この点に魅了されたりもしているのだろうか。


人の多さの理由が分かった。

この道で、縄文杉に次ぐスーパースター、


   ウィルソン株

直径でいくと縄文杉よりも巨大な杉の株。



がそこにあった。


普通にうれしい。ここで一区切りである。
そう思った瞬間、脚が動かなくなり、その場にへたり込んだ。

動けなくなったピースケ
そうか、
 「十五才 学校W」
で大介少年がへばっていたのも、そういえばここだった。



それにしても・・・・・・・・・・この株・・・・・・・・・・。
切り株コンテストがあったら間違いなく優勝するだろうな。
      



この株の大きさは人と比べてみれば分かる。
            



映画にあったように中には入れるようだ。
大介少年は中に入ることは断念していたが、私たちはそんなこと我慢できるはずがない。
ちょうど人の波が消えたところだ。



ゆっくりと木の中に入った。


株の中から水の音がする。命の息吹が聴こえてきた。

                                         
          

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