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失われた学校、村、道、鉄道を訪れた日の記録


       その島は滅びず 無人島浪漫紀行 第7回

炭坑が閉山したのは今からちょうど30年前の1月である。
わずか3ヵ月後には完全に無人となったというのも衝撃的である。

人々はさぞ無念であったろう。心の準備ができなかった方も多いに違いない。何より子どもたちは? この島で生まれ育った子も多いに違いない。どんな気持ちで転校したかを考えると、私の胸を痛ましめる光景が浮かんでくるのだ。大切な宝物をみんな新しい家に持っていけたのだろうか? それとも唇をかむ思いでおいていったのだろうか?
ペットは? 飼っていた動物たちがどうなったのか、いまでも気がかりだ。そういえばベルトコンベアのそばに猫がいるらしいが、その猫は閉山当時の飼い猫の子どもなのだろうか?



「この建物には住人の方の荷物がかなり残っていますよ。」
私のすぐ後ろにいたリキさんがおっしゃった。
この島のこの状況の中でどうやって荷物が保存されるのか。私はその点に興味が行った。

すぐ手前の部屋に入る。


この部屋はかなり風にやられているようだ。それでも奥の部屋のコタツはまだ骨組みを残している。


それでもこんなものを見つけた。
          
どうして二つ重なっているのかは分からないが、見事な回転チャンネル式のテレビである。ちなみにあなたは先の回の質問はどちらだったろうか?テレビのチャンネルはいまや変えるものである。回すものではなくなってからどれくらいたつのだろう?




他の家も見るために歩き出す。
石でできたシンク(という言い方はこの年代の場合あまり適切ではないが、ではなんというのだろうか、どうしても思い出せない。)があり、その横には布巾がかけられている。引っ越してからずっとずっと、ここにかかっていたのだろうか?


他の家にさらに行ってみる。流し台(そうだ、この言葉であった。)のすぐそばには洗濯機が置いてある。よく見るとレバーがある。これは何だろう?
「脱水を手動でしてたのですよ。」Sさんが教えてくれた。
さすがにこれは初めて見た。チャンネル式のテレビは私の幼児期に家にあったが、レバー洗濯機は田舎の実家にすらない。とはいえ、遍路の際に二層式の洗濯機に難儀したのは誰だったか。


                              この黒い棒状のものがレバー


こういった家具も赴き深いが、実は私にとって最も興味のあるものがみつかった。それはこれである。

押入れから床にかけて散らばるたくさんの漫画である。
この家には子どもがいたのだろう。
だが、ちらばっている漫画は、どれもが知らない絵ばかりだ。
なんだろう?この漫画・・・・・。
漫画・・・・・・?そうか、ここには現職の漫画家の先生がいた。

樹崎先生に聞いてみると、床に落ちている絵を見て
「これは『あづまひでお』の漫画ですね。」とおっしゃった。


押入れの本はもっと保存状態がよかった。どうやら女の子が住んでいたようだ。

        


外にでた。夕焼けがあらわれだした。時間が流れているという当たり前のことを忘れていた。暗くなれば探索はできない。気持ちが焦りだした。まだ島の内部はほとんど見ていない。

そんな私の気持ちをよそに、ゆっくりと小船が進んでいくのが見えた。
          


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