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失われた学校、村、道、鉄道を訪れた日の記録

 その島は滅びず 無人島浪漫紀行 第6回



この島に来てから、私の目は二色しか見ていないことに気づいた。


灰色である。


一方は自然の生み出した無限の空の色であり、
もう一方は人間の作り出した有限の建物の色である。
二つを比較しようという気持ちはなく、またそのどちらもが美しかった。
が、あまりに非現実的な光景が続くため、普段見慣れた色を見たくなっていたのも確かである。


足元からギリギリと音がする。この建物はより崩壊が進み、廊下には大量の破片が落ちていた。うっかり転ばないように気を配りながら、前を歩いていたYさんの後に続く。

この職員住宅は日給住宅とも呼ばれ複数の建物が連続していた。

もはや今は迷路に迷い込んだ気持ちである。一人でテントを張った場所に戻れといわれてももう無理だ。置いてかれないようにしないといけない。

                    

このような回廊をいくつ歩いてきたのだろう。今、私は何階にいるのだろう?
そんな不安と同時に、やはり日常、目にはできない景色への充実感も同時にあった。
1メートルの歩みがその奇抜な光景ゆえ、10メートルにも1キロにも感じた。目に映るすべてのものがすごいのだ。



隣の建物へ移動するとき、上を見上げた。まさに典型的な集合住宅の外観である。


このような建物なら、道を歩いていていくつでも見つけることができる。ただ、この建物の場合は手すりが錆びきってるという違いがあった。
ここでもやはり灰色と青ばかりが目立つ。
それに今、一色加わった。

褐色である。

ただしこの場合の褐色は命ある樹木が生み出すそれではなく、鉄が死んで発生する色であったが。





一同は階段を登り始めた。
最初にこんなものが目に付いた。

団地の鉄扉がこんな色になるなんて・・。
     


向かい合う家のドアが最期の時を迎え、その恐怖に耐えるためだろう、共に寄り添ってすでに死んでいた。



そういえば・・・・・・・・、室内はどうなっているのだろう?
当然の疑問がわいた。私はSさんに頼んで室内を見せてもらった。
現在の集合住宅よりも二周りほど小さい。それでも2DKといえなくもない感じだ。
ただ、普通の住宅と違うのは、このロケーションの素晴らしさだ。これならどんな高級住宅地でも味わえまい。

窓の外には、空とはまた違ったが存在している。






「ピースケさん、ここで感動していては屋上へ上がれないですよ。」
Sさんが笑いながら言った。

屋上へも上がれるのか。私たちは先を急いだ。



階段を上り詰めたところに、小さな空間がありそこが屋上への出入り口になっている。私はゆっくりと外へ出た。

これもすばらしい。

       



ここに住んでいた子どもたちは毎日、海を見てすごしていたのだろうか?海の透き通るような青さよ。
この島はかつて「緑なき島」といわれたが、今は生命を感じる緑が存在している。だが、やはり灰色の塊に陵駕されており、緑色は灰色にどうしても勝てない。島の宿命なのかもしれない。

よく見ると向こうにも島が見える。こちらと似たようなつくりになっている。
日本最期の炭鉱の島らしい。今はまだ人が住んでいるが、閉山が近いとそばにいた人が教えてれた。日本の石炭政策の終焉の瞬間が近いのである。

あの終幕を待つ島は、数十年後にはこの島とおなじ光景になるのだろうか?

今はまだ生きているその炭坑島を私はカメラにおさめ、となりの建物に移った。そこには青、灰色の支配を拒んでいるかのような、人の作り出した新たな原色が存在していた。

上の写真をクリックすると第7回に進みます。
が、その前にあなたへの質問。

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