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インドへ、そしてマザー・テレサへの道

           第34回
     俺の犯した罪悪  
  



みなさん・・・・・・・




俺達は今連行されている。



係員が先導し、駅の事務所に連れて行かれるようだ。
奥の通路を行くと汚くさびた鉄扉の向こうに入れられた。
これからどうなるんやろう。

話は数時間前にさかのぼる。



バラナシから帰るとステイ先にもう一人のボランティアがきていた。
東京の学生Tさん。
8月11日金曜日、午前中のボランティアを終えると、Tさんとカリガートへ行くことにした。
昨日は木曜日で中には入られなかったが、今日なら中も見学できるはずだ。


昨日行ったから、道を間違えるはずがない。


のに、間違えるのが俺である。
結構紳士に教えてもらった道を行っているつもりが、変なところに出てしまった。
なぜだか知らないが、






道が・・・・・・、




みちが・・・・・・・、




道路が・・・・・・・・・・・・、









水没中。


そのまま水の中に入っていく。


すると「トモダチ」にいっぱいお会いした見覚えのあるところへ出た。

                      
                       カーリ・ガート(死を待つ人の家)

勝手に中に入っていいのだろうか?迷っていると中から出てきた女性の方が「どうぞ」と手招きをしてくれた。

ダヤダンとはずいぶん違う。笑い声も泣き声も聞こえない。
病院のようにベッドが並べられ、そして人々が寝ている。
ダヤダンよりずっと年齢の高いボランティアが静かに動いている。
礼拝中のマザー・ハウスの雰囲気に似ていた。
声をほとんど発しない入所者の方からは確かに「死」を感じることができた。


音を立てぬようにしながら、家の中を歩かせていただき、そして表へ出ようとしたとき
一人のおじいさんがゆっくりとこちらへ手を差し伸べてきた。
施設内で物乞いはないだろうから、もしかして俺に握手を求めているのかもしれない。


握手・・・・・・・?



一瞬の後頭がフル回転を始めた。ここにいるのは大半がHIV等の疾病で死を待つ人たちである。
強烈な伝染病の人もいる。ボランティアもほとんどがマスクをし手袋をはめている。
そしてここにそのおじいさんがいる。おじいさんは俺に握手を求めている。
ここは「死を待つ人の家」である。「死を」・・・・・・。



ウソを書くことはできない。

小さくパニックになりそうだった。
俺は一礼をして部屋を出た。握手に応えることをしなかった。この間、わずか数秒。





外は強烈な太陽が照っている。
人々が歩いている。牛が歩いている。そして俺は卑怯な男になった。



「おじいさんが握手もとめてきたんですけど・・・・俺、返せなかったです。」
Tさんに言った。彼も私の心情を察したのかこういってくれた。
「かならずしも握手とは限らないですよ。挨拶で手を上げたのかもしれないですし。」
「かも知れないですよね。」
違うとは分かっていた。


インドへ来て最大の自己嫌悪。いや、生まれて以来の罪悪感をこのとき感じていた。
言い逃れもなにもすまい。俺は自分の身をかわいがる己の本能に気づき、吐き気すら感じた。




帰路、地下鉄が停まった。
「人身かな?」
不可思議な機材を持った人がホームを走っている。アナウンスがあったが、こんなときに限ってヒンディー語だ。


数十分後、ようやく動き出したが次の駅で大量の人が乗り込んできた。
結果本来降りるべき駅で降りられなかった。
私はプリペイドカードを使って乗車していたが、Tさんは切符を買っていた。
「次の駅で降りてみますか。」
「乗り越し料金はいくらくらいでしょうね。」
「多分、2ルピーくらいだと。」


改札口にはいつも暇そうなおっちゃんが椅子に座って監視をしている。
彼に乗り越しを申し出た。
「O.K」おっちゃんはそういうとやる気なさそうに、外にいた私服の係員を呼んだ。
ここまでは2ルピーの超過料金を払えばすむとおもっていた。

しかし・・・・・・・・。


「ジャポニ、252ルピーを出しな。」
「は?2ルピーだろ?」
「分からないのか、252ルピーだ!」この男、決してすごんだりはしないが、なんか底知れぬものを感じた。
「それはなぜだ?」
「教えてやろう。こちらへきなさい。」
そういうと男は一般の通路とは違うところに我々を誘導した。


さすがに事態は本格的にやばそうだ。
こういうとき外国人は便利だ。日本語でTさんと会話をした。
「どうしますか?ありえない金額ですよね。」
「ダッシュで逃げることもできそうだけど。」
「たしかに。でも地下鉄は入り口に警官がいるから・・。」
「あ、そうか・・。」

ついていくしかなさそうだ。



俺、いまインドで

当局に連行されてます。


     

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