みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記
2004年夏編 第7回
いま私がめざしている38番延光寺は、今日の宿よりもさらに奥にある。
でもこんな辛い思いをしてここまで来たのだ。宿より先に札所である。田んぼのど真ん中を貫く道をぬけて、いくつかの宿を通り過ぎたところにゴールがあった。
39番札所 延光寺 8月9日 午後4時26分到着
実に小さい寺だった。だが、この遍路全体を通じていえることなのだが、私は大きな寺より小さな寺のほうが好きになっていた。理由は知らない。
ただ、ここで一つの試練が私に与えられた。
その存在を・・・・・・、
否定はしない。
嫌いでもない。
でも、やっぱりちょっと困るのが団体お遍路様である。
本堂にお参りしようにも、この圧迫感の中に入っていく気力はない。
だから、ずっと食べずに我慢していたおにぎり(久百々に頂いたもの)をここでようやく食べることにする。おにぎりは今炊いたかのように温かかった。ちっともうれしい現象ではない。
そして私の視線は必然的に、かの人たちへといってしまう。
そこかしこにいらっしゃる。孤独なお遍路は、この寺では私一人であった。
皆さんがお休憩に入られたようだ。
よし、今度は私がお参りをする。
納経所へ入ったとたん、先の団体様の40人分ほどの納経帳をもって、順番待ちをしておられるのが見えた。添乗員さんも大変だが、それを待つ私も大変だ。
ああ・・。これは30分ほど待つな・・。そう覚悟を決めたのだが
「先、貸して!」と納経所の人が私に向かって手招きをしてくれたのだ。
ありがとう。
札所を降りて300メートルほど行ったところに宿が三つ固まっている。その中でひときわ個性的な雰囲気を漂わせているのが、へんくつやである。
ここも「サンダル遍路旅日記」で知った宿である。この夏は特にこの本に頼りながら歩いている。
いつか・・・・・私のこの日記も誰かに頼られるようになったらいいな、ふとそんなことをおもった。
中に恐る恐る入ると優しそうなおばあちゃんがいた。そしておじいちゃん。この宿の名前の由来となった方である。
二人ともとても親切にしてくださった。
「今日は誰も泊る人がいないから、休もうと思ったけど、兄ちゃんが電話かけてきたから、急きょ営業や、はっはっは〜。」おじいちゃんが笑う。
おばあちゃんは私と同郷であった。四国を歩いていると不思議と大阪出身者が多い気がする。
部屋にはいった。まだ5時前だ。外からはものすごいせみの声がする。みんな、うるさいなあと思って聞いている声だが、命の限り鳴く声を今は私は愛することが出来た。
「兄ちゃん、風呂入りや。」おっちゃんが声をかけてくれた。待ってました。前述の潮見さんの著書ではかなり情緒ある岩風呂らしいのだ。どんなだろう・・?
こんなだった。
おっちゃん曰く、「ワシが何ヶ月もかかって作ったんじゃ。」
いいなあ・・・。私は手作りのものが大好きである。
四国に来て思うことだが、どの宿も決して冷凍食品をつかっておられない。当たり前といえば当たり前だが、お惣菜やインスタント食品ばかりの食生活を送っている私の命は・・・・・・もしかしたら四国の宿によって永らえてもらっているのかも知れない。
全部おばあちゃんの手作り、どうもありがとう。
午後9:30で、すでに遅いなあという気になった。
おやすみなさい。
明日はいよいよ伊予の国である。
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