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みんな、ありがとう 

     普段着お遍路歩きの記

                                   2004年夏編 第7回




地面が揺れている。めまいでもしているのだろうか?
ぐらぐらとした奇妙な感覚・・・・・。
これは陽炎が地面からのぼっているのだ。水溜りがあるわけでもないのに、なにが空気を揺らしているのだろう?まさかアスファルト道路のわずかな水分をも蒸発させられているのだろうか。

去年夏の遍路のときは台風に飛ばされかけていた。そして二年目の遍路は太陽が私を溶かそうとしている。どっちがマシやろう?
当然である。どっちもいやである。




山道が県道にかわった。余計に地面が揺れている。分厚いトレッキングシューズを突き抜けて、足の裏が焼けそうな錯覚を覚える。
道沿いに学校跡があった。
    

自販機がない。
手持ちの水がない。
のどが痛くなってきた。
今手近なところにある水分は、さっきから下腹部をつついているおしっこだけである。
しかしこれは絶対に放出しない。マナーなどを考えているのではなく、もったいないのだ。このおしっこは有効な水分となって体に吸収されないものだろうか。いやまてよ、飲尿療法ってそういえば聞いたことがある。あれをやってる人はいるのだろうか。


などと、アホなことを考えているうちに、地面の揺らぎがよりひどくなった。
それどころか前方の景色もゆれている。

陽炎・・・・・・?
ではなく、めまいがしているのだ。

うわ!

脱水症状を起こしているのかもしれない。

やばい。
一刻も早く水分補給をせねば!
だが、その水分がないのだ。
少しの日陰があった。そこに座り込む。
よく見ると目の前の溝に少しだけ水がたまっている。極限状態に置かれると、こんな水もうまそうに見える。でも飲むわけにもいかないだろう。それよりはまだ自分のおしっこのほうがましである。

溝の水とおしっこと・・・・・・・・・・・・・?

どちらを飲むべきか!?

これは究極の選択である。





「なにしとるん?こっちですずまんね。」向かいの建物から一人のおっちゃんが声をかけてきた。
「あ・・・・・はい。」
「中で涼んでいいよ。」
「いえ、でもここで大丈夫です。」これは遠慮でもなんでもなく、動く気力と体力がなかったのだ。
おっちゃんがいすを外に出してくれた。ありがたい。
そして・・・・・・・・・。
なかから氷様の入った、お茶様を、おコップに入れて持ってきてくださったのだ。オバちゃんお姉さんが。
その天のものとも思える液体は0.99秒で私の体内に吸収された。
「はやいのね」お姉さんは笑いながらお替り様を持ってきてくださった。めまいが治まった。
「ありがとうございます。」納め札を渡したらお姉さんがこういってくれた。お礼を言うのは私のほうなのに・・。

その会社へは帰ってからお礼状を出そうと思っているうちに、忘れてしまった。ここでお礼を言います(が、届くわけないんだな。詭弁もいいところである。)




向こうからやってくる自転車に乗った中学生が「こんちはー!」と挨拶をしてくれた。それも、どの子もそうなのだ。前にも書いたが、にじみ出る挨拶の気持ちが人々にある場所では人は不幸にはならない。私は固く信じている。逆に強制された挨拶に私は抵抗がある。どうでもいいことだが。
三原村の中学生の皆さん、どうもありがとう。ここでお礼を言います(って届かないだろうけど・・。)

傍らの田んぼは弱々しい私を尻目に、頭を下げることで自らの成長を精一杯主張していた。この写真を撮ってる時、後ろで車がとまった。
「はい、お茶代!」中からおばちゃんが150円を出してくださった。納め札を渡そうとしたら
「いらない、いらない、いらない、いらない。」何度も繰り返した。そんなにいらないのかな・・?
車が行くとき助手席のおばあちゃんが、やさしそうな顔で私を見ていた。
                          
車が行き過ぎたあとの道。ここで私にお接待をしてくださった方、どうもありがとうございます。お金のお接待を頂いたのはこれが初めてでした。


緩やかなくだりになった。
坂の途中にこんなうれしい看板があった。9日14時37分、宿毛市突入。


喜びもつかの間、またおしっこを思い出した。さっきのお茶だろう。でも絶対に出さない。もったいないではないか。がんばれ、俺!
正確に言うと俺の下腹部!

日陰のない素敵な道をどんどんいく。
ほんのわずかでも、こんな日陰があればすかさずそこに入る。命を守るためだ。

道は「国立」のものより「私立」の方が趣があってよい。遍路道はそんな街路へとかわる。
       



どうでもいいことなのだが、国道は「国立」の道である。では普通の集落を通っている道は「私立」なのだろうか?でもそれだと「私道」になるよな・・・。



んな、あほなことを考えてるうちに、再び国道へでた。そして左折した後、今日の宿「へんくつや」が見えてきた。
なんでこんな名前なのだろう?

理由はすぐに分かった。

       

                   

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