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 みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 
                    2004年夏編 第2回



今、これをお読みの皆さんへ。(お願い)
こんな光景を思い浮かべていただきたい・・・。


1 美人がいっぱいいる光景

2 その美人はみんな水着を着ている。 


3 その傍らにはイケメンの男たちがたくさんいる。


4 さらにサーフボードを持っている美男美女のグループもいっぱいいる。


5 みんな、幸せそうにバカンスをたのしんでいる。


6 と思えば、そのそばには家族連れが、休日を楽しんでいる。
  みんな色とりどりの水着を着ている。
             ↓
7 そんな華やかな海岸を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・巨大なリュックを背負い、
   この世の終わりのような表情
をした男が
   一人歩いている・・・・・・・・・・・・・。



ふんぎゃ〜!ういてる!なんでここが遍路道やねん。

たとえば、この写真だって
最も外れたところまで歩いて、それでも人がいないときを見計らって必死で撮ったものなのだ。

「ねえ、ねえ、あの人なに?
「本当だ。怪しいね。」
「いやあん、あたしこわい〜。」
「大丈夫、俺がついてるじゃないか」
「ホント〜?うれしい。ねえもう一回サーフィンしよー!」
「うん、いくよ〜。あはははははははっはははっははあ〜!!」

という会話をしていた
おカップル様は何人いたのだろう。全部抹殺したい。

マジで、これまでで一番辛い写真だった。本気であちこちを見渡し、周囲の人に会釈しながら歩いてしまったのだ。
夏だけはこの遍路道はとおるべきではない。言い切っちゃってもいいのだ。


カップルたちの嘲笑を背中に勝手に受けながら私は歩いた。






途中で川にぶつかった。これがうわさに聞いた「川の中の遍路道」か。それほど深くはない。靴を脱いで渡った。
        

道は藪の中へ消えている。川の次は藪か。

ちゃんと遍路標識もでてるじゃん・・・・。
急勾配の山道だ。上り詰めるとこんな標識があった。


拡大図・・。
「脱靴」という文字が見える。

気付くと、首にかけていたタオルがなくなっていた。

ここを登りきると、また普通の県道に出る。ぽつぽつと両脇に民家が立っている。




向こうから、二人の遍路が来た。逆打ちなのかな?それとも38番から39番へ向かう人だろうか?「こんちはー!」という挨拶をお互いにかわす。こうでなくっちゃ。
そう思ったのもつかの間、後ろから「お疲れ様でーす」という声がした。私を自転車遍路さんが追い抜いていった。
春には全然会わなかった旅人にどうしてこんなに出会えるのだろう?
やはり、夏だからだろうか。
そうだろうな・・。
だから、俺、夏大好きや。



早くも今日の宿「旅路」が見えてきた。ここは絶対に泊ろうと決めていたところだ。
「食後おばあちゃんが黄ばんだノートを片手に僕の部屋に遊びに来た。
おばあちゃんは今まで泊った人のことをよく覚えており、
宿泊簿の名前を指差しながらいろんな話を聞かせてくれた。(中略)
僕もこのあとに泊った人にこんな風に話してもらえるのだろうか。
善人宿の中でも思ったことだけど、こんな風に優しさにふれていると
僕もやさしくなれるんだろうか。」

「サンダル遍路旅日記」潮見英幸著 文芸社 より引用)

この一文を読んで、泊ろうと思った。

とりあえずはなくしたタオルを買わなきゃ・・。そう思って歩いているけど店屋がない。いつしか前方に想像通りの建物が見えてきた。
ここか〜!



うわあ、想像通りの民宿や。でも、それをやりすごす。タオルかわなきゃ、タオル。

いけども行けども店がない。しょうがない、もどろう。
それにしても人通りが少ないなあ。前に一人のおばあちゃんが歩いてるけど、それ以外の人とは会っていない。

程なく、さっきの「旅路」に到着。にしてもどっからはいるのかな?ここかな?民家の玄関らしきところを開ける。
「ごめんください〜。」
「はい、はい。」
ありゃ?さっき僕の前を歩いていた人が旅路のおばあちゃんだったのか。
「随分早いのね、足摺からでしょう?」
「いえ、中村からです。」
「でも、足摺方面から歩いてきてたでしょう?私の後ろにいたじゃない。」
「あ、それはタオルをなくしたので、お店屋さんを探していたんです。」
「タオルならうちのを使いなさい。」
そういっておばあちゃんは一本のタオルをくれた。
ありがとう、一生大事にします。
「部屋は二階だからね。」
「えっと、二階のどこでしょう?」
「二階には二部屋しかないのよ。好きなほうを使って。」

手前には大きな八畳ほどの部屋、奥はそれより一回り小さい部屋があった。迷わず広いほうを選んじゃった・・。
これがそのタオル。



風呂に入っている間に洗濯までしてくれた。夕方近くなり気温も徐々に下がってきた。
畳に寝転ぶ・・・・・・・・・・・・。うわ〜、きもちいい。それに風が部屋の中をとおっていく・・。昼間の暑さは知らぬ間にどこかへ消えていた。(だから、文字も暑苦しい色ではなくなる。)
          


おばあちゃんが風呂上りにスイカを持ってきてくれた。なんという素敵なタイミング。手に持っていた「サンダル遍路旅日記」をみせた。「ああ、このサンダルのお遍路さん覚えているよ。」

潮見さんの願いは少しだけかなっていたような気がする。




夕食時にはおじいちゃんがそばにいて、ずっと話しかけてくれていた。宿のおばあちゃんとおじいちゃんがいる、だから俺は一人ではない。


驚いたのはおばあちゃんが私の職業を当てたことだ。
「どうもそうじゃないかと思ってたのよ。」人生経験の長い人はこうなるんだろうか?

食後、私は一人で周囲を歩いてみた。海の音がする。どうしても海岸に下りたい。国道沿いで植林だらけだが、なんとか隙間を見つけて海に下りた。




一日が終わろうとしている。この夏初めて、夕日を見た。
普段の生活で「夕日を見て一日の終わりを感ずる」ことって少ないよなあ・・。




宿に戻って日記をつけ終えた。

まだ午後8時だ。でも、部屋にテレビがないし、もうねようかな?
「サンダル遍路旅日記」によると鶏の声で目が覚めるらしい。
先人と同じ体験をしたいなあ・・・そんなことを思いながら眠りについた。


 
                                

        四国八十八ヶ所お遍路セット(スターターセット)

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