みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 
                                        2004年春編 第3回




























真っ白だった・・・・・。

















どうしても・・・・・・・・・・


心の空白はぬぐいされなかった。














道はどこまでも続いていた。








ここをゆけば37番だ。




今日の宿泊地はその岩本寺の宿坊である。このままだと昼過ぎには着いてしまう。たった3日間の旅だからもっと歩きたかった。歩くことだけが、自分の心の隙間を埋めてくれる気がした。


だから・・・・・・・・・・



わざと遍路道を外れてみた。

そこにはへんろっちも遍路看板もない。ついでに通行人すらいなかったが、もう慣れてしまった。
どんどん山の中へ入っていく。陽射しはなかったが、体が火照りだした。途中のベンチでズボンの下半分を取り外した。こういう時、切り離しパンツは便利だ。
                      


ここはどこだろう。
少しの不安はあるが、地図を見る気はしなかった。完全に未知の状況に自分を置くことで、何かが変わるかもしれない、そう思った。



山の中から一気に平地へと出た。幅の広いアスファルト道路が広がってはいるが、周囲には民家がほとんどない。ある意味不思議な光景である。こんな辺鄙なところに住宅開発予定地でもつくったのだろうか?そんな感じでもないが・・。

明らかに札所とは違う方向へ向かっているのはわかっていた。



だが、どこまでも




どこまでも



まっすぐ歩き続けた。
                    






そして不意にこんな光景が現れた。
さっきと同じ感慨が浮かんできた。
「もう春やな・・・・・・・。」
春を感じさせる広野の向こうには同じく季節の息吹を抱いた山脈があった。その上に広がる空だけが、季節感を失した灰色をしていた。俺の嫌いな「あいつ」が近づいているとでもいうのだろうか?
     








遍路道を意図的に外れたのは初めてである。
だがこんな簡単なことでも、私にとっては大冒険だった。
やがて道は街中へと吸収されていった。地図を見てはいなかったが、こちら側へ進めばおそらくは37番へつくだろうとおもった。







いつの間にか路地へ入っていた。左右には少しくたびれてはいるけれど、優しい街がそこを歩く人を待っていた。


でも、どの店もシャッターを下ろしている。GWはこうなるのだろうか?用事はなくとも窓の外から店の中を見るだけでも楽しかったのにな。
とおりを歩く人はいない。
忘れかけていた寂しさがふと心によみがえってきたが、必死でそれを振り払った。

              




大きな橋を渡った。川の上にはたくさんのこいのぼりが天を目指して泳いでいた。普通のこいのぼりと違い、大家族だった。



こいのぼりでさえたくさんの仲間がいる。
あ、また俺、寂しがっている。あかんなあ・・。さっき、小さな冒険をして少しだけ立ち直ったはずやのに・・。自分の弱さをこんなときに実感する。







こんな風に自分とけんかをしているうちに、人通りの多い空間へと入り込んだ。
もしかして、もう着いてしまったのだろうか?
しかしそれはやはりというか・・・・・・・

   四国霊場37番札所 岩本寺 5月2日 13時到着

 
          





4ヶ月ぶりの霊場だ。
   


本堂に入って驚いた。天井にたくさんの絵が貼られている。一般から募集したものらしい。ええなあ。俺も応募してみたい。





宿坊は午後3時以降にしか入られない。納経所に荷物を預け、付近の町を探検に出かけた。

誰かいるかな?












ずっと淋しがっての道中だった。
考えてみたら札所にいたほうがいいのかも知れない。同じ遍路が多いのだから、話し相手が出来るかもしれない。
そうだ、遍路の原点に帰ろう。一人歩きのお遍路さんが必ずいるはずだ。




皮肉なことに、札所にいるお遍路さんはみんな団体様だった。この時の団体様は二組ほどいらっしゃったように思う。みなさん、声を合わせてお経をお唱えになっていらっしゃった。


おなじみの「カメヤマローソク」のベンチに座りながら、そんな団体様を眺めていた。
二人のおばちゃんが私の隣のベンチにお座りになった。
 「いやあ、36番からは遠かったなあ。」
「ホンマや、バスも疲れるわ。」
そうか、この人たちはバス遍路か、そうか。
「こんにちは、どこから来られたんですか?」出来るだけおばさま受けするようなさわやかな声を出して話しかけてみた。
「○○巡礼ツアーの皆さん、納経が完了したので、バスに乗ってください。」
どこからかおっちゃんの叫ぶ声がする。旅行会社だろう。

「いやあ、次はまた遠いなあ。」
「ホンマやね、夕方になりそうやね、わははは・・・。」

行っておしまいになった。

「さいなら・・・。」こちらを一瞥もしなかった団体様に向かって、私は独りつぶやいた。



     









宿坊に入った。
そうだ。宿坊なら旅人がいっぱいいるに違いない。
今度こそ、今度こそ、今度こそ・・・・・。











                                     
                 

                   
                     

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