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            みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 

                               2003年夏編 第31回




                  頭が半分寝ている。そのもやのかかった頭に・・・・・・・、

                  ゴーン、ゴーン・・・・・・、乾いた音が響いてくる。

                  頭は寝ているのに心臓がドキドキしだした。何の音だろう?

                  旅先で不可解な現象にあうことほど嫌なことはない。

                  まだ音は続く。その音は私に向かって手招きしている。

                  私を呼んでいる。いってはならない。

                  布団を頭からかぶってやり過ごした。いつの間にか寝ていた。





                  目が覚めた。よかった・・・。朝が来たら安心だ。それにしては

                  暗いぞ。時計のライトを光らせた。

                  11時?           

                  まだそんなものなのか・・・。おそらくは神経が高ぶっている

                  せいかなかなか眠れなかった。


                  目をつぶったまま考えた。
                 
                  さっきの金属音は何だったんだろう?でも、まあよい。

                  外から聞こえたのだから。自分に関係がないとは言えなくもない。





                  まてよ?なんで電気が消してあったんだ?嫌なことを思い出して

                  しまった。これは俺の部屋の中でおきた。いくら考えてもわからない。

                  気づけばまた寝ていた。







                  今までの中で最悪な寝覚め感である。体の隅々まで昨夜の恐怖感が

                  残っていた。

                  5時50分である。障子の隙間からは明るい朝日が差し込んで・・・・・・



                  差し込んで・・・・・・・・

 


                  差し込んで・・・・・・・・・・・・・・・・・・??



                  いなかった・・・。あれ?なんでや?夏やねんからとっくに太陽が

                  顔を出しているはずや。そうか・・・・・・。そういうことか・・・。




                  この時点で覚悟は決まっていた。










                 「はいはい、どうぞ、ご自由に。」そうつぶやきながら障子をあけた。

                 予想通りだった。








                                 


                 写真ではわかりにくいが、雨雲と雨が好き放題していやがった。

                 




                 旅の日は普段より早く起きる。あなたはどうだろう?そんな時の

                 楽しみは、いつもは見られない朝日を見ることだ。山の稜線より

                 一日の始まりを告げる光を見たい。仕事も何もなく、自分のために

                 24時間を使える幸せ、それをかみしめる第一報をみたかった。

                 またみられない。お遍路が始まってずっとだ。悔しかった。





                 特筆することもない朝食を頂き、本来なら6時台には

                 出たかったのだが、またも合羽を着て、スパッツをはめているうちに

                 7時になってしまった。


                 宿を出てすぐ、どこかの個人の家庭の墓地へと続くと思われる

                 山道に入る。
                                    


                 じとじとと雨が落ちてくる。

                 本によるとこのルートもやはり遍路転がしだそうだ。

                 12番焼山寺への、かの道を思い出した。だがあれよりましだろう。

                 あの時は必死で登ることだけを考えていたが今回はあたりを見渡す
                
                 余裕があった。

                                  


                 それでもこうして写真を見ると雲の描く白の道筋は美しい。歩いてるときは

                 大変な代物だったが・・。

                 いや、美しくない!この写真を撮った直後に雨が音を立て始めた。

                 小降りになると期待していたが、予想を裏切った。

                 こんな山道も旅を始めた当初なら新鮮だったろうが、もう飽きた。

                 加えて大雨に膝痛。これまで私を悩ませていたすべてがここに

                 集結していた。

                 それでも私は歩き続けねばならない。これまで私のお遍路を支えてくれていた

                 人がいるのだ。



                 上り続けた先に、きちんとした身なりのお遍路さんがいた。宿で挨拶した人だ。
 
                 彼はポンチョを脱いでいた。雨はまだ降り続いている。聞くと、暑さに閉口し、

                 それよりはましと開き直って雨具を脱ぎ、ぬれながらいくそうだ。

                                          

                 実に単調な石段が続く。普通の山道よりも歩きやすいが、単調なため

                 精神を弱らせる。

                 私は時々山歩きをするが、その度に考えることがある。上りやすいように

                 段を作っていたりするのだが、これを作っていた人はどんな苦労を

                 したのだろうか。

                 やはり私のように息を切らせて毎日登っていたのだろうか?遍路道に限らず

                 いろんな山道でそれを案じてしまう。

                   

                   数日前の台風の影響だろうか?石段を多い尽くして枯れ枝が

                   そこで死んでいた。街中のアスファルト道路はすぐに整備されても

                   遍路道は人の手はなかなか及ばない。

                   恵まれたアスファルト道路が木々の間から見えた。車お遍路さんは

                   そこを通っていかれているのだ。雨も晴れも関係ない。

                                                                                                                                     


                        

                   それでも私を覆いつくす巨木の群れに圧倒されながら、歩き続けた。

                   上の空を一羽の鳥が雨にもかかわらず楽しそうにさえずりながら

                   飛んでいる。

                   あ、あの鳥の雛はどうなっただろう??思い出してしまった。

                   

                   





                   もやは全身ずぶぬれだ。一歩踏み出すごとに、足がぬれた土にとられ、

                   右ひざの激痛に泣き、そして私は20番札所についた。

                                    

                                    20番霊場 鶴林寺 8月14日 午前8時36分
                                                               あまりの雨の強さにいつもの指で
                                                               指し示す番号も見えない。

                      

                     今までの遍路札所の名前に気を止めたことはあまりなかった。

                     あったとしてもせいぜい藤井寺だ。だが、この鶴林寺は違う。

                     これを見た瞬間に納得がいった。そして、いかにもやんキー風の

                     若者(デートの途中のようだ)をすら感嘆させていた標を私も

                     写真に収めた。まさにここは鶴林寺なのだ。


                    




                   普通のお寺なら仁王像がある。だが、この霊場には鶴の像があるのだ。

                   大変に優美で繊細さとエレガントさを感じさせる鳥の姿であった。

                   これまでの札所でも9番にならぶ私のお気に入りの霊場である。



                   少し遅れて宿でであった親子連れもやってきた。


                   納経所の方の話では次の21番札所は

                   「ここよりも高度はあるが道的には楽」らしい。それを信じるほど

                   私はウブではない。





                   右ひざの猛烈な痛さと、猛烈な雨の勢いと、そして予想される

                   陰湿な山の傾斜を抱えながら私は歩き始めた。

                   雨の音がますます強くなってきた。

                                                 


                        

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