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                      みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 

                                 2003年夏編 第30回












                          旅先で日没をむかえると胸が痛くなる。大切な一日が終わったことへの

                          悔恨と夜に包まれる恐怖をおもうと、昼間のテンションがぐっと下がるのが

                          わかる。

                          特に外灯の少ない田舎道だと余計に怖くなる。グループ旅行なら

                          夜なら夜の楽しみもあり、また暗くなってからの趣きも感じたりして余裕を

                          もてるのだろうが、一人旅だと不安だけが心に居座るのだ。

                          他の旅人もみんな同じことを感じているのだろうか?



                          その日はまだ5:30なのに雨が降り始めたことで、すでに辺りは夕闇の様相を

                          なしていた。通り過ぎる車はヘッドライトを点灯している。そしてみんな

                          ワイパーを動かしている。恐ろしく間隔の広い外灯に、灯はまだともって

                          いなかったが時間の問題だろう。



                          無意識に私はあるものを探していた。夜歩くものの味方、一人暮らしの味方、

                          そして都会人の生活に入り込んでいるもの。私はこの旅でここに入ることを

                          意識的に避けていた。現実からできるだけ遠い所に、身をおきたかったからだ。

                          が、それをみたとき私はまっすぐ足を向けていた。

                                             


                          中には普通の若者がたまっていた。そして私も○ーソンの中に入った瞬間、
                         
                          自分がお遍路であり杖を持っていることも、先ほどのお接待もすべて

                          わすれて、普段しているように思いっきり立ち読みをはじめて

                          しまったのである。


                          やっぱり安心するなあ・・・。 いまやコンビニのない生活は考えられないが、

                          それでも私が子どものころ、コンビニはなかった。なければないでどうにか

                          なるのだろう。


                          実は今日泊る宿は夕食が出ない。ここで購入。さらに念のため明日の昼の

                          おにぎりも買っておく。(この決断は正解だった。)左手に金剛杖、右手に

                          コンビニの袋を持ち歩き始める。妙なスタイルだが現代的なのかもしれない。

 




                          雨がひどくなってきた。でもどうでもいい。カッパを出さずに歩く。この時は

                          もっと辛い思いをしたいと考えていた。どうしてだろう。

                          

                          私の歩く30メートルほど向こうにお遍路さんが歩いている。二人連れだ。

                          ずいぶんゆっくり歩いている。すぐに追いついた。小学校高学年くらいの

                          男の子とその父親だった。無意識にペースをあわせていたが、

                          父親のほうが気を遣って促してくれたので、軽く挨拶をして追い越した。




                          辺りの景色がもう見えない。夏といえど8月の中旬は旧暦では秋である。

                          車が一台も通らない。人もいない。さっきの親子はどこへ行ったのだろう?

                          姿が見えなかった。ただ、カエルだけが盛んに歌っていた。


                          私の心細さがさらに深まりだしたころ、狭い田んぼの向こうに一軒の大きな

                          建物が見えた。あれが、今日の民宿だろうか?私は今まで民宿とはまさに

                          「
家を改造した宿」だと思い込んでいた。が、例外もあった。

                                        





                           今までで一番大きな宿だ。これで四国の宿には何回泊っただろう。

                           どれがよかったとかよろしくなかったとかは考えていない。どれもが

                           個性的であり、すべて好きだ。


                           中にはたくさんのお遍路さんがいて驚いた。みんなどこにいたのだろう?

                           今日道中私はほとんどお遍路さんにはあわなかったのに。

                           廊下で義足の方にすれ違う。12番を降りてきたところで声をかけた人だ。

                           今回も話しかけたが、私のことはなかなか思い出せなかったようだ。


                           






                           浴室ではさっきの親子連れにお会いした。小学校6年生の男の子は

                           夏休みを利用して父の遍路に付き合ってくれたという。



                           さてと、第二回遍路の初日も雨で締めくくりだ。その前に洗濯しなくちゃ・・。


                                             

                           ん?有料・・?そりゃそうだろうなあ・・・。どうしようかな・・・?

                           この雨でぬれた服を明日着るのは嫌だけどなんか今は節約したい気分だ。

                           意を決して洗面所で石鹸をつけて洗う。

                           ええなあ・・・。なんか旅してる気分が高まるぞ。



                           廊下ではたくさんの人にあったのに部屋に入ると一人になる。

                           今まではなんともなかったのに、この状況に寂しさを覚えてしまった。

                           道中の心細さがさらに増幅されている。

               

                           部屋には誰もいない。私の荷物と私がこれから使う布団だけが

                           積まれている。リュックの整理をしていてふと目に留まった・・。

                           そうや、これや・・。今日一日でもっとも素敵な出来事。

                           しばらく記憶から飛んでいたが、これがあったのだ。


                                                 



                           今は一人かもしれないが、それでもやはり歩いている限り

                           孤独ではない。見ず知らずの私にこれを渡してくださったのだ。

                           今まで感じていた寂しさが消え、なんともいえないぬくもりが

                           胸に湧いてきた。お接待のポン菓子に励まされた私は、

                           今日の日記を書きはじめた(写真の左端にメモが写っている)。


                           まだ8:30だが疲れた体は眠りを要求している。

                           でも、今寝たらもったいない。すこしだけ仮眠をとることにしよう。

                           布団の上に寝転がった。


















                           仮眠といいながら結局は寝てしまっていた。目を覚ましたとき

                           一瞬どこかわからなかった。

                           そうか・・・、今遍路に来てるんや・・・。つい寝てしまったらしい。

                           今何時やろう?



                           真っ暗やから時計が見えない。見えない・・・・・・?

                           待てよ?なんで真っ暗なんや?



                           
俺は電気を消した覚えはない。





                           でも今、部屋の電気は消えている。無意識に消したのだろうか?

                           そんな記憶はない。宿の人が消してくれたのか?馬鹿な。

                           鍵はちゃんとかけてある。そこまで考えてゾッとした。鍵のかかっている

                           部屋に誰かが入ってきて電気を消したのだろうか?



                           こうなったら寝てしまおう。考えれば考えるほど怖くなる。

                           掛布団を手繰り寄せ、目をつぶった。すぐに睡魔に襲われる。

                           そんな私の睡眠を邪魔するように、どこからか不愉快な余韻を伴った

                           金属音が聞こえてきた。まるでガードレールを断続的にたたいて

                           いるかのような・・。それは外の夜の帳にさびしく響いている。

                           気のせいだと思いたかった。布団にもぐりこんだ。でもまだそれは

                           鳴り響き、私を呼んでいるかのようだった。


                           その音が
だんだん大きくなる・・・。

                                                              


                                                             

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