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     みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 

                     2003年夏編 第28回




大阪には大阪の景色があり、徳島には徳島の景色がある。そして、

都道府県ごとに言葉も違うように、一つひとつの土地にはまたそれ

ぞれの匂いがあることをこの旅を通して知った。私の住んでいる土

地はなぜかいつもツツジの葉っぱのにおいがしている。そして徳島

はいつも田んぼのにおいがしていた。思い込みかも知れないが、 

いつもお遍路の記憶をたどるときいろんな人や鳥や札所と同時に、

青い稲の匂いが私の心には浮かんでくるのだ。     



この困った場面でも私は田んぼの匂いを鼻腔に感じていた。いま、

目の前には雑草しかない。徳島の雑草はやはり徳島だけあって、

稲の香りがするのだろうか?・・・・・・・・・・・・そんなあほなことを

考えてる場合ではない。とにかく前進するのだ。もう十戒の一つを

破っている。再び道に迷ってダブルで同じ十戒を破るわけには、

いかないのだ。


さりとて、表示通り来てこの状態になったのだ。とにかく前進あるの

み。

           


私はこの雑草の中へ、じりじりと体を進入させた。





とげが体に突き刺さる。

痛い!

だが、これも修行であろう。


よくみたら手の甲に蚊がとまっている。

かゆ!

だが、これも修行なのだ。


今度はてんとう虫や。



あ・・・・・・・・・・ウンコしやがった・・・。

これも修行??









やがて道は消えた。






あれ?なんで?さすがにこれはいけない。私の前には普通に

崖があった。そうか、これを飛び越えるのも修行・・・・・・・・・・・

の訳ないやろ!!




徒歩旅の経験のある方ならお分かりだろう。歩き旅でもっとも

不愉快なのは雨でも風でも坂道でもなく、なにより元来た道を

戻ることなのだ。そんな精神衛生上よろしくない行動を出発直

後にいきなり二回もとってしまった。




アスファルト道路に戻った・・。さてと・・・。やっぱり表示はこっち

やな・・。


そうか・・・。




こんなときは
十戒の六「人見知りをしない」

を実行すればよいのだ。




おお、ちょうどよい。




目の前に親切そうなおばちゃんが歩いている。聞いてみよう。

いままであれほどいろんな人に親切にされたのだ。気持ちよく

教えてくれるだろう。



「すいません、18番のお寺ってこっちでよろしいんで
しょうか?」
(↑思いっきりさわやかな声を想像してください。)



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」







そのおばちゃんは完全に私を無視して通り過ぎた・・・・・。









あれ?







四国に来て初めて味わう感覚だ。神経質な私は結構落ち込んだ。

おれ、なんか変な言い方したかな?してへんよな・・・。

まあ、いいか。これも修行かも知れへん。

あ・・・・・・・・・向こうからお遍路さんが来た。あの人に聞けば

いいよな。よかった、仲間がいて。

「すいません、18番の道ってどっちでしょう?」
(←超さわやか声)






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



あれれれれ!!??また無視!!??


これはやはり私に原因があるんだろうか?ともかくも、この

一件、いやニ件で私はまたもブルーが入ったのは事実だ。

これ以降、人に話しかけるのが億劫になってしまった。

早くも、さらに  




     十戒その六 人見知りをしない    


れで十戒は八戒になってしまった。


なんやねん、八戒って・・。







これでは猪八戒やないか・・。














しょうがないので、猪八戒を胸に私は歩き出した。

いまだに稲の匂いが辺りに漂っていた。その感触が旅人である

私の心を支えていた。











しばらく行くと、ちゃんと表示が見えてきた。




 
(四国第18番霊場 恩山寺 2003年8月13日 14:54着)


やっぱり定番の階段の上にある。だが、久しぶりに札所をみた

喜びから軽やかに上がることができた。

                       



「ああ・・・・・・・これやな・・・・・・。」我知らず声が出た。

この雰囲気、大師堂、本堂、線香の匂い。信仰心がまったく

なかった私がなぜか安らぎを感じるこの空間。三日ぶりでしか

ないのに、懐かしさを心から感じた。こうしてみんな遍路に

はまっていくのだろうか。


大阪で書き溜めていた納め札を丁寧に入れる。


                 



うれしいなあ・・、俺はいま、お遍路さんなんや。道に迷ったり

人に無視されたりしていても、やっぱりこうして歩いていれば

いいこともあるよ。そう信じて私は次の札所に向かって歩き始めた。



帰りは当然下りだった。足場が悪い。気をつけねば、ころんでまた

十戒の最終章    
ころぶな  に違反してしまう。






皆さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、そう、この文を

読んでいるあなたですよ、あなた。予想したでしょ?







ぼて!



私は見事に尻もちをついてしまった。私の脳裏にはこの文字が浮かんだ。


        十戒 その十  ころぶな   










もういや・・・・。家に帰りたい。
本気でそう思った。














遍路をやって何になるというのだ?自己満足でしかないではないか。

今、家に帰れば5日ほどの休暇が得られるのだ。その5日で何ができる?

アメ村で買い物して、映画見て、うまいもの食って・・。


このとき私は本当に帰りかけた。そんな私を救ってくれたものが、すぐ

目の前にあった。

                                     

         

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