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天空の街へ ペルーひとり旅 



     第26回    ナスカの街 


このバスは満席だった。
みんな巨大なスーツケースを持ち、うれしそうに談笑している。ナスカの地上絵が楽しみなのだろう。
外国人は私一人のようだ。


道は海沿いの街へやってきた。向こうのほうにたくさんの船が見える。
漁船のようだ。
       


がやがや。
周囲の人たちが立ち上がり始めた。みんな荷物を持ってバスを降りようとしている。
ナスカに着いたのだ。
一気にテンションが上がる。私も荷物を持って出口へ向かう。

車掌のお姉さんが私を制止した。降りるなといっているようだ。
「ナスカでしょ?僕も降ります。」
お姉さんは笑顔でなおも私が降りるのを拒んだ。
どうやここはナスカとはちがうようだ。また座席に座った。

それにしても、落ち着かない。
この二階建ての巨大なバスに俺一人なのだ。

    

ナスカに向かう客が私一人だったとは。

かくしてこのバスは私専用となった。
景色はどんどんと荒涼としてくる。
ほとんど建物は見えず、車も通らない。
そんな無人の峡を、ほぼ無人と化した俺の乗るバスだけが走っている。


しばらく直線の道を進んでいたが、やがて蛇行を始めた。
どんどん山を登っていく。砂漠の山の中に道路が走る光景は日本では見られない。

だんだん気持ち悪くなってくる。完全にガタガタ道となった上、左右に曲がり続け、
おまけに超寝不足なのだ。これというのもションベンタイムおじさんのせいだ。



この道の景色は飽きない。向こう側は緑なき土の山なのに、手前側に草原が広がっている。



と思えば、すっぽりと頭から砂をかぶったような街が現れた。

    
道を歩くだけで、砂が口に入りそうだ。でもこの街でも人々は日々を営んでいるのだろう。


目が覚めたのが午前3時過ぎ。9時間以上たってようやく今日の目的地に着いた。
バスを降りた。




さてと、ここから地上絵を見るためには空港に行かなければいけない。
もうタクシーをひろうのもなれたものだ。
余裕の表情で一台のタクシーを止めた。若い運転手は私を乗せると、最初は無表情だったが、
ミラーで私の顔をちらちら見ている。
なんだか嫌な予感がしたが、ペルー十日目の俺はあくまで余裕の表情をするのだ。


タクシーはどんどん細い道へ入っていく。
だがこれは近道なのかもしれない。

運転手とミラー越しに目が合った。一瞬薄笑いを浮かべ、すぐに素顔に戻った。


おかしいぞ。




そう思ったとき一軒の家の前にタクシーはとまった。


数人の男がばらばらと出てきた。


彼らは一体何者かは知らないし、この家が何なのかは見当もつかない。
男たちが空港職員でも、ここが空港でないことだけは確かだ。



                                       つづく



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