天空の街へ ペルーひとり旅
第17回 知らない街の夕暮れ
村に着いた私たちは遅い昼食をとった。
そして本当にMさんとお別れとなる。
私は今夜もこの街に泊まり、Mさんは次の街へと進むのだ。
出会っていただいてありがとうございました。
あまりにも奥の深い知識と、あらゆるものを吸収しながら地球を所狭しと歩んでおられる生粋の旅人のMさんに、言葉ではいえないくらいの影響を受けた。
地球の裏側でものすごい偶然でお会いして、そして別れ、またまたすんごい偶然で再会ができた。
さすがにもう三度目の偶然でお会いすることはないだろう。
駅の中へ消えていくMさんを、格別の思慕をもって見送った。
↑この手を上げてるのがMさん
ありがとう、さようなら!
マチュピチュ村には温泉がわいている。だから旧村名を「アグアス・カリエンテス(温泉)」という。
子どもたちの遊ぶ通りを抜け、
さらに子どもたちが遊ぶ道を通り、
道の終点まで行くとそこに温泉がある。ただし日本とは違い、水着を着て入らなければいけない。
どおりで途中に水着を貸し出している店が多いはずだ。
私は呼び込みなどせず、静かに店番をしている女の子の店で借りた。3ソルである。
女の子は「これ、私の猫なの」といって見せてくれた。
この道はなんとなく日本的な景色だ。それにこの橋も。
橋を渡ってしばらくいくとその温泉は見えてきた。
これはプールではない。目的の温泉である。
10ソルを支払い中に入る。
「いい湯だな・・・・・・?・・・・・な?」
なんか寒い。
正直に言って、これがどうしても「温泉」とは思えなかった。
すんげえぬるいやんけ、このお湯。
それに・・・・・、この温泉、
汚い。
なんとも言えない、にごった色をしているのは、決して温泉成分ではない気がする。
ペルーの人々におそらくは共同浴場に入る習慣がないためだろう。
みなさんのマナーが最悪で中で頭をこすったり、暴れまわしたり・・。
お湯に汚染物質がいっぱい混入している気がする。
でもいいのだ。これが旅なのだ。私は地球の裏側で温泉にはいったという事実を残すことにした。
さっきの店に水着を返しに行ったら女の子は宿題をしていた。
「また来てね。」重い言葉を受け取った。
まだ周囲はあかるい。
今日は気の済むまでこの街を歩き回ることにする。
もっともみたかったマチュピチュを見終わったことで、決して有名ではないもの、小さなものに幸せを見出したくなった。
アグリス・カリエンテスの街は、温泉を頂上として緩やかに坂をくだりながら、最後にアルマス広場へと到達するつくりになっている。道のすぐ横には渓流が流れていた。
石畳でできた道の両側には土産物屋が立ち並び、商店の横に子どもたちの遊ぶおなじみの姿があちこちで見られる。
路上で子どもたちが遊ぶ姿がどこの国もかわらない。
南米もアジアも、ペルーも日本も、そしてマチュピチュ村も大阪でも。
横道が見えた。もちろん喜んで入っていく。
薄暗い道が続いていたが、数十歩いくと視界が開けた。
万華鏡をまわしたときのように、一瞬で景色がかわった。
人々の足元には線路が伸び、それを覗き込むように軒先がならんでいる。
なんとなく、建物が傾いている気がして少しの恐怖を感じた。
そしてマチュピチュへ続いているであろう岩山が、すべてを見下ろし悠然と自分の姿を誇示していた。
なんとなくその線路の上を歩いてみたい。
歩きながらどこへ行くわけでもなく、一歩一歩の感触を楽しみ続けた。
なんと言うことだろう、旅に出るとただ歩くという行為すらが喜びとなる。
いつしか日が暮れかけていた。
路地裏を歩き、さっきの街路へ戻ってきた。
子どもたちは相変わらず遊んでいたが、頭上の街灯には明かりがともり、店からは夕食の匂いが漂ってくる。
私も食事をしたかったが、夕食をとると一日が終わってしまう気がする。
この貴重な時間を、マチュピチュ村での活動時間を少しでも長く感じるため、アルマス広場へ向かった。中央のベンチに座ると買ってきたビールの缶を開けた。
観光客が集まる場所だけあって、まだ昼間のにぎやかさを保っている。
日本とはまったくちがう味のするビールが、心地よい刺激を伴って私の体を通過していった。
この時間よ、永遠に。
そんな無駄な願いをしている私を巨像が見下ろしている。
無論夜はすぐにやってきた。
つづく
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