第34回   北海度最美の光景 美瑛を走りぬけ、そして


僕は今、北海道の美瑛にいる。

おそらくは北海道自転車旅というのは、チャリダーにとってもっとも普遍的なものに違いない。
それでも私にとっては決心のいるプランであった。広大さが畏怖の対象であり、遠さが金銭的な壁であった。
ようやく訪れても連日の雨、あるいは曇り。一体俺はこんなところまで何しに来たんだろう、もう帰ろう。
そう思ったことも一度や二度や三度や四度ではない。



でも、今俺の前にある光景。




うおおおおおおおお!!
                                                               




THE 

ほっかいどー!










青い空が青いことは美しく、白い雲が白いことも美しく、そして命ある植物が緑であることも美しかった。
その合間を人工的な自転車なチャリが走っている。まことに奇妙な事実ではある。


美瑛はそのほとんどが丘であり、常に緩やかなアップダウンを繰り返して進むことになる。
幾重にも連なった丘陵はやがて旅人をこんな光景に導いていく。
        
この気温でもひまわりは咲くのだ。こんな光景、他では見られない。

いつまでの続いた上りだが、どこまでもやさしい坂道であり、坂が嫌いな私を静かに受け入れてくれている。
汗はもちろんかかなかった。この旅で汗をほとんどかいていないことを改めて思い出した。
さすがは北の大陸である。
                        
この道を上ればどこへ出るのだろう?
ふと左を見ると小さな横道が見えた。小道の向こうから何かに呼ばれた気がしてそちらへとチャリを向ける。


僕を呼んでいたのはこの家族だった。
親子の木と呼ばれる三本の命。
美瑛はすべての生き物が優しかった。

実は美瑛の丘はどこへ行っても当たり前のように観光客だらけであり、写真を撮るのも大変なのだが、この親子の木のそばには私以外には小さな子どもをつれた文字通りの「親子」連れしかいなかった。道から一本外れるだけでこんなにも変わるのだ。
その人たちのカメラのシャッターを教えてあげてまたチャリにまたがった。


再び大通りに戻る。アンテナが私の進む方向を指示している。もちろんそれに従う。
これまででもっとも急な坂が目の前にあったが辛くはなかった。

アンテナが突然マックスをさした。あの丘のそのまた奥のほうから巨大な手が伸びてきて、私の心臓をつかんだ。
旅人として、見たいという欲望に駆られるであろう理想的な光景がそこにはあったのだ。



風が左から吹いていることが雲の形からもわかる。
大空はあんなに空気の流れを主張してるのに、大地に根ざした木々はまさに大陸的な存在感で微動だにしていなかった。
はるばるチャリでやってきた小さな旅人を少しだけ賞賛してくれていると思った。
なぜなら私の最も好きな透明な青い色をたたえた空が、私と愛車のチャリを包み込むためにそこで待ってくれていたからだ。





この、忘れえぬ景色よ。



              

                    美しすぎて言葉にできない。


ありがとう、北の大陸。僕はこんな透明な空気に包まれたことはかつてない。
北海道最美の光景にこの瞬間、出会っていた。



丘のてっぺんまで来た。上の写真に写っている並木の前で写真を撮ろうとした。その時だ。
何もかもが大きなこの丘の中で、唯一小さなものがうごめいているのが見えた。
これまでも俺を悩ませていた存在。もちろんお車やおバスでやってこられた団体様である。
「ナントカ観光の皆様、ここで休憩します。どうぞ写真を撮ってください。」
私がつくと同時にそのナントカ観光の皆様もおつきになった。そしてみんなでかわるがわる写真を撮り合いになっていらっしゃった。
  
お一人様の僕はずっと待ち続けた。
いつもの俺なら敵視している存在だが、なぜか今は穏やかな気持ちになっている。旅で俺が成長したと言いたいところだが、空気そのものの清浄感が一時的にそうさせているためだろう。
  






ようやく撮れた一枚。







この写真を撮影後、しばらく背後の道を眺めていた。こんなまっすぐな道はどこへ行ってもあるまい。
時刻は2時前。すでに夕方のエリアに入っていた。
午後2時で夕方とは違和感を覚える方も多いだろうが、早朝から動く旅をしていると、昼が過ぎるとすでに一日の終わりを感じ淋しくなるのだ。



しばらくそこにたたずんでいた。



空気が静かに流れている。




その空気は透明である。
気がつけば団体様はどこかへ行ってしまわれていた。




道はまっすぐだった。その行き着く先は空の向こうにあった。


どこへ行こうか。僕は直線の先端を見ながら考えていた。

適当でいいや。これまでもほとんど計画なしで来たのだ。
だから今日も行きたい道を行こう。


青空の向こうに消えゆく道を見たとき、ふと都会のそれも空港に近い町の道路が重なって見えた。
何かの予見だろうか?あわててその想念を振り払ったが、不吉な予感はどうしても払拭できなかった。
最も思い出したくない場所が浮かんでしまった。
すなわち伏魔伝。別の呼び方は大阪である。

       ↑写真にカーソルをあててみてください。


そのぞっとする想念を振り払い、俺はまたチャリをこぎ続けた。


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