第32回 すばらしき夜  富良野ライダーハウス

その場所の名前はまさしく「メロン」だった。


富良野は北海道でも有数の景勝地だと聞いていた。
が、今日通ってきた道に目を見張る光景はなかった。
メロンの文字がたくさんあった程度である。

昨日は、何もせずに一日が終わった。
今日も同じだった。ただ走っただけであった。

いつの間にか
またも夕方がやってきているじゃないか。
仕事をしていたら、やっぱりうれしい夕方=アフターファイブは、旅人にとっては災厄としか思えない。


国道38号線は俺に無断でいつの間には国道237号線になっていた。
国道の名前ってどうして突然変わるんだろう?
またも寝る場所が心配になってきた。

それにしてもこの国道はずっとまっすぐだなあ・・。

あ、看板が見える。
「ふくだめろん」?
果物屋さんとは思えないし、なんだろう。
そう思っていってみるとなんとライダーハウスだった。
決めた、今日泊まるのはここだ。

「すいませーん、今日泊まれますか?」
「はいはい。じゃあ、ここに名前書いてね。」
やさしそうなおばちゃんが対応してくれた。
今日は6,7人が泊まってるようだ。
「では、メロンを切りますね。」
「はい・・・・・?」

このライダーハウスはメロン農家の兼業であった。
わずか500円の宿泊料で、結構な値段のするメロンをいただけるのである。
次に北海道に来たときは必ずこのふくだメロンにくる、今でも誓っている。





こうしたライダーハウスに泊まるとき、実のところ他の宿泊客=旅人によって
その一晩の当たり外れは決まってしまう。
誰もいないのはもちろん淋しい。ピースケは個室には泊まれないのだ。
とはいえ、人が多すぎて訳がわからなくなるのも嫌だ。
ちょうど良い人数で、それも一人旅の人が集い、それぞれの思いを交換し合う状態が一番好きである。
そんな語り合いができたとき、旅に出てよかったなと思えるのだ。

なにより辛いのが常連、またはグループで固まって場を占領している状態である。
入っていけるはずもなく、無視するのもこれまたいやらしいし、できればグループの方は、ライダーハウスやドミトリーではなく個室の宿で集っていただきたいと思ったりしている。


いま、俺のすぐそばにライダーチームと思えるグループが楽しそうにお話しておられる。
「最高速度が100キロだぜ」とかそんなお話をされているようだ。
ああ・・・、本日ははずれである。
チャリダーの俺が話しかけても相手にはされないだろう。すばらしい一夜になったものだ。

すぐそばに犬がいた。彼のほうがまだ話しかけやすそうだ。

でもなんか感じがちがう。
「君はヒッチハイク何日目ですか」という言葉が聞こえてきた。
ありゃ?グループではなく知らない人同士みたい。


すぐにはなしかけて、あっという間に一緒にご飯を食べに行くことになった。
人見知りしない正確でよかったとこんなとき思う。

ヒッチハイカーが一人、ライダーが4人、そしてチャリダーの俺である。
近くに食堂がないから、十数キロ離れた場所へ移動する。
Sさんのバイクの後ろに乗せてもらった。
昼間、数時間かけてこいできた道を数分で進んでいる。速度の差を思いっきり感じた。
民家の灯火がびゅんびゅん後ろに流れていく。

          
             バイクの後ろ座席から必死で撮った写真


今俺の前にあるのはお好み焼きだと思うのだが、オムカレーがメインの店であり
普段食ってる大阪のお好み焼きとはずいぶんちがう
高級でエレガントなお好み焼きを食いながら、関東のTさんと話した。
関東にお住まいで、友人のSさんと共にバイク旅に出たという。
ノリがよくて話しやすい人だった。




最初はグループで集っていて、こりゃ話しかけられないと思っていたのがうそのようだ。

みんなで近くの銭湯に行き、


ライダーハウスに戻ってからも旅の話をした。

行きに俺をバイクに乗せてくれたSさんは仕事がたいそう辛いそうで、なんか俺と同じオーラを感じた。旅が終わり仕事に戻るのが苦痛だとおっしゃっていた。ただし下ネタも多かった。
帰りにピースケを乗せてくれたTさんは長身でイケメンだが、下ネタが大好きだそうでそのトークの軽妙さに関西人のノリを感じた。
ヒッチハイク大学生さんは4月から就職のため、想い出を作るために日本をこうして旅をしているそうだ。でも旅話の合間合間に下ネタが登場する。

日付が変わる直前に乾杯!


今晩一晩だけの出会いに決まっている。だけど、そこで交わされた自分の夢や思いや、Hな話はここでしか交わされない貴重なものに思えた。


いいなあ、これがずっと続いてくれれば。


トイレのため外へ出た。北の大陸に出てからはじめて見えた月が私を照らしていた。
大阪で見るよりもきれいに見えたが、それは錯覚に過ぎない。月は一つしかない。
そのことに気づいたとき、まるで月が「いつまでもここにいられると思うか?お前の生きる場所はここではない。もうすぐ帰ることになる。現実が待っている」といっているかのように思えてしまった。
さっきの初めて会った旅人との会話の場面も一生そうしていたいと思う心地よさだ。
でもやっぱり今夜限定なのだ。

月を見ていると悲しくなりそうなので、目を下にやると犬のウンコがあった。
もし、ここに旅の神様が現れて、
「このウンコを食ったらずっと旅を続けさせてやる、職場を破壊してやる」といってくれたら、俺は喜んで食しただろう。
もちろん旅の神様が実際にくるはずもないし、そんなことを言ってくれるはずもなかった。

現実にあるのは、

このウンコと地元の仕事だけなのだ。




「どうしたんですか。遅かったですね。」部屋に帰ったとき誰かに言われた。
「ウンコ・・」と言いかけてそれ以上いえなかった。犬のウンコを見ながら下らぬお願い事をしていたとはいえなかった。
「ああ、ウンコに言ってたんですか。野グソは気持ちいですよね。」結局俺は野グソをしてたことになってしまった。
   
みんな疲れていた。午前1時に就寝。寝る直前に撮った集合写真。 
部屋に着くとすぐに眠ってしまった。でも誰かが下ネタを言っているのも聴こえてきた。
                                                                                                                                                                                        つづく
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