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 黒部ダム、雨男、牛乳カップ麺を
 日本一周に捧ぐ  「NIPPON GURURIN PLAN!」によせて

                        第4回 


皮肉なことに、日常から離れたときほど、現実の自分自身の現実を知ることがある。
すでに私の体は悲鳴を上げていた。正確に言うと膝である。遍路のときと同じ痛みを感じていた。
だが、口にはしなかった。心配をかけてはいけないからだ。
「もっと体を鍛えないとな・・。」ふとそんなことを思った。


道の傾斜はきつくなる。それに比例して道が道でなくなってきた。
道が道ではないとはどういうことか。
                          こういうことだ。
                
道はこうなっていた。泥流である。
その泥流を我々は歩く。ところどころにロープが張ってあるが、それを頼るとかえって危なそうだ。
前方に犬猫馬さんがみえる。


泥流はますます太くなる。川は下るにしたがって大きくなるのは当然だ。
少しでもバランスを崩すと転倒しそうだ。そう思うと無駄な力が入ってしまい、余計に膝が痛くなる。
こんな悪循環・・・嫌だな。





さらに雨足が強くなった。
ああ、もういい加減にせよ。なんでこうなるんだろう。誰かのせいにしたくなった。
どうか天よ、私たちがいくら雨男だろうが、もういじめないでほしい。
この山に登っているのは私たちの意志だ。天の助力は求めないが、なにも邪魔をすることはあるまい。

そう思ったときあることに気付いた。
体力的に私より数段上のお二人のペースである。
常に私が真ん中に位置するように歩いてくれている、様な気がした。
正確にそういわれたわけではないのだが、そんな配慮をしてくれてるように思えるのだ。
それを聞こうと思ったが、雨の音で会話もできそうになかったので、そのまま下り続けた。
何も言わずとも二人の厚意が雨の音よりも大きく私の心に入ってきた。



言葉を介さずに感じる優しさこそ本物である。

今の私を支えてくれているのは、「一期一会」といった

かっこいい言葉や、「運命」などといった

「偉大な天なるもの」ではなく、

今ここにいる「人」であり「仲間」だった。




もはや前が見えなくなってきた。    
真剣にやばい気がする。

振り返った。こんな濁流を降りてきたのか、俺たちは。
  




ついに膝の軋みが聞こえてきた。数日前の遍路の負担がここへ来て暴れ始めたようだ。
そう思ったとき谷川の音が聞こえてきた。それはドウドウという恐怖感を与える音だった。

      
途中、唯一元気な生き物をみた。眠たそうな目をしているけど、おそらくは私よりは元気だろう。


ゲゲゲゲゲ・・・と変な見送りの言葉を受けながら、ひたすら降りた。
もうすこし・・・。

そして、ようやくふもとにカンバックできた。
やったあ、とうとう俺らはやったで!1963メートルの雨飾山を制覇したで。



・・・・・・・・・・・・・・っていうかさ・・・・・・、

ねえ、


これって、
絶対に嫌がらせである。



ふもとに降り立ったとき、雨がやんだ。

お約束過ぎて喜べないやんけ。


これも雨男にはよくあるパターンである。



ということで、バンザイ!
心の中で、ウルトラクイズの勝ち抜きの音が鳴り響いた。

                     




登山口の側に温泉がある。例外なく我々は風呂好きだ。
小さいけど、恐ろしく歴史を感じさせる宿の風呂を利用した。                          



この時間の速さをどうしても信じることができない。
もう午後5時を越えていた。さっき起きたところなのに・・・。

夏だと思い続けていたが、すでに帳はすぐそこまで迫り、一日が終わるぞと脅しをかけてきていた。
今日は8月15日だ。そういえばおととしの今日も「夏が終る、一日が終わる、旅よ終わるな」と遍路道で考えていた。
暦の上ではとっくに秋である。

今、車から見える小さな田んぼの稲たちがお辞儀をしていることに、この時気付いた。
風の冷たさは雨のせいだけではなかったのだ。


とはいえ、まだまだ私たちの旅は続く。悲しみも嘆きも今だけは忘れよう。
いまから野宿場所探しである。



雨は降ったりやんだりであったが、本道から外れたところに道の駅を見つけた。
いつの間にか長野県に入っていた。生まれてはじめての信州である。
ここでいろんな備品をかき集めてテーブルにして、食事をする。
      
また新しいメニューを伝授された。
豆腐にキムチを混ぜたディナー。犬猫馬さんによるとこれをご飯にかけると麻婆豆腐になるらしい。これもまた初めての味であり、家で試したくなる味だった。
事実、ふと思い出し家で同じものを作ることがある。そんなとき、なすすべもなく私の心は道の駅での野宿した一夜に引き戻されるのだ。



       三人で今日の登山を語り、

        過ぎし日の旅を語り、

     いつか来たる日の生き方を語った。


       日付?とっくにかわっている。





眠りたくはなかった。でも旅での睡眠は何より必要なものだ。

道の駅に平然とテントを三つ張る。
ためらいがないわけではないが、これくらいが限界だろう。
さすがに四つ以上は目立つ。



テントに入ったが眠りたくなかった。


眠りたくない・・。


この時間を永遠に感じたい。


眠りたくないと思いながら、いつの間にか眠っていた。



                



翌朝、「おい、起きんかい!」という声で目が覚めた。
ふんぎゃ!道の駅の管理人?
                                      

ピースケより
 なんか長くなりそうです。すいません。最初に書いたとおり、過剰な演出を今回は避け、思いのたけを全てストレートに表現すると、こうなっちゃうみたいです。
 でもお読みいただいてありがとうございます。


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