掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール 

          






  自由と決別するとき 
                  僕らの最後の冒険


               地図を持たずに適当に、どこまでも、いつまでも・・・

                            
 多分後編(あるいは第2回)




目が覚めたとき、自分がどこにいるのかわからなかった。


横を見ると

みにくい顔が見える。


洋一だ。




あれ?
なんでこいつがおるねん?そうか・・。昨日は道に迷って車で寝たんや。

「おはよーっす。」振り返ると後ろの座席の一樹がうつろな顔をしている。


負けず劣らず、みにくいなあ。




それにひきかえ、ルームミラーに映る私の顔は・・・・・・・・・・美しいなあ・・。


などといってる場合ではない。腹が減った。
「なあ、朝飯どうするねん。」洋一も同じ心配をしている。
「まあどっかのコンビニで買おうぜ。」
「いいねえ、やっぱ俺たち都会人の朝飯はコンビニ物やな。」

さてと・・・・・・そのコンビニだが・・・・・・・・・・・・・。




「しゃあないなあ・・。帰ろうか?」
「うん。」
私たちは車を走らせた。九十九折の道がやがてまっすぐになった。この辺りならコンビニもあるだろう。両脇に民家が見え始めた。

「あのさ。言っていい?怒らない?」一樹である。
「何が?」
「怒らない?」
「ん・・・・・・?だから何が?」
帰りたくないねんけどなあ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「俺もそれ、思ってた。」
「・・・・・・・・・いいねえ。」
「みんな、明日大丈夫なん?」

大丈夫じゃないけど、大丈夫。もっと冒険したい。

「よっしゃ、まずはどこ行くか計画立てようよ。ここはどこかな・・・・・?」


私はかばんから地図を出した。

「あかん!ピースケちゃん、それはあかん。」
「へ?なんで?」
「せっかくやから、地図もなんも無しで冒険しようや。」
「ほんまや。家に帰り着くまで絶対に地図を見ずに自由に旅しようぜ。」

「そうしよう、そうしよう!大冒険や!

当時の私たちは、こんな地図を見ないことくらいでも大興奮していた。
やはり僕たちはかわっているのだろうか。それとも心境をお分かりになってくださる方は、いるのだろうか。



木々の隙間から朝の光がまぶしいくらいに落下している。
その光を受けながら、車は何の悩みもないかのように走り続けた。
中にいる私たちも、「今」を楽しんでいた。


いつの間にか広い国道に出ていた。通行人の数も多い。みんな通勤者なのだろう。
今の私たちは日常にあるすべての事を忘れていた。

身は自由だった。
そして心も自由になるために、地図を見ず走り続けた。




おそらくは北に向かって走っていたのだろう。太陽がずっと背後から照らしている。
数時間前の光景とはまた違った緑が見えてきた。
              
一つひとつの杜には一つひとつ違った緑色があるとおもう。
私たち一人ひとりの顔が違うように、それぞれの杜にはそれぞれの色がある。



とはいえ、ロマンに浸っている場合ではない。
腹が減ったのだ。
だが、さっき自由な冒険の旅に出ようと誓った。
非日常ではコンビニ食は気が進まないのだ。
もっと朝飯っぽくないことをしたい。

「そうや!この美しい自然と清流といえば。」一樹が言い出した。
「なに?」
「やっぱバーベキューやろう。
朝からバーベキューとは実に酔狂である。が、それもありだ。


いいねえ、



朝一バーベキューなんて、普通の人は胸が悪くなってできないことだろう。


いくつかのコンビニが道中にあったが、全て通り過ぎた。

「あの店、いいなあ。」私の琴線に触れる店があった。
小さな田舎のよろづ屋。
死ぬほど予想が当たった。
中には瓶のファンタやコーラが並んでいるガラスの冷蔵庫があった。軍手や食パンが肩を並べ、天井からはマスクを貼り付けた厚紙がぶら下がっている。店番をしているのはおばあちゃんで、レジの機械はなく五つ玉のそろばんがあった。
そこでキャベツを一個丸まる買った。トレイなどには入っていない。
肉もなんか知らないけど、ビニール袋に入っている物を買った。
他には何も買わなかった。というか、買いようがなかったのだ。




だんだん緑が濃くなってくる。
人の気配もない。かわりに水の気配が濃くなってきた。
   
水底まで見通せる透き通った清流が、私たちを誘うかのごとく心地よい音を立てて、一定方向に向かって進んでいる。白い岩が不思議な形状でたたずんでいた。



「あのさ、バーベキューの道具、どうするん?」
「あ、忘れてた!網も何もないよな、そういえば。」
絶対にホームセンターなどありそうにない。これではバーベキューどころではない。
「どうやって食うねん、この肉。」
「まさか、あのガソリンしゃぶしゃぶをやるわけにもな・・。」
「あほか、あんなのまずくて食えたもんじゃないで。」

にしても、どうすればいいのだろう。昨日の夕方以来、何も食べていないのだ。



 後編 Part 1 終わり
                       次回 後編 Part 2 に続く


                
                      予告写真(なぜか私たちはバーベキューをしている!道具はどうしたのでしょうか)

         

自由と決別するとき 目次



     トップページ  掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送