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アホは忘れた頃にやってくる  

秘境での一夜   
 第2回





         アホたちの感じる恐怖





まだまだ道は続いている。
どこか野宿できる場所はないだろうか?


だが道はどんどん狭くなっていく。それに先日降り注いだ雨が道に水溜りを作っていた。
「俺さ、なんかこの道、気持ち悪い。」
「実は、俺も同じことを考えててん。」
「それにさ・・・・・・。」彼はこういうと口をつぐんだ。いったい何が言いたかったのだろう。


今、こんな道を通っている。

  

振動のため、ぶれまくっている。
写真でもわかるように、草だらけで歩みを続けることすら困難になってきた。
山道に入ってすでに20分が経過している。距離はそれほどないのだが、悪路ゆえなかなか進めないのだ。


「なに?」Nが言った。
「なに?って何?」私は聞き返した。
「いや、だから今話しかけてきたやろ?」
「誰もしゃべってへん。」
「俺も聞こえてないよ。」
「絶対に話しかけたよ。だって、俺に今、『おいで』って言ったやん・・・・・・。」



「そうなのか。でもよかった。」
「よかったってなんやねん。」

「だって、その恐怖の声が聞こえたのが俺じゃなくて。」

「なんじゃ、そりゃ。絶対にお前にも聞こえるはずやで。そのうち、絶対。」

「もう、怖い会話はやめようよ。音楽でも聴こうぜ。」運転しているAが音楽をかけ始めた。


なぜか私は動画をとらないといけない気がしてきた。
カメラを構えて撮影する。ほとんど無意識でとった動画がこれである。





この動画をとった直後、
「胸が苦しい。」これは俺のセリフである。急に息ができない感じがしてきたのだ。
いったいなぜ?

直後、
「頭がいたい。」時を同じくしてNが言った。「後頭部が重い。」

「あのさ、二人とも冗談はやめ。・・・・・・・ってアレは何!?」運転しているAが叫んだ。
「今、なんか見えた!」
「それこそ、冗談やろ。」

「いや、冗談じゃない。向こうの茂みになんかが動いた。
「たぶん、たぬきかなんかじゃないの?」

「そうかもしれないけど、あのさ、言いにくいねんけどさ。」

「俺も言いにくいねんけど。」



皆まで言わなくてもわかった。



「いったん戻ろう。」
「俺もそう思う。この場所、おかしすぎる。」
「そうや、これは逃げるんじゃなくて、一時的に様子を見るだけや。」
「そうそう、様子を見るために帰ろう。」
その直後、




  ューン
      ・・。



ぞっとするような余韻を伴った唸り声が車から聞こえた。
そして、車は動かなくなった。


「え?なんで?」運転していたAの声が震えている。最初、私はAがネタでエンジンを切ったのだと思った。
ところが本当に動かないようだ。
真剣に怖い。帰りたい。

「あかん、エンジンがかからない。」Aがキーをひねるがまったく反応がない。
「これは、帰ったらだめなのかな?」Nが怖いことを言った。





ブロ〜オオオン!



うそ〜?帰れないといった瞬間にエンジンがかかった。

「あのさ、この道では帰れないよ。」Aが言う。
「どういうこと?」
「この道の細さでは方向展開ができない。それにあの悪路をバックで30分もかけて戻れるはずがない。」
「確かにそうや。」

俺たちは進むしかなかった。さっきまでと変わりないエンジン音を聞きながら、どうして急にエンジンがかかった理由を考えようとしたが、その答を出すのがあまりにも怖くて思考を止めた。
でも、何かしないといけない気がしてまた動画をとり始めた。
黙っていると怖いから、ナレーションを入れながら撮影をする。


が、10秒もしないうちに、

カメラのスイッチが切れてしまった・・・。






それが下の動画である。




「ふんぎゃ、こわい!」
「ピースケ、どないしたん?」
「カメラが勝手に止まった。」
「もう、勘弁してよ。いったい、俺たちはどこへ行くというねん。」


本当にそうだ。俺たちは今、どこへ向かってるのだろう。そしてなんでこんなところにいるのだろう?」
なぜ今ここにいるのかもわからなくなってきた。






さらに車は走り続けた。もう誰も何も言わなかった。ただ、どこかで休みたかった。

不意に目の前が開けた。

        

「ここならテント張れるよな。」
その場所は5メートル四方の広場となっていた。地面には小石が一杯落ちていて、寝ると痛そうだ。
でも、これ以上進むのは嫌だった。

「よし、ここに決めよう。」そういったとき、




      お

      お

      お

      お

      お

      お

      


      
 お

       ・
       ・
       ・
       ・
       ・
       ・
       ・
      

      

                   



うなるような声が聞こえてきた。すぐ近くからだ。


声というか、金属をこすり合わせるような音。
でも、なんともいえない不快な感じのする音だ。


声がやむと辺りはしいんとしていた。地上のあらゆる音がさっきの声に吸い込まれたようだった。
この無音の世界で数年の時が流れた。いや数秒しかたっていなかった。
早く何かの音を聞きたかった。




「今の、聞こえた!」ようやく誰かが口を開いた。
「俺も聞こえた。声?」そこにいる全員がうなり声を聞いた。
「車のエンジンの余韻かな?」Aはボンネットを開けて確かめた。もう音はしなかった。
「もう嫌や。」


怖い、はっきり言って怖すぎる。空気はさすように冷たい。
カメラの電源が勝手に落ち、それぞれが体調不良を訴え、最後にうなり声が聞こえた。
俺たちはどうしてここで野宿をしないといけないのか?なんでこうなったのか。


だが、一つだけはっきりしていることがある。
深夜にあの道を戻るのは危険だということだ。

ここで野宿するしかない。うなり声の聞こえたこの場所で。


辺りはまったく明かりがない。懐中電灯に照らされて薄ぼんやりとした山もみじが見える。
本来ならその紅葉を楽しむところなのだが、赤い色が逆に不気味であった。




漆黒の闇から赤いもみじに見つめられながら、俺たちはテントを張り始めた。
いや、もう一つ俺たちを見つめている存在がいた。


恐怖の一夜は続く。

                                                


        

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