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アホは忘れた頃にやってくる  

秘境での一夜   
 第1回



  アホたちの旅立ち





「もう,



帰ろう。」



誰かが言った。



「俺もそのほうが賢明やと思う。」
「同感。」


満場一致で撤退を決意した一行。みんな無意識に体を震わせている。
寒さからではない。

帰るといってもここは人里はなれた秘境。5時間をかけてここまで来たのだ。道の崩れ方もひどかった。
もうすぐ日付も変わろうとしている。よりいっそう危険な気がする。



「アホな企画をたてるんやなかった。」
とどまるも進むも地獄だ。自らを地獄に投じた愚か者たちの唇は紫色をしていた。





お話は数時間前にさかのぼる。






                   暇な週末がやってきていた。しかも愛する三連休だ。集った旅人は3人だった。

                 なにをするか、まったくきまらないまま俺たちは集合した。


                 どこへ行こうかと協議していて、ふと私の脳裏にある場所がよぎった。

                 ここから数十キロ離れたところにある、とある秘境。


                 そこにはかつて隆盛を誇ったが、今は静かに眠る鉱山があるという。

                 今寒い11月下旬である。どうしてそんなところに行きたいとおもったのかどうしても説明できない。

                 
ただ、何かに呼ばれた気がした。



                 みんなに提案したところ、

                 「え〜?こんな寒いのに秘境に行くんか?」
 
                 「だる〜、近場でいいやんけ。」



                 などとは誰も言わなかった。

                 「すげ〜、そんな村あるんや。面白そう!」満場一致で決行がきまった。

                 このノリのよさこそが私たちの財産である。

                 
                 「もう夕方やからな。飯は?食堂あるん?その山の中に。」

                 「絶対無いよな。コンビニも無い。」

                 「俺、車に土鍋積んでるで。」

                 「あ、俺はコンロがバイクにある。」


                 なぜそんなものが車に積んであるのか、誰もお互いに聞かなかった。それが俺たちの当たり前である気がした。

                テントも車に乗っていた。


                 「じゃあ、
秘境でなべを作って食べればいい訳や。そしてそのまま寝るのだ。」

                この狂ったような提案もまた満場一致で可決した。





                前回の更新からお待たせしました。アホが忘れた頃にやってきました。

                   

                シリーズ第3弾、ここに開幕します。




                車は東へと向かう。秋の太陽はとっくに姿をけしているが、残光がかろうじて山の稜線を深紅の色で際立たせており、

                そこだけが現実の世界の光を持っていた。

                われわれはこれから異世界にいくのだ。



                小さな商店で食料を買い求めた後、車は一路国道を進んだ。

                間違いなく国道なのだが、周囲の民家もまばらとなり、外灯の間隔も恐ろしく広いものとなった。

                唯一の頼りはガードレールがあるということだった。

                

                
                「ピースケ、道はこっちであってるん?」

                「あってる。」

                「それでさ、野宿できるような場所はあるん?」

                「さあ?」

                「さあって・・。ある程度の広さがないとテントが張られへんやん。」

                「なんとかなるよ。」

時間が経過していく。まだまだ走っている。いくつかの国境を越えた。

周囲はとっくに闇に沈み、すれ違う車もなくなった。だれもこんなところまで来ないのだ。

でも僕らのテンションは高かった。誰もしないアホなことをしているということがうれしかった。
その不必要な喜び方が動画に残っていた。





上の動画で左に曲がっているところが最後に映っている。

そこから完全な山道に入るのだ。



一気に振動が襲ってきた。

おそらくは何年も手入れがされていない道なのだろう。むろんアスファルトなどではない。
闇から腕を伸ばす樹木の枝以外に、ヘッドライトに照らされるものがなかった。

「怖くなってきた。」誰かが言った。私も同じ気持ちだった。
「でも、ここまできたら行くしかないよな。」

「そうや、俺たちの面子にかけて。」


こんなどうでもいい「面子」をかけたことで、後の恐怖を味わうことになるとは誰も予想しなかった。帰るなら今のうちだったのだ。

                                            

                                                       
 

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