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アホは忘れた頃にやってくる  

秘境での一夜   
 第3回





         アホたちのお食事




ようやくテントを張り終わった。空腹だったがそれより明かりがほしかった。
ランタンをつけるとあたりの様子がある程度はうかがえるようになった。






テントの周囲は木に覆われており、その向こうはみえない。
ただ、すぐそばまで山が迫っているのが、どす黒いシルエットからわかる。

時折、ガサ という不愉快な音が聞こえるがおそらくは風のせいだろう。そうでないと怖い。


体の一番奥のほうに、さっき体験した恐怖感が残っている。
私はテントに入る前に周りを見回した。何もいない、大丈夫だ。もう大丈夫なのだ。
そう自分に言い聞かせた。


みんな一様に無口だった。静かにしていると余計なものが聞こえる。
テントのすぐそばでパチッとはじけるような音が聞こえた。
誰かが枝を踏んだのか?まさか・・。

こんな野宿、全然楽しくない。




「よし、乾杯しよう!」
「そうや、乾杯や!もう知るか」
「そうや、
さっきのうなり声なんて知るか!


「・・・・・・・・・・あほう、思い出させたな。」
「すまん、とにかく・・・・・かんぱーい!」


          

一杯の酒が私たちに平常心を取り戻させた。(だから字も白に戻る。)
「いやあ、うまい。そうや、鍋を作ろう。」


この深夜にこんなところでこんな鍋を作るという不思議な行為。
これがなんともいえない面白さをかもし出していた。                                 

材料が何だったかは忘れた。ただひたすらうまかったことだけは覚えている。

Aは焚き火台を利用して焼き物を作り始めた。
(直火はおこなっていない。)


ただのスーパーのお惣菜の焼き鳥や生のピーマンがこの上もなく美味だった。
煙にあぶられることで香ばしさが生まれている。


日付を越えたころ気温ががくんと下がったのがわかった。
「俺、いいもの持ってるで。」
「あ、俺もあったまるもの持ってきた。」
「え、俺もやで。じゃあせーので出そうか?」


せーの!


    
     
どん!どん!どん!



ぎゃあ、なんじゃこりゃ。メーカーこそ違えど、全員同じタイプの器具を持ってきていた。
普通の人はこんなものはもっていないと思う。
僕らはさんざん笑った。
酒を飲み、鍋をまた食い、そしてストーブを見て笑い転げた。


時刻はすでに午前2時を回っている。
「さあ、心から楽しんだしそろそろ寝ようか。」

幸せな気持ちでライトを消そうとした。

そのとき、










突然エンジン音がした。
一同、寝袋から飛び起きた。
「何の音?」
「・・・・・・・・。」

私はその刹那、この音が頭上を飛ぶ飛行機のエンジン音であってほしいと思った。
だが、どう考えても車の音だ。
Aの顔も青ざめている。(あとで聞いた話だが、彼は自分の車のエンジンが勝手にかかったと思ったそうだ)。

ここは人里はなれた深夜の山奥。車がやってくることなど考えられない。
とはいえ、一応ここは林道ではあるのだ。

そして最悪なことに僕らは周囲の状況をほとんど確認せずに、ただ広くなっているという理由でテントを張ってしまっている。
このまま車がやってきたらどうなるのか?


どうか、あのエンジン音の主は離れたところの道路を走っていますように。
だが、その期待も裏切られた。確実に車がそこまで来ている。
あの車が現実のものでなくても怖いが、現実のものでもやはり怖い。


みんなは無言でエンジン音を聞いた。



どんどん近づいてくるではないか。



                                    つづく




                                           


        

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