みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記

                                2003年夏編 第43回


悪条件というのは二つまでなら何とかなる。だが、それ以上だと、どうにもよろしくない精神状態を招くということをこの旅で私は学んだ。
単に足が痛いだけならかまわない。歩いているのだから。
一人で延々と歩くのも、見方を変えれば旅人らしくていい。
だが、せめて天候くらいは味方をしてほしかった。グループ旅より一人旅のほうが好きと言う人は山ほどいるだろう。だが、晴れより雨が好きな人は?

地面に不愉快な黒い粒が落ち始めた。さすがに、もういい加減にしてほしい。
これでこの旅、何度目の雨だろう。私は虚空を見上げた。そこには無限の空。前を見ても無限の道があり、後ろにも無限の道がある。そして左にもやはり無限の海があった。

果てのない空間を、小さな人間が歩いている。そしてそんな哀れな私を、空から大きな顔がじっと見つめている。



半ば自暴自棄になった私の前を・・・・・・、


おカップルのお乗りになった軽ワゴンが軽やかに通り過ぎていった。

男「ねえ、こんな道を歩いている人がいるよ。あの人何やってるんだろうね?」
女「マジ〜!信じらんない。私、こんなさびしい道、一人だったら耐えられない。うふーん。」

男「大丈夫、僕がいるじゃないか・・。」

女「ほんとー?うれしい。うふーん。」


とまあ、当て推量だが、こんな感じの会話をしていたと断ずる。普段なら何も思わぬ光景なのだが、孤独に陥ると、くだらない妄想を抱いてしまうものだ。あなたはそんなことはないだろうか?



上からの雨と、海からのしぶきで、さすがに我慢がならず合羽を着た。
フードは視界をさえぎるので極力着けないようにする。
         
そういえば、今何時なのだろう。薄暗くて勘が鈍っている。



道が徐々に海から遠のきだした。それと連動するかのように車の量が増えてきた。

やがて完全に海が見えなくなると、左には小さな畑が現れてきた。だが、それも数箇所だけでほとんどは生い茂った草むらであり、歩道まで伸びた雑草に触れるたびに私と荷物をぬらした。

ついに両足の感覚がなくなってきた。曲げ伸ばしが困難になり、ちょうど面接練習の時のような歩き方になっている。

向こうのほうに、標識が見えてきた。これまで「室戸岬まであと○○キロ」という文字ばかりだったが、今度はどうも違う輝きを感じる。どうか、素敵な内容でありますように。







果たしてそれは、
実に感動的な文字であった。
  

ようやく境界線である。

この文字を過ぎると、一度、道は海沿いに戻る。だが、それも一瞬であり、これから街中へどんどん入っていくのだ。
そう、この孤独を与えてくれた回廊ともお別れなのだ。この光景の見納めである。そう思うと感慨深いものがあった。

地面がぬれているのがお分かりだろうか。左側の林がどんどん濃くなっていき、海から引き離される。


こうして歩いてばかりいると、道に対する「勘」みたいなものが生まれてくる。それと同時に、地理に関する判断力も生まれてくる気がする。これまでの歩道は、一本の白い線でのみ区切られていたが、段差がつき始めた。まだ家は見えないが、そろそろ市街地のはずだ。歩道の段差がそれを予告している。
そしてそれは私の最後の
宿泊地、尾崎のはずだ。

はじめに見えたのが、この小さなうどん屋さんである。4時過ぎだと思われるが、すでに店じまいであった。
         

民家が見え始めた。その向かいにはガソリンスタンドまである。
                 
おお、いいねえ。このあたりがいよいよ、
今日の宿泊地、尾崎だろう。
よかった。思ったより早かった。体はくたくたであり、脚も棒のようだが、俺はやりきった。後は、風呂に入って、食事をして眠るだけだ。へっへ〜ん!


雨なんか怖くないもんね。いくらでも降りやがれ!






道はガソリンスタンドを越えた直後にこうなった。







あれ?尾崎様は??






なに?このどこまでも続く、

さっびしい道は・・?





それに・・・・・・・・。



雨足が強くなってきた。期待通りに・・・。


                              何が地理に関する判断力だ・・・・・・・。
                                           
       
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送