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          みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記

                              2003年夏編 第19回



                          四国の道は静かである。


                          都市部であってもやはり静かだ。

                          車の群れもお互いに譲り合っており、クラクションを聞くことが

                          あまりない。車が静かだと人の心も静かになる。道行く人たちは

                          周囲に気を配っている。だからお遍路が安心してできる。


                          だから私は今、歩いている。


                          都会でも静かな四国。山の懐のこの道はもっと静かだった。静か

                          なのは耳にだけではなく、目にも静かに映った。大阪だと山道でも

                          ガードレールにスプレー落書きがあったりして、目にも騒がしい。


                          四国の静かな景色は、そんな余分なものを見なくてすむ。すると

                          この山並みは大阪より緑が濃いことに気付く。緑が濃いと

                          音も濃くなる気がする。

                          今、左の茂みから鳥の呼び声が聞こえた。雨上がりの濁流の音が、

                          鳥のさえずりと同時に響いてきた。

 
                          坂道を下りながら、道端の看板にも目を凝らした。お遍路さんを

                          対象とした宿の看板だ。いいなあ、今度はここにも泊ってみたい。

                          目に映るすべてがいとおしい。のぼりには恐怖感を覚えていた

                          激流がきれいに思える。
                

                       道はさらに下る。斜面一帯が小さな滝になっていた。

                                                          
                                               

                         注意鏡に自分の姿が映った。ずいぶんひどい顔をしている。やはり

                         疲れているのだろう。髪の毛もぼさぼさだ。両手で毛をかきわけた。

                         両手でかきわけた。



                         両手で・・・・・・・!?



                         なんで俺、両手使えるねん・・・・・・?


                         なんで手ぶらやねん?


                         あ、持ってない・・・。






                        杖忘れた!!
 

                         どこにあるねん?さっきフィルムを巻き上げたところか?


                         せっかく下った道をまた登る。旅に出て一番不愉快、かつ

                         元気をなくすのは同じ道を戻ることである。今回はそれも

                         坂道であったため、心身両方が疲労した。

                         たしか、 この辺だ。俺がカメラからフィルム抜いたのは・・・。



                        ない!




                         とすると、どこや?まさか・・・。

                         さっき、カメラをこかしたところか?そこしか考えられへん。

                         げ〜!めっちゃ上やんけ!いややなあ・・・。

                         どおしよ?いっそのこと・・・・・・




                         杖を置いていって、新しいのを買ってしまうか・・・?




                         アホな!ずっと一緒に旅をした仲間や、そんなことできるかい!

                         だが、実はこの時本気であきらめることを考えてしまった。



                         暑い。汗がだらだら流れる。そんな中を必死で登った。

                         もお!なんでやねん。山登りは終わったはずやぞ・・・。これで

                         もしこれでなかったらどうなるんやろ?



                         とてつもなくさびしくなってきた。やはり一緒に歩いた仲間だと

                         思うとどうしてもこの手に取り戻したかった。

                         この角を曲がると、さっきの場所に出る。もし、もし、ここにもなかったら

                         あるとすれば・・・・・

                         焼山寺だ。

                         かまわない。札所までとりにかえってやる!



                         あ、でも、できれば、やっぱり、帰りたくないので、そこにあってほしい。

                         角を曲がったとき、私の目にこんな光景が映った。


                            マウスを当ててみてね



                         おお!神様よ!いや、この場合は仏様よ!ありがとう!

                         杖があったこともうれしいし、札所に戻らなくてすんだこともうれしい。

                         再び、しっかりとその杖を握り締める。忘れるということは、まだ

                         手になじんでいないということだろう。
 

                         ゆっくりと息を吸い込んだ。同じ道を行くのは辛いが、前へ歩くのだ。

                         さっきと同じ場所から、同じ声の鳥がまた呼びかけてきた。






                          20分も歩くと、集落が見えてきた。両隣にそれほど古くない家が

                          並んでいる。どこにでもいそうな家族連れが道端で話しこんでいる。

                          こういう何気ない光景にこそ心魅かれる。人目があることは承知で

                          写真を撮った。

             

                           この道をさらに行くと三叉路に出た。どっちだ?地図を見ても

                           どうもわかりにくい。頼りにしている遍路シールもなかった。

                           一本は下りで、一本はのぼりで、もう一本は急なのぼりだった。

                           こうなったら思いのままに歩いてやる。私がどれを選んだかは

                           いうまでもないだろう。




                           右にはさっきの川。そして左には何もない山があった。ずっと

                           ずっと歩き続ける。どこまでも歩いた。


                           景色が変わらない。本当にこの道でいいのだろうか?

                           4時を回っている。

                           8月も後半に近くなると、そろそろ日が短くなる。暗くなるまでに宿に

                           つけるだろうか?

                           地図を見ても、どうしてもわからない。なぜって?目印がないのだ。

                           現在地は?


                           道を間違えたか?だけど、あるいて戻るのはいやだ。しょうがない。

                           もう少しだけ歩こう・・。



                           歩いた・・・。


                           歩きましたよ・・・・・・・。




                           景色がかわらへん!マジで間違えたかな?どうしよう・・・・・。

                           まさかタクシーに乗るわけには行くまい。特例としてバスでさっきの

                           三叉路までは戻ろう。宿に迷惑をかけるわけにもいかない。



                           バス停・・・。




                           バス停・・・・・・・?



                           15分ほど歩いただろうか?

                           みつけた!やればできる。ちゃんとあるじゃないか!

                           思わず駆け寄った私の目にはこんな光景が・・・・・。

                                    マウスを乗せて味噌漬け


                                                   

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