第9回 もくもく
第三展望台から急激に道は下り始めた。
霧のように見えるが、雨のようにも感じる。
こがなくていい分、体は楽だが、雨の日のくだりは実に緊張するのだ。
上り以上に牛乳の中を進んでいる気がする。
ん?
ここまできこえますか??
この音、マジ?
今は7月だぞ。それなのにこんな音が聞こえるなんて信じられない思いで私は動画をとった。
[高画質で再生]
2008kita02 [ウィキ]
ウグイスがどこかで鳴いている。
姿を見たかったが、ただでさえ片手で運転しているので余所見はできなかった。
道は大きな蛇行を続けており、ハンドルを握る手が汗ばんできた。
完全な視界不良にもやがて隙間が生まれてきた。
時計の高度計も平地に近い数値を示している。
気温がふわっと暖かくなり、視界が開けた。
おや?向こうの山から煙が上がっている。一体なんだ?
行ってみよう。行きたいところにいく。
それにしても目の前の家、でかいなあ。
一瞬街中に入ったが、左折してしばらく行くとまた孤独ロードとなる。
それにしても本当に他の旅人に会わない。
観光客には会うのだが。
あたりがまた白くなってきた。霧が再発生したのかと思ったが、この霧は臭い。
そうか、霧ではなかった。さっきの山の中腹から上がっている煙の正体がこれであった。
噴煙口のすぐそばまでいけるようだ。もちろん近づく。
火山らしい。
湯気に手を当てるとかなり熱い。かじかんだ手を温めたが、体が臭くなっていた。
これほど名前をあてやすい山はあるまい。
看板を見ると予想通りだった。
硫黄山
そしてこの黄色の山には大勢の観光客様がいらっしゃっていたが、一歩出ると誰もいない。
僕の進む道には原生林と先の見えない道路があった。
そこを俺は一人走る。
一人チャリをこいでいる小さな哀れ者を、灰神楽のように覆いかぶさる雲のすきまから誰かが見つめている。
巨大な顔がじっと見つめている。
この霧と汗とほこりと挙句の果てに硫黄煙までが染み付いたぬるぬるの体をきよめたい。
そう思って入った温泉には。
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