最終回 南十字星は輝いた!
2007年まであと少し。
つまり12月30日。
つまり真冬・・・。
俺は再び
波照間島の最南端にいる。
波照間島の最南端だからここで俺のたどり着ける日本は終わり。
時刻は午前5時!
力いっぱい寒い!!
じっと待っていた。
どうしても見たい!
早く出てこい!
そしてあなたは出てこないでください。
ただいま5:15分。そろそろかな?
あ”〜!?
お話は前日に戻る。
昨夜泊まった宿は普通の宿だった。
食事もついている。
家族連れや小さなグループで来ている人がたくさんいらっしゃった。
つまり俺は一人だった。
それでもわずかに一人旅と思われる人がいた。
横の酔った一人旅と思われるおっちゃんがこう話しかけてきた。
「兄ちゃん、どの虫を探しにきたんや?甲虫か?蝶か?」
自分の好きなものはみんなも好きに決まっているというマニア特有の話の展開が、横のおっちゃんだけではなく、他の旅行者からも聞こえてきていた。
やっぱり俺は一人だった。
昨日までは行きずりの人とめちゃ楽しくやってたのになあ・・。
あとは南十字星を見るだけだ。
見るならもちろん最南端の場所だ。
水平線に夜明け直前に見られるが、実際に見られるかは分からない。
空の低い場所には雲が出やすいからだ。
朝5時半には着いておくべきだという。
ここから歩いて1時間。
てことは4時半には起きないと・・・。
げげ〜、4時半かあ・・。
30日、そのげげ〜という時間の4時半・・。
ちゃんとおきてる自分がすごい。
外を見た。
真っ暗だった。
やめよっかな?
布団がぬくいし・・。
あれ?メールのランプがついている。
夜のうちに受信したらしい。
「ピースケさん、こちらも旅人同士の出会いはありませんでした。
ピースケさんは南十字星、根性で発見してください。」
AKI氏からだった。
俺の心に灯がともった。
いや、火がついた。
南十字星を見るためにここまで来たのだ。
布団も確かに魅力だが、やっぱり行こう。
さすがに寒い。
ここに途中の写真がある。
↓
←ここですよ
↑ 真っ暗・・。
昼間記憶しておいた道をゆく。
暗闇の中に沈み込んではいるが、海が声を上げている。
俺を呼んでいる。
そしてここへ。
もう一つの最南端の碑。
南を見た。
おそらくはあの辺りから南十字星が上ってくるのだろう。
そこは雲で覆われているではないか。
でも待った・・・。
俺の頭上で輝くのだ。
風をよけるために、昼間写真を撮った最南端の碑のそばで座る。
30分経過・・・。
寒い、暗い・・。
まだ星が見えない。
でも、雲が見える。
あ!!
残念ながら東から太陽が昇ってきてしまった。
この段階で私は南十字星が輝くことはないと悟った。
「あきらめる」という行為は旅先でもやはり嫌なものだ。
だが、私には時間がなかった。
宿に戻る途中、幾匹ものヤギが私に向かって叫び声をあげてきた。
こんな時間に人の姿を見るのは彼らにとっても珍しいことなのだろう。
バイバイ、やぎくん。
宿に入ったとき他の旅行客は朝食のテーブルに着き始めていた。
私も無言で座った。
みんな私が4時半に外をうろついていたことなど知らないんだろうな。
昨日みた9人乗りの飛行機に乗り込む。
その前に体重を量られる。セスナ機のバランスを取るためだ。
この9人分の席はパイロットの助手席も含まれる。
そこに座らせてほしいと頼んだが、受付のお姉さんは今日は人数が少ないのでそこはダメだとおっしゃった。
急角度でセスナは飛び上がった。
窓の外には・・美しい光景が。
あ、↓
最南端の先端が見える。
俺はあそこに立つためにここへ来た。
でも南十字星は見られなかった。
悔いが残るなあ・・。
今度ここにこられるのはいつだろう?
輝く4つの星をそのときには必ず見たい。
そう思い俺は目をつぶった。
これまでの8日間(わずか数日の出来事なのだ!俺の心では数ヶ月の広がりを持っているのに)が、
次々と再現されてくる。
この旅は俺を旅人として幸せにしてくれた。
西表島でであったダイスケ氏、与那国島でであったAKI氏にKAZ氏、KAN氏。
これほど光ある出会いはこれまでの旅ではなかった。
それを己の心が実感したとき、
南十字星はすでに存在していた
ような気がしてきた。
夜空に輝く4つの星は見られずとも、
今なお俺の心には失うことのない4人の旅人が、
永劫の輝きをもって存在していることに気づいたのである。
そう、星は俺の頭上ではなく、
すでに心で輝いていたではないか。
西表島でダイスケ氏やオジイとであったとき、彼らは俺をずっと前からそこで待っていてくれていたように感じていた。
どなん地球遊人もそうだ。
必ず再訪をしますと誓ったあの宿だが、実は閉館されてしまった。
二度と泊まれなくなった宿は俺にすばらしい出会いを与えるために、
最後の冬を持ちこたえていてくれたにちがいない。
もしかしたら団体様だって、
俺に「一人」の面白さを教えてくれるためにわざと邪魔していたのだろうか。
そうかもしれない。
山羊君も牛君もみんな俺をあそこで待ってくれていた。
達筆のおじいさんにいたっては、老いてなお旅することのすばらしさを教えてくれている。
そしてなによりAKI氏もKAZ氏もKAN氏もダイスケ氏も、
俺に「出会うことの尊さ」を教えるためにずっと前から、
南の島で待っていてくれたような気がしてならないのだ。
くだらぬ感傷といえばそれまでだが、これこそが旅をしたものだけが感じられる、
出会えたものすべてを尊べる心情なのである。
これを感じるのと感じないのとでは今後の人生もまた大きく異なる。
ちがうだろうか?
目を開けたとき、そこに
南の島はなかった。
大勢の人でごった返す都市部の空港。
旅行者、団体様、そして働く人。
飛行機を降りた私は、
携帯の電源をいれ、
職場からかかってきた、たまりにたまった留守電を聞き始めた。
俺の頭上で輝け!南十字星 日本最南端への旅 終 |
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