第14回 日本で最後に沈む夕陽 




同じ太陽・・・、

だけど、旅先で見る夕陽は絶対に

普段みてるやつよりより美しいと思う。




それは実生活の忙しさのなかで心を殺している私たちにとって、
「夕陽を見る」ことすら幸せの対象になるからだ。


そして、この島でまさに日本で最後に沈む夕陽を見にこの丘へやってきた。



旅先で朝陽や夕陽にこだわるとき、どうしても雲がじゃまになる。
また悪いことに昼間晴れていても、日没になると曇ってしまうことが非常に多い。温度が変化し雲が生まれるのだ。


残念ながら今日もそうだ。


見る見るうちに雲が出てくる。
話によると与那国で夕陽を見られる人は数えるほどしかいないそうだ。


その「数えるほど」に入りたい。




丘を駆け上る。


ついた!



わあ!




雲がいっぱい見える・・・・・。



おねがいっす。


かけらでもいいから、



夕陽を見せてくらさい。













  

本当にかけらだけが見えた。

「でも、ラッキーですよ。これでもかなりましなほうで。」
同行していたAKI氏が言う。



このAKI氏とはさっき知り合った。
同じドミトリーの隣の部屋にお泊りで、
僕らは出会った直後に一緒にここへやってきた。


年末にこの南の島で会う一人旅同士の出会い。
これこそが、旅の面白さ。


完全な日没の後私たちは宿へ戻った。


どうでもいいけど、普段見てるのは「夕日」や「朝日」であり、

旅先で見るのは「夕陽」「朝陽」と書きたくなるのはなぜだろう?







今夜私が泊まるのは「どなん地球遊人」というユニークな名前のドミトリーである。

ここにはもちろん「団体様」はいない

いるのは日本のどこからか集まってきた「旅人」である。


火曜日のみ素泊まりのこの宿がサービスで食事を出してくれる。
       
            この質素さが好きだ。


今日の泊まりは私を入れて3人。
前述のAKI氏と、もう一人KAZU氏である。 

         
        左からKAZ氏、ご主人、        AKI氏、ピースケ。




全員が一人旅って言うのがよかった。




実のところ、私はドミトリーでサークルっぽい輪ができているのが苦手である。
中に入り込めないからである。


だがこうしてそれぞれがピンで果てまでたどり着いた、
というシチュエーションは、語り合えるのですきだ。

   


この旅人3人に、宿の主人、奥さん、息子さん、ヘルパーのSさん、
そして猫くんの8人で夏の涼しい風を受けながら夕食をとった。

        猫くん。







夕食の後、みんなで海を見に行った。



道路というにはあまりに狭すぎる路地を幾度も曲がり、
街灯がほとんどないアスファルト道の向こうに黒い海が見えた。
そこはもちろんコンクリートで固められたりはしておらず、
見えない向こうの向こうまで砂浜が広がっている。




  

波は静かだった。
与那国島は周囲に島がない。
だからよほど波が高いと思っていたが、静かな潮音が繰り返されている。


僕らは砂浜に寝転がった。
みんな旅のスケジュールはばらばらだった。
KAZ氏はしばらくここに滞在するそうだ。
AKI氏はダイバーで、海にもぐりにこの島に来た。

そしておれは。
南十字星に会う前章としてこの島に来ている。


これで4日目の夜。




波の音がいつまでも繰り返されている。

その音を聞きながら今日一日はすばらしかったと思う。
きれいな景色も好きだが、おれはやっぱりこうして行きずりの人と語り合うのが好きだ。










今日出会った人のことは




一生忘れないだろう。




この旅が終われば、もう会えない。




それでもだ。








逆に、毎日あっていても


すぐに忘れてしまいたい人が


大阪にはいっぱいいるというのも、これまた悲しい事実なのだ。




それでもいい。
日常のストレスがあるからこそ、非日常の出会いに心を震わせることができる。
だから俺はいまこうして西の果ての南の島で寝転がっているのだ。



宿に戻ったのは日付の変わった午前1時半。すばらしい。KAZ氏と彼の乗ってきた車。





明日、海中探検!



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