第3回  西表島の海の話



12月だというのに、4時前の南国・西表は明るい。

借りてきた今にも壊れそうなカブにのってさらに南下する。

左手に時々海が顔をのぞかせる。

すれ違う人がいなくてさびしい。
昨日までは人間がうじゃうじゃいる職場で走り回っていたのに、今の俺は誰もいない島を走っている。
ガショガショ音を立てる空気のほとんど入っていないタイヤで。



不意に道がアスファルトでなくなった。
それだけで驚いてしまう。いかに自分が旅から遠ざかっていたか、だ。
両側に民家がない。おそらくは海岸に向かう人が歩いているうちにできた道なのだろう。
道とは人が歩いてできるものであり、これが本来の姿なのだ。


その道の原点の向こうに、世界のホテルの原点があった。










本当にこれだけである。
キャンプサイトといっても林があるのみ。
電話もない。
もとより電源がない。

おそらくは日本で最も設備が整っていないキャンプ場。
まさに世界のホテルの原点。

あれもこれもないけど、
人がいた。




荷物を置くとすぐそばに小道があることに気づいた







               

        この道を進むとどこにゆくのだろう?


意味もなくそっちへ行ってみる。



いいなあ・・・・・、




こうして無計画に歩けることが。



歩きながら心が高揚していくのが自覚できた。

昨日までは、

朝起きたら、俺の進む道は職場へのルートしかなく、それ以外はなかった。
職場でも同じルートばかりをとおり生きていた。

あんなの「道」でなく「コース」である。

そして私は「ひと」ではなく「職業人(じん)」であった。


俺は「社会人(じん)」や「職業人(じん)」から
いま「旅人」、「ひと」になったのだ。



歩く人の俺。


こうしてあてもなく歩いたというのに、おお・・・・・・・


なんということだろう!!



        

人(ひと)気のない海岸、砂浜、そして大阪とは明らかに色の違う空。

                  まいりました、西表島さま!!



振り返るとこんな
原生林があった。
                                            もはやジャングル。




見渡す限り、人(じん)工物はひとつもなく、全部大自然。
そのすべてが美しかった。
命を輝かせていた。



その中にすっぽり包まれる喜び。






旅の初日でもうこんな光景に出会えている。
この後もいろんな出会いがあることだろう。



何もないキャンプ場に戻った。

そこには「人」がいた。
正確に言うと「旅人(たびびと)」である。



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