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 実況中継中 

 再び
南の大陸へ! 九州自転車極寒の一人旅
                             
第3回




今まで走ってきた道があんな遠くに見える。そして下のほうに見える。
それだけ高く上ったきたのだ。

もうそろそろ下り始めるはずだ。                                   


船間の町に入った。
腹減った〜。


あ、小さな店屋がある。でもなんか中には食パンとか缶詰と菓子か置いてない。
できれば小さくてもいいから食堂でうどんを食いたいなあ・・。
まあ、いける、いける!どっかにあるやろ。
快適に走るのだ。

ただいま13:16。



みなさん想像できる展開だろうが、
船間の町を通り過ぎたころから完全に民家がなくなった。
そしてのぼりがきつくなり、私の顔も険しくなる。

うー、うどん屋でなくていい。なんでもいいから、飯屋ないかな。
どこに飯屋があるねん〜??

ただいま12:24.



ううむ・・・。やばい。そしてずっと上ってる。
「どっからきたの?」不意に声をかけられた。工事の作業員だった。
「大阪からです。」
「すごいね〜。この先は2キロほど上ったあとはずっと下りだよ。」
「おお!すごい情報ありがとうございます。」

やったね。2キロなんて余裕だ、余裕。
作業員の兄ちゃんに礼を言って颯爽と走り出す。しかしすごい工事やなあ。

というのはうそでこんな傾斜角度7度をすきっ腹で上るのは無理だ。

でもどうにか、チャリを押して上る。

上る。



あかん!

足が半歩ずつしか進まなくなってきた。

すこしずつ怖くなる。もしハンガーノックを起こしたらどうしようもない。(ハンガーノック=体の栄養がなくなり自分の思い通りに体が動かなくなる現象。)

少しでも何かを摂取したい。水はあと5センチほど。どうにかなるか?

そういえば捨てようと思っていたぽかりのペットボトルがある。2滴ほど残り液を飲んだ。めちゃ甘く感じる。
また半歩ずつ進む。時速1キロくらいのスピードでしか進めない。
やばい。このままだとくだりに転ずるころには夕方だ。
また半歩ずつ歩き出す。
そこからユースまで24キロもあるではないか。

くそ〜、あのときの小さな店でなんで食パンでもいいから買っておかなかったんだろう。今ではただの食パンがすごいご馳走に思える。

歩きながら妄想が浮かんできた。
「兄ちゃん、どこからきたの?」軽トラがとまってなかからおっちゃんが話しかけてきた。
「大阪?えらいねえ。これ差し入れ、食べなさい。」といっておにぎりを差し出してくれる・・。

妄想には続編があった。
「あ、カバンにそういえばカロリーメイトを入れていたはずだ。」こうして私は無事に走り出す・・。
カロリーメイトどころかカバンに食品の類はまったくない。
薬ならあるが・・。

あ、薬!そういえばビタミン剤を入れていた。リュックから取り出し口に含む。水を節約するためそのまま飲み込んだ。
これをのんで少しはましになっただろうか?


ああ、今ならほんのひとかけらの砂糖でもいいから食べたい。
こんなにつらい空腹は初めてだ。チャリで延々のぼっているため余計にエネルギー消費が激しいのだろう。


歩きながら反省をし始めた。
地図をちゃんとみたつもりだが民家がないルートであることには気づいていなかったこと。
なんの非常食も買わなかったこと。
いくつもあった買い物のチャンスをそのうちに、といってやり過ごしたこと。
あれが食いたい、これが食いたいと旅のテンションに任せて考えすぎたこと。

反省をし終わったときに、めまいが襲ってきた。
ぜったいこれ、貧血。

ただいま何時何分?



まっすぐ歩けなくなってきた。

はっきり認めるしかない。
このままだと行き倒れだ。
大げさに書いているのではない。このとき本気で行き倒れの心配をしていた。

ふと前方にこれがあることに気づいた。
電話ボックス。もちろん携帯は圏外だ。これで連絡を取ろう。
そして食べ物を持ってきてもらおう。あるいは軽トラを呼ぼう。

名案だ。

名案?

誰に連絡をして食べ物を持ってきてもらうのだ?
誰に電話をしたら軽トラを出してくれるのだ?
なんの当てもなかった。
アホか、俺。

もうやだ。最後の力を振り絞ってとった写真。


ただいまの時間・・・時間って何?

10分ほど座っていた。すこしは回復したかもしれない。栄養はなくても、足が動けばどうにかなる。

立ち上がった。
あかん、足の動かし方がわからない。

チャリにもたれかかりすこしずつ押していった。
道に落ちてるごみがお菓子に見え始めた。
危険な状態だ。





目の前にトンネルがあった。
トンネル?
そういえばトンネルの出口には自販機があることが多い。
それに望みをつなごう。せめて水をのまなきゃ。

もし、なければ・・・。

決まっている。わかるものか、わからないことだけが決定されている気がした。

トンネルの中で壁にもたれかかった。意識せずともそうした。
ずるずると体を引きずりながら進む。


正直、旅に出たことを後悔。

今の俺の頭にはそれしかなかった。
人生初めての感覚、旅への後悔!


トンネルを出た。
後悔は絶望へと変わった。水一滴すら手に入らない。

終わりだ。

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