限界のそのまた先へ 紀伊半島迷いの一周 7
HPなのに訪れてくれた人に何度も質問するのは変だろうか? まあよい。やはり
気になるので聞きたい。知らない店に躊躇なく入れますか? 私は全然ダメである。
放浪だ、冒険だと騒いでいるくせに、食事となると店に入るのがなぜか不安なのだ。
だから、「ここは、やめ。次の店にしよう」などといっているうちにタイミングをなくして
しまう。誰か連れがいれば大丈夫なのだが、今回のこの旅では、その頼みの綱の
D君もやはり私とおなじなのであった。しらんかった・。
道中いっぱい店があった。だが、どうしてもふみきれない。どうする?どうする?
といっているうちにシャッターを閉める店も出てきた。朝のユースの食事と鮎以来
何も食っていないのに・・。
「なあ、こうしててもきりがないから、もう次の店に絶対入ろうな。」
そう決心して走り出した。だが皮肉なものだ。覚悟を決めたとたんに店がなくなる。
だんだんめまいがしてきた。Dのハンドルさばきもおぼつかない。事故をおこさなけ
ればいいが。
十分も走ったころネオンが見え出した。もう夜だ。光がまぶしい。あたりにはほとんど
店らしい店がない。そのネオンは我々を誘っているように見えた。ようやく、飯にあり
つける。Dのスピードが速くなった。わかる、その気持ち。私も必死についていった。
もうすぐだ・・。飯!飯!もう、和食でも洋食でも何でもよい。明るいネオンが私たちを
迎えてくれた。ありがとう、ネオンちゃん。
大きなバイクを停めたDは、しばらく立ち尽くしたあと、その場にしゃがみこんだ。彼の
力を奪ったのはこんな文字だった。
そう、あなたの予想通り・・・・・・・・
ご宿泊○○円 ご休憩○○円
素敵な一夜をお二人でお過ごしください
をい!!
またかよ!今回の旅、二回目だ。てっきりファミレスか何かとおもったのに・・。
「どうする?」
「どうするもなにも、入るんかい?!」
「死んでもいやじゃ。そうじゃなくて、飯!」
「とりあえずさ、今日のキャンプ地にむかえへん?もう暗くなってきたし。」
「そうやな、その途中になんかあるやろうし・・。」
「・・・・・・了解・・。」
二人とも最後の力を振り絞ってバイクにまたがった。さっきより5億倍ほど、腹が
減った気がする。なにより「素敵な一夜をお二人で」にはまいった・・・・。
もう、なんでもよい、とにかく走るのだ。でないと素敵な夜どころか「最悪な夜」
を迎えることになってしまう。
帳がどんどん下りてくる。エンジン音で消されてよくは分からないが、付近の
田んぼからカエルの鳴き声が聞こえてくる。これが元気なときなら情緒だとか
旅の思い出だとか言って聞きほれていたのだろうが、今はそれどころではない。
Dはぐんぐんスピードを上げていく。あせる気持ちは分かるが法廷速度30キロの
私はどうしてもついていけない。こまったな・・・。そう思った瞬間!
ギギー!
横合いから出てきた車がものすごい音をたてて急ブレーキを踏んだ。Dのバイクを
よけようとして。そして、信号は赤であり悪いのはこちら側であった。衝突することは
なかったが勢いあまったDのバイクはそのまま歩道に乗り上げ、さらに向こうにある
畑の中に頭から突っ込んでいった。今、目の前で何が起きているのだろう?私には
にわかには悟りえなかった。
だが、現実はそんな私を無視して進行していく。
ドス!鈍い音がしてバイクが地面に倒れこんだ。
Dの顔には・・・・・。
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