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インドへ、そしてマザー・テレサへの道
第29回 やったぞ、目標達成!ガンジス川にて 編
心臓から流れ出したあとの血液の音がする。
普通、恐怖感に襲われたときは心音が聞こえるものだが、
今は血の音がする。
でも顔からは血の気が引いているのがよくわかる。
予防接種をしてこなかった自分を悔いた。
どうしよう・・・。
テンションが一気に数百分の一に、いや、数億分の一になるのを感じた。
話は二十分前にさかのぼる。
おそらくはこの人たちはここでずっとこうして命をつないでいるのだろう。
「福祉」などという言葉は社会システムのたくさんの用語の一番最後のほうに位置しているに違いない。
生まれてからその日を必死に食いつないでいる人が国民の多勢を占めているなどという事実は、私がここで記すまでもないのだ。
その人たちが、本日何十番目かのお客様を迎えた。
みんないっせいに私のところに来た。
「ジャポニ、案内をしましょう、この辺は物騒ですから。」・・・いや、もう慣れてしまいました。
「ねえ、面白いおもちゃ買って。」・・・ってただの石の人形じゃん。
「ずっと君の事を待っていたよ。」・・・うそつけー!!
本当にもう、どーっと人が押し寄せてくるのだ。
これがこの人たちの生きるすべなのだろう。
そのすべてに笑顔だけでこたえた。愛想笑いくらいしかできない。
目指すは沐浴できる場所である。
まずは昨日のガンガーに行ったが、ここは全員が店員さんとなっていた。
「ジャポニー!ヘロー!ジャポニー!」
階段のところにいる人、みんないっせいにこっちをみてる。
よほど目立っているのだろう。
あかん・・・。沐浴した瞬間にどうにかなりそう・・・。
とりあえずは河岸に沿って歩く。
つもりだが、まっすぐにはどうしても進めない。
少し行くだけで完全に路地裏となり、すぐに迷路となった。
迷路というかこれではダンジョンである。
ダンジョンにもいろんな人がいた。
むしろこの路地裏こそ人の息吹が感じられた。
そこかしこに小さな店がいくつも軒を並べていた。日本のガード下のイメージが近い。
にしても、なかなか川が見えない。あまり歩き続けると元の場所に戻れなくなってしまう。方向音痴でなくともこのダンジョンでは迷うに違いない。
公衆電話屋からなぜか煙が上がっている。
まだまだ歩いた。
牛の糞が山済みになっている路地裏の向こうにちらっと薄茶色のものがみえた。
迷わずそこへむかう。足元に気を配りながら。
足元は階段だった。その最下段は水の中だった。
辺りに人影はない。小さな空間ができていた。
ここしかない。
ついに適所をみつけた。
っつっしゃー!!
やるでー!
すでに下は短パン一つだ。
Tシャツを脱ぎ捨て、貴重品はボロボロの袋に入れて目のつくところに置いた。
行くぞ・・・。
水面を何か分からない物体が団体で流れている。
覚悟を決めた。
遠くで子供の声がする。
人生最大の会心のショット。
俺、いまガンジス川につかってる。
俺は今ガンジス川に・・。
幾度この沐浴を夢見ただろう。
目標達成・・・・・・・・・・。
この思いが心地よい余韻を伴って私の魂の隅々にまで鳴り響いていた。
その直後、不幸が襲った。
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