インドへ、そしてマザー･テレサへの道　第12回

　　　　　

　
　　　インドへ、そしてマザー・テレサへの道

　　　　　　　　　　　　　　　　第1２回　　ダムダム編
　　

これ、日記をそのままスキャナーで取り込みました。
旅をしていると周期的に「飽き」が来るものであり、それはこのインド旅でも同じなのだが、
すぐにテンションがもどってくる。こんなに精神の高まりが持続したことは人生で一度もない。
8月5日（土）、インド滞在5日目の日記である。

郵便局で友人へのエアメールを出した。予想通りの窓口の対応。
おばちゃん、やる気というか働いている感じがしない。

窓口のすぐ横にポストがあった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　

そのままパークストリートへ行こうと地下鉄に乗った。
この時間ならすごいラッシュのはずなのだが、がらがらである。
ラッキー。

アナウンスが聞こえる。「終着駅、ダムダム、ダムダム」
あれ？

やってもうた・・。

反対側に乗っていました。インドでも方向音痴をやってしまった。

これでいいのだ。
遠いユーラシアの大国で知らない駅で降りて知らない町を歩ける機会を得たのだ。
すばらしいではないか。

驚くほど自転車だらけの町。
コルコタの中心地は車のクラクションが鳴り響いていたが、ダムダムは自転車のベルが街の主役だった。
　　　　　　　　　　　　　　
ここはどちらかというと地方都市らしく、時間がゆっくりと流れ人々の顔も穏やかだった。

幸せやなあ。
こんなことが出来るなんて。

ただし、インドの人はどこでもインド人である。

「Hey！友だち！友だち！」あちこちの出店から声がかかる。やっぱりね・・・。

　　　　　　　　　
そんな声を無視して出店の前でも写真を撮ったりした。
そして歩き出した私を追いかけてくる人がいる。
おいおい・・。そこまでして客引きをするなよ。

まだ追いかけてくる。

　　　無視だよ、無視。

追いかけてくる。しかもおっちゃんが二人で。
そこまでして俺にものを買わせたいのか？

　　　　　無視だよ、無視。

手にサングラスを持っている。

そんな安っぽいの買わないよ。

いらないってば。

　　　　　　　無視だよ、無視。

にしても、見覚えのあるサングラスやなあ・・・。

ちょうどこんなデザインだ。

あ！？

それ、俺の・・・・・・・・・ですか？

おっちゃんが俺の落としたサングラスを拾ってくれたんや。

それなのに
　　　無視だよ、無視。
などとしてしまった・・・。

どうもありがとう。おっちゃん、何百メートルも俺を追いかけてくれて。
お礼に一枚、パチリ★

至近距離からとったためなぜか俺の顔だけが真っ白になってしまった･･。
本当にどうでもいいのだが、顔色の違いって写真に撮るとよくわかります。

いいなあ。たった二人のおっちゃんのおかげでダムダムをお気に入りに入れることにした。

すっかりダムダムの街が好きになって地下鉄の駅へ戻った。

改札を通るとポリスにとめられた。
「おい、お前！カメラ持ってるな？」
「は、はい。」
「絶対に撮るなよ！いいな。」
「分かってます。」
「よし、行け！」

官憲横暴の典型やんけ、おっさん。せっかく好きになったダムダムの印象を落としやがって。

インドの地下鉄での写真撮影は絶対禁止とされている。
テロ防止対策なのだ。テロリストはまずは写真を撮ることから始めるのだ。

にしてもだ、俺がテロリストに見えるか？こんな色白の軟弱なテロリストがいるか。

パークストリート駅に着くと、そこからまた遠くへ行きたくなった。
適当に歩き路地裏の中華料理屋へ入る。
行き当たりばったりが大好きなのだが、それがインドでも頭をもたげてきた。
この店の玉子スープはおいしかったっす。

ここから駅へ向かう途中、また出店の前で写真を撮ってしまった。

背後にはインドにはめずらしい綺麗な車が停まっている。

さらに歩いた。
インドの人たちの営みを見ながら。
道に設けられたインド唯一の福祉策の水道から出る水で
体を洗う人たちや、

これは何だろう、よく分からない食べ物を売る屋台のおっちゃんを見ながら。

一人で歩くのは不安だらけだけど、その分、心が敏感になる。
すべてに心が反応し高揚していくのが分かるのだ。

そしてこの心こそが旅に出たものに与えられる特権なのであろう。

パークストリートのマーケットで洋服を買った。インドの思い出にしたかったのだ。
ところが店を出るとき、またもえらそうなおっさんに呼び止められた。
買い物袋の中を開けられ、レシートを見せろといわれた。
おっちゃんは満足そうにうなずいてレシートを少し破いた。これがチェックのしるしなのだろう。

まだまだ心が高揚する出会いがあった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　