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 みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記
                      2004年春編 第8回
  (高知県大方町)

※今回は、今まで抱いてきた疑問をいくつかあなたにお聞きしています。もしよければお答えください。


また国道を行く。歩きながらいろんな思いが湧いてきた。その思いは今日の宿に集約されていった。
あなたも経験はないだろうか。一日の旅が始まった瞬間にもうその日のゴールのこと、特に寝る場所が気になることが。

この時の私もそうだった。こんなに疲れているのだから、こんなにがんばっているのだから、やっぱり豪華な宿に泊ってみたい。
おっきな風呂に脚を伸ばして入り、そのあとテレビ見ながらだらだらすごしたいなあ・・・。


先ほど断念したのは熊井の集落であった。こんな看板があった。
            
やはり街中に入ったほうがいろんな人のぬくもりを感じられるのにな・・。
しょうがないから国道を行く。

アップダウンを軽く繰り返しながら進んでいくと、前方に現代的なものが見えた。
つい習慣で入ってしまう。
     
そしてこれは長い旅を通して得た経験なのだが、腹は減っていなくても、食料を得られるときに買って食べてしまうという行動もとった。空腹感に左右されると、つい食べそびれることがあまりにも多かった。

遍路を経験した方にお聞きしたい。
他の旅人にはない、遍路特有の行動として電柱やガードレールを注視してしまう
というのがないだろうか。

そこに遍路シールや矢印シールが貼ってあるからだ。そして時としてこんな手書きのものに遭遇することもある。
      私がどちらを選んだかは推して知るべしである。





歩きながら思わずつぶやいた。「潮の匂いがする。」

旅に出るとにおいに敏感になるのは私だけだろうか。天気の変化や地形の違いもなんとなく匂いで感じてしまう。あなたはそんな経験がないだろうか。

この勘は果たして正解であった。坂を上り詰めたところで左をみると春の海があった。とはいっても、悲しい灰色をした春の海である。
     
足元には魚市場らしきものがある。昼過ぎなのにたくさんのおっちゃんがいて、仕事をしていた。その先の海にある網に特に心を奪われた。なぜだか知らないが。
灰色の海と空が、小さな漁村を圧迫しているように私の目に映った。




眼をさらに後方にやると遊歩道が海の中を通り、その先はいつの間にかテトラポットとなっている。
                   

不意に目の前をこれもまた灰色の鳥が横切った。鳥までがこんな色をしているのか。そのまま中空をすべるようにとび、陸にはものすごく近いのだがおそらくは無人であるであろう島に消えていった。




道はどこまでも続いた。自然に逆らうことなく、海岸の形どおりに出来ている優しい道だ。だから必然的に蛇行をしている。歩く人には辛いものではあるが、それでもよい。

遠くのほうまでその蛇行している海岸線が見える。そして岬が増殖しているのが分かる。ふと室戸岬にいたるあの55号線を思い出した。
                  


私は歩き出すと休憩することを忘れてしまう。本来は正しくない旅のスタイルなのだが、6時間以上歩き続けたこともある。大阪人だからなのか、現代人だからなのか、それとも私だからなのか、休憩をとる時間がもったいないと思ってしまうのだ。
このときは休憩をとった。が、重量のあるリュックの上げ下ろしというのは実は非常に労力を使う。だからこんな休憩の仕方をした。
                   

やがて町堺。

15:18 大方町


          
今回の旅は、大自然はいつまでたっても青い空、青い海を見せてくれない。

やがて道は海から離れる。逆に心が休まった。
いくら天気が悪くても田んぼは命を感じさせる緑を消すことはない。なんだかそれがものすごい偉大なことのように思えた。



道は再び海岸通に出る。そして普通の民家を何軒か通り過ぎ・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・てはいけなかった。ここが今日の宿なのだ。



宿か・・・。どう見ても普通の家だが、宿泊客を泊めていることが縁側を見ると良く分かる。


 
「あのね、ごめんね、お遍路さん。」宿のおばちゃんが言った。
「なにがですか?」
「今日は人がいっぱいとまってるから、テレビのない部屋しか開いてないのよ。」
「いいですよ、ははは。(一週間前に予約してたのにな・・。
「それにサーフィンする人ばかりだから、夜中までお酒のんで騒いでるかもしれないわよ」
「い、いいですよ、ひ、ひひひ・・。(俺は神経質だ〜。

このように口から出る声と心の中で思う声を著しく乖離させたまま部屋に入った。
                          

「あの〜。テレビがないのはいいとして、窓がないんですけど、この部屋。」とはいえずおばちゃんにはたっぷりと愛想笑いをプレゼントしてしまった。

      
しみのある低い天井。ガラス戸からわずかに入る光だけが頼りである。

                     
そして湿ったたたみにはしみがいっぱいついていた・・。
でもいいや、人がいっぱいいるなら、話し相手になるかもしれない。
廊下を人が歩くたびに、私の部屋のガラス戸ががたがた音を立てる。廊下に出て、誰かに話しかけようと思った。すぐそばにカップルがいらっしゃる。
「こんちは、お二人はサーフィンですか?」
「ああ、おたくは?」
「歩き遍路です」
「なに、それ?」二人はそういうとこちらを一瞥もせず、おそらくはテレビも窓もあるだろう二階の部屋へと歩いていかれた。

雨にぬれても野宿をすればよかったと思った。

遍路ブームの今、私は遍路をみんなが知っていると思い込んでいた。
では、あなたはどう思っていたか?


いや、まてよ。野宿なら風呂には入れない。そうだ、でっかい風呂で脚を伸ばして入って疲れを取るのだ!
その風呂は私も、あなたも予想通りの大きさだった。
しかも、先人たちの垢が浮いてる!入れん!


でも、だ・・。

全国の女子高生の皆さんが、
この写真を期待しているのではないか?
あなたもそのはず・・・・・。(涙)

   だから入りました。これはもちろんあなたのため。



   日課の日記をつけると、もうすることがない。

         だから すぐに寝ました。これは自分のため。


次回、もしかしたら、最終回。                                つづく      

        
おっきな風呂に脚を伸ばして入り、そのあとテレビ見ながらだらだらすごしたいなあ・・・。はいずこへ

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