みんな、ありがとう 普段着お遍路の記 2003年 冬編  
                                     
感動


夏編ほどではないが、それでも長く続いた遍路日記も今回で感動の最終回を迎える。長い間お読み頂き本当にありがとうございました。

では、
最終回をお読みください。


そうか、今日は元日か・・・。本当に迎えてしまったんやな、あれほど望んでいた、

旅空の下でのハッピーニューイヤー。

それが実現したのに・・・・・・
喜びも感動もなく、ただ私の心は今まで見てきた大海のように穏やかであった。何事も本番を迎えると心が静かになるのだろう。心も海のように平穏だが、いまから本物の海を見にいく。

2004年1月1日 朝6時起床。

今日の行程は日の出を見て決めよう。心の赴くままに進もう。37番へ行くのか、それともあるかないのか。いずれを選んでも私は後悔しない。迷いの思いすら消え果ていた。

宿のおばちゃんが私のために鍵を開けていてくれた。どうもありがとう。
外は思ったよりも寒くはなかった。宿を出てすぐに海に下りる道がある。すでに幾人かの人が来ていた。皆、グループだ。一人でいるのは私だけのようだ。

左のアキレス腱が炎症を起こしているのがはっきりと分かる。痛みを通り越して無感覚に近いものがあった。
海岸に下りた。うまく見えない。さらに歩いて砂浜を横切っていく。
初日の出までまだ時間があるようだ。
    
広々とした海岸でたたずみ、柄にもなく今までの自分の軌跡を振り返ってみた。この数日間、ほとんど黙して語らず、ただ先にある札所を目指して歩き続けた。それを楽しかったか、それとも苦痛なのか自らに問いかけることすら、没意義ですらある。今いえるのは、こうして旅に出られていることが、やはり幸せだ。日常ではいかに辛くても、いまこの瞬間だけは幸せなのだ。では、旅が終わった私はやはり不幸者なのだろうか。


しかしなかなか太陽が出ない。寒くなってきた。この世でも最も偉大な太陽が、小さな人間をじらしてどうするのだ。早く出ろ!
     
時計を見るともう7時を過ぎている。冬の日の出はこんなに遅かったのだ。
朝寝坊の私はそんな当たり前のことすら忘れていた。



広い海に歓声があがった。
向こうから太陽がじらすのをあきらめたのか、顔をのぞかせ始めた。

     

子どものころから、なぜ朝日は海で見たくなるのか不思議だった。
その理由がふるさとを離れた異国で初めて分かった気がする。

     

海に反射する一筋の光。その光は私の足元までやってきている。
遠くの太陽と私が海を介して結びついている。
だから、人は海で朝日を見たくなるのだ。考えすぎだろうか。

振り返っておどろいた。
    
砂浜にも、ここから見える安和の駅にも大勢の人がいる。みんなどこからかきているのだ。そしてどこかにかえるのだろう。
思えばこれも旅のようなものかもしれない。人はずっとどこかを目指し、そしてどこかへ戻っていく。
もう水面を離れた太陽も幾億年も旅をつづけている。目の前にいる波もはるか彼方からやってきて、幾歳月の旅路の果てにここへたどり着いたはずだ。
目に映る全てのものが旅人に見えた。
旅をすることでいろんなことを学ぶ。今回の私は実に月並みではあるが、それでもこんなことを思った。生きることは旅をすることなのだ。この世に存在するということはすなわち旅をしているということなのだ。違うだろうか。



このとき私は今日の行程について結論を出していた。
       
宿に戻る前にもう一枚だけ写真を撮った。一隻の船が横切っていく。あの船もまた旅人なのだろう。



荷支度を済ませ食事を頂いた。
             
昨日の夜から感じていた不安、すなわち年末年始に人のお宅にお邪魔している居心地の悪さは、やはり拭い去れなかった。

私は宿を出た。
右側を見る。37番札所への道が見える。
       
この道を行けば、新しい世界にいける。そこにはいろんな人が僕を待っている。鳥も札所も道もみんな僕を待っている。新たな冒険がそこにはあることだろう。

大きく息を吸い込んだ。しばらくその右手の道を見つめた後、私は左に向かって歩き出した。

安和駅の手前に遍路看板があったはずだ。駅に付いた瞬間に旅が終わる。だから、
最後に遍路マークを目に焼きつけようと、振り返ったがタイミングが悪く見えなかった。





駅から見える光景は南国そのものだ。だが、それも目にはいらず、ただ、ただ胸が詰まる思いで私は列車を待っていた。
              
そして、僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

            

           
感動の最終回 終わり



そして・・・・・・・・・・・・・


 
次回予告
 
「感動の最終回の次の回」
     (↑おい!)
 

                               ・・・すいません


                                     
                          
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送