みんな、ありがとう 普段着お遍路の記 2003年 冬編 第14回
                                           (必死の全力疾走の巻)

道は次第に下りだした。やがて普通の住宅地へと入る。空の青さは相変わらずだ。
向こうに深い森が見えた。これまでの経験だとあそこが次の札所だな。うん。
そう思って近づくと

わあ!なぜか鳥居が目に入った。

・・?これは神社やな・・。
参道で子供を遊ばせていた女性に聞いてようやく謎が解ける。お寺と神社がくっついてるそうだ。

                 30番霊場 善楽寺 12月29日 13:36

今日は33番の雪渓寺まで行かねばならない。しかしその前の宿をとっているのだ。
あとどれくらいやろ・・?15キロぐらいかな?
それなら5時の納経締め切りにギリギリ間に合うだろう。

そう思って地図をみた。



わあ!30キロはあるではないか?これでは納経どころか宿に着くのも相当遅くなる。その次の宿もかなり強行なプランでとってあるので、33番は朝7時の開門を待つわけにはいかないのだ。
いろんな迷いが頭をよぎった。全てが両立し得ない条件であり、どれかをあきらめねばならない。
  プラン1

  ゆっくり歩いて景色や人との出会いを楽しみつつ、

  夜遅く宿について、朝納経するか・・?
  
  
    いいねえ。のんびり遍路だよ〜。

いや、それなら明日が辛い。
では、
 プラン2

 必死で走って景色も人との出会いもあきらめて、

 今日中に納経するか?
   
それも嫌じゃ。遍路はあくまで楽しくやりたい。

よし・・・・・・・・・・!

決めた!折衷案である。

 THE 完璧なプラン
  必死で早く歩きながら、人との出会いと景色を楽しみつつ、今日中に納経するのだ。
もはやむちゃくちゃである。矛盾もいいところである。

そのためにはええと・・・

時速8キロぐらいで走るのだ!

かつ、ゆっくり走らなければならない。



完璧にむちゃくちゃである。でもいいのだ。これでいいのだ!
                        




かくして私は必死で走り出した。もとい、ゆっくりと景色を楽しみながら、走り出した。
川が流れている。その側を走る。通行人が巨大なリュックを背負い、杖を振り乱して走る変な男をいぶかしげに見つめていた。
背中のリュックが肩に食い込む。なんか走りにくいと思ったら、靴紐がほどけている。
知るか!



前方に橋が見えてきた。
わあ!?この橋はどっちむきに渡ればいいのだろう?へんろっちシールも、遍路君の看板もない。
あー、急いでるときに、もう・・。
どうでもいいや、行き当たりばったりで走れ!ここで地図を出している暇などない!
あたり!しばらく行くと、電柱にへんろっちがいた。
札所を出てから40分がたった。どんどん都会になる。

33番の納経リミットまであと2時間半。残された距離は推定20キロ!歩いてはいられない、走れば間に合う!


大通りに出たとき目の前にこんな看板があった。
 
 3.5キロ←  札所  →4.2キロ
迷わず左だ。



わあ!その左に市電を見つけた。珍しいなあ。でも急がなきゃ!

で、アホな私はまたこんなことをしている。わざわざ三脚まで立てて・・。

めまいがする。当たり前だ、ノンストップで走ったのに、急に止まったりするからだ。
かまうか。今度は急に走り出してやる!
とりあえず道がいいので助かる。普段は情緒がなくて嫌いなアスファルトが今では救いの女神に見えた。
ありがとう・・・文明の産物よ。


わあ!(さて、ここで問題。今日は何回「わあ!」と叫んだでしょう?)
なんやねん、この道は。え!




なぜかどんどん路地裏に行く。でも、アスファルトだからまあいいや。


まあ、いいや・・。


まあ・・・・いい・・・・・・・・・・、


   
ことあらへん!なんで登山ねん!

ここは高知市内、県庁所在地様やぞ!
でもすぐに終わるはずだ。

そう、すぐに・・・・・



終わるわけがないやろ!
         
アスファルトもくそもなかった。あの
 3.5キロ←  札所  →4.2キロ

あの3.5キロの種明かしはこれやったんかい。



でも足を止めることなく、山道を走り続ける。
不意に胃液が上がってきた。が、飲み込む。
おれ、何をしてるんやろ・・?ゲロを我慢してまで走る価値があるだろうか?
そして、人生とは・・・・・?
などとシリアスぶっている場合ではない。あと2時間を切っている!

急がねば。再び顔を上げたとき、目の前には、信じられない光景が・・・・・・。

                                            
            
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