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みんな、ありがとう 普段着お遍路の記

                    
2003年 冬編 第9回

                         (土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線の横)



まっすぐな道はどこまでも続いている。サポータを貼るために自転車専用道へ入ったが、国道よりこちらのほうが快適だった。
脚の痛みは奥のほうで騒いでいたが、心は静かだった。海がさざめく声が聞こえる。今日はずっと真っ青な海を左に見ながら歩いてきた。この太平洋とはもう顔なじみになった気がする。私は立ち止まり室戸岬が見えるかどうか、覗き込んでみた。が、岬は見えたものの、あれが私の大好きな室戸岬かどうかはわからないままだった。

知らない間に並木道に入っていた。時折、人とすれ違うがすぐに私一人になる。みんなどこでどうしているのだろう。言うまでもない。正月の準備だ。
右側に民家が見える。そこからは一家団欒(聞こえてくる物音すべてがそう聴こえるのだ!)の音がする。

遍路シールが海のほうをさしている。ここすら遍路道なのか。砂浜は決して歩きやすくはないが、気候が快適な今は「歩き道」にこだわってみたい。この道は歩く旅人しか通れない空間なのだ。だから俺はそこを歩きたい。


すぐに道はさっきの自転車道に戻る。ここもまっすぐで気持ちがいい。なぜかジョギングをしている人が多い。みんな真冬なのに汗をとばして走っている。

気がつけば目の下に線路がはしっていた。あれがかの有名な「土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線」か・・。 そういえば昨日から見ていた気もしたがこうして目の下に見えると、はるか向こうまで見渡せて感じがいいではないか。                        
しかしうまく名前が組み合わさったものだ。「ごめん・なはり」とは。大阪人の私には「ごめん・なはれ」の方がしっくりくるのだが。





あっかん。やっぱ膝が痛いっす。ちょうどこれまで以上に並木がきれいなところに出た。景色が、きれいやなあ・・・・・。うん、景色・・・・・・・・・なんかどうでもいいのだ。
うわお!たまらん!重いんじゃ、この荷物!
    
リュックを思いっきり放り出した。肩が一瞬にして軽くなる。必死でストレッチをしたのはいいが、痛みが取れるわけではない。ジョギング中の大学生くらいの青年がこちらを一瞥して走り去っていった。
十分くらい、道の端に座り込み、何を見るともなく景色を眺めていた。

が、いつまでもこうしてはいられない。もういかないと・・。そういえばここはどこだろう。地図を見た。

げ!思ったほど進んではいない。
私は旅においてはタブーとしている言葉の封印をといた。

「急ぐのだ。」

蹴り飛ばしたいくらいの重量を誇るリュックを背負いなおした。
あはーん。重いざます。いったいこの中には何が入ってるざますか。





すこしずつ人の数が減ってきた。が、替わりにスズメの数が増えてきた。夕方が訪れて、鳥たちが帰宅をし始めたのだ。
曲がり角が見える。その向こうから甲高い声が聴こえてくる。鳥だろうか、それとも何かの機械だろうか。
あの木の上のようだ。なにがいるんだろう。時間にせっているのも忘れて必死でさがす。
あ、あれか。
そこには民家の庭木の上で、必死で叫んでいる鳥がいた。スズメではない。でもなんという鳥かは知らない。しばらく見つめていたが、その鳥は鳴くのをやめてどこかへ飛び立った。また私は一人になった。

私の旅がなかなか前に進まないのは、順調に進んでいるときでもそうでない大変な時でも、かいまに見るどうでもいいことが気にかかってしょうがないからなのだ。



でも、だ。あちこちを観察する癖があるからこそ、素敵なものにも人にも出会うことができる。
民家のそばに小さな小屋が立っている。これはなにかな?ドアが開いてるし。

      そこにはこんな張り紙がしてあった。↓
               
どうやら地元の方が開いておられる接待所のようだ。
迷わず中に入った。さっき休憩したばかり?そんなことはどうでもいいのだ。こうした人のぬくもりに触れる機会を捨て去りたくはない。中にはいくつかのお茶の用意とみかん、お菓子が準備されていた。

さらにメモリアルノートもある。Kさんというかたが開いておられるようだ。おいしそうなみかんを一つ頂くことにする。
        

向こうの扉があいた。なかからおばさんが顔を出した。
「こんにちは、おじゃましてます。」
「あら、まあまあ、よくおこしになって。お菓子もお茶もよばれていってくださいね。」
「ありがとうございます。」
「そんなみかん一つで遠慮してたらダメよ。」
そういうとおばさんは奥へ消えた。

待ってもおばちゃんは戻ってこない。
もういこうかな・・・?リュックを背負った。
するとさっきのおばさんがまたでてきた。手に何かを持っている。
「これ、荷物になるけどもっていって頂戴。」中にはたくさんのみかんが入っていた。お菓子はあまり食べないのだが、みかんならとてもありがたい。

外にでて、あっと驚いた。いつの間にか夜が空の半分を席巻していた。
まだまだ歩かないといけないのに・・。                                                    
          

 四国八十八ヶ所お遍路セット(スターターセット)

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