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みんな、ありがとう 普段着お遍路の記 

                  2003年 冬編
 
                                  (27番 神峰寺へ至る 「真っ縦」にて)

食堂には若い女性とその母親らしき人がいた。聞けばバスや電車を乗り継いで遍路をしてるそうだ。娘さんは何も言わず、お母さんのほうがずっと話してくれた。今日は28番まで行くという。

前のお遍路が終わって以来久々のご飯の朝食だ。普段はバナナしか食べない。考えれば朝から米を食べられるのは旅のときだけである。味噌汁に漬物、ちりめん雑魚に大根おろし、そして海苔と生卵である。実は私は生卵が苦手である。あのジュルジュルがあまりよろしく感じない。
何より苦手な朝食メニューは、納豆である。関西人はあまり食べないというが、私の周りの人はみんな平気で食べている。今年、団体で出張する機会があったが関西人ばかりなのにみんなが朝から納豆をジュルジュルと書き込んでいる光景にめまいがしたことを覚えている。
                   

閑話休題(それはさておき)、宿に荷物を預かってもらった私は冬の早朝の空気を感じながら歩き出した。

  

角を左に曲がると左右には刈り取りが終わり黄土色をした田んぼがひろがっていた。
私が通りかかると数羽のスズメが残り米をついばむのをやめて飛び立った。鳥たちも正月の支度をしていたのだろうか。
突き当りには数件の民家があり、同じく正月の準備をしていた。
そういえば私の地元でもみんな新年を迎えるために動いているのだろう。

また「ひとり」という言葉が脳裏をよぎった。



山道に入った。思ったほど傾斜は急ではない。優しい緩やかな坂道が続いている。
日の光が後ろからやってくる。
                      
こうしてみると、俺は脚が短いなあ・・。まいったね。でもそれ以上に短いものがある。

当時の日記より
         27番への道は昨日の26番への山道に似ている。
         しかし、杖が短くなってるなあ。
         だから歩きにくいぞ。思い切って
         新しいのをかうか・・・?
         おいおい!それはあかんやろ。
         それにしても・・・・・・また右足のつけ根がいたい。
         一歩踏み出すだけで傷みがはしる!
         あほう!俺の脚
         ・・・・・・よおし、隠しアイテム、バッファリンをのむ。
         確か頭痛だけではなくいろんな体の部位の痛みに効くはずじゃ。
         効くはず。お願い、効いて!



山の上からついに遅い朝日が道を照らしてきた。




これまで黄土色をしていた田んぼが金色に輝きだした。
その奥には小高い山がみえ、さらにその向こうには真っ青な海が見える。
夏の遍路では灰色の海ばかり見ていた。やはり旅には海も空も青いほうがいい。
空気も透き通った青色をしている気がする。今日はずっと晴れることだろう。
    

見る見る高度が上がっていく。傾斜がきつくなってきた。ところどころ国道をはずれ山道へ入っていく。これが道が「真っ縦」といわれる由来である。

正直、足にはきつい道だ。杖を握る手に力が入る。余計に杖の短さが気になる。いくら背が低い私でもこの削れた杖は持ちにくい。他の人と比べて特に強く突く癖があるのだろうか?


車道を歩くときには横をすいすいと車が通り過ぎていく。今日は歩き遍路をほとんど見ていない。いや、昨日もそうだった。明日もあさっても、同じに決まっている。

足が体にめり込むように痛い。早く着け!

1時間の山歩きの後、到着した。よかった。もう登りはこりごりである。
           
           12月28日8時j48分 27番霊場 神峰寺到着 おめでとう!俺。
納経所はすぐ目の前にある。が、本堂がない。

ん?なんか不愉快なものがある。



         カ・イ・ダ・ン・・・・・・・・・・・・。



まさか、これを登るのか?

当然といえば当然なのだが、山の中腹に建っているお寺のため、当然寺の中も坂道と階段だらけであった。

そして本堂はこの上にあるのだ。
まだ登るのか!
               
             12月28日 8時52分 27番霊場 神峰寺階段到着

上には二組のお遍路さんがいた。

お参りの後納経所に行く。
「おたくも歩いてるの?」納経所のおばちゃんが声をかけてきた。
「はい。」
「お茶、入れてあげるから縁側で待ってて。」
納経所で尾接待を受けたのは初めてだ。お茶だけではなくお菓子もお接待していただいた。

ありがとう、 おばちゃん 、お姉さん。

本来ならもっとゆっくりしていたいところなのだが、思ったより時間を食ってしまった。山門越しに海が見える。それをくぐり、今度は真っ縦を下りだす。


くだりは楽勝だと思っていた。だが、下りの落とし穴を忘れていた。下り坂は膝に負担を与えるのだ。予想通りだった。夏の遍路の落とし子、右ひざの爆弾があっという間に爆発した。
当時の日記から

      下りは凶器だ。右ひざ、急に痛くなる。骨が外れたのではないかという
      錯覚すら起きた。マジで痛すぎ。
      今なら泣いても許される範囲じゃないか、これは。
      こんなことであと4日も歩けるのだろうか?
      それ以前にしょっちゅしょっちゅう傷みを覚えていて、
     「旅人」と俺は言えるのだろうか?歩きながらしばらく自問自答。

      そうだ・・・、この手で行こう。

                                          
           


   四国八十八ヶ所お遍路セット(スターターセット)

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