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みんな、ありがとう 普段着お遍路の記 

             2003年 冬編 第5回


羽根川橋を渡ってすぐに遍路道はさらに細くなる。
そして旧街道というよりは、もうこれは完全に住宅地に入ってしまう。

最初私は間違いかと思ったくらいだ。はっきり言って普通の見慣れたような住宅街だ。
でも、ちゃんと道標が立っているんだなあ・・。あらためて、感謝をした。
                       
小さな公園のすぐそばを通ると、道は山の中に再び吸い込まれる。
本日二回目の山登りになりそうだ。中山峠越えである。
はっきり言ってちょっと・・・・・・・・・・・・うんざりしていた。のぼりも下りも嫌いなのだ。
おそらくは山の上からは素敵な海が見えることだろう。でも、もう見飽きた。
さっきまで感動していたのに急にこんなことを書いておどろかれたかもしれない。
だが、ここが私の俗人たるゆえんなのだ。実に愚かではある。

期待に応えてくださり、道は薄暗い山の中に消えていく・・。

どおも、あ・り・が・と。

空気がぐっと冷え込み、息をするのも辛くなってきた。自分の喘ぎ声が不愉快に聞こえてくる。
あ〜、もう!この道いらん。誰か俺を元気付けておくれ!
弱音が思わず口に出た。

周囲に生い茂っていた気が不意に姿を消した。山の一番上のところについたようだ。

そして・・。


「うわ!元気出た!」またも口に出してつぶやいた。

そこには完全に刈り込みを終わった田んぼが、夕日をうけて赤く美しく光っていた。
さっき海を優しく照らしていた真冬の太陽は、ここでは役目を終えた田んぼを見捨てることなく、
温かく包み込んでいた。
思わず座り込んだ。地面から冷たい感触が伝わってくる。でも、心は温かかった。
周囲にある全てのものから命のぬくもりを感じていた。

この開放感。山川の空はまだ青さを保っているが、海側はすっかり赤く染まり、足元には個々の木々が作り出す影が長く伸びている。

当たり前といえば当たり前の、冬の日本の光景。
だが、そんな
当たり前の中にこそ、琴線をゆさぶる美しい自然の姿があるのだ。

道は下りになる。途中、墓地があった。そこには正月の支度にきている中年夫婦がいた。
「こんにちは。」お互いに挨拶をした。自然な姿だった。





ふもとに下りたとき、そこはもう室戸市ではなくなっていた。今度は奈半利町だ。
時刻はすでに五時近くなっている。冬の日没は言うまでもなく早い。さすがに太陽も海に溶け始めていた。
      

すこし焦りが生まれた。宿には暗くなる前
に着かないと心配をかけてしまう。電話で予約をしたときの声が、どうもおばあさんのようであり、余計に心配をさせたくなかった。さすがに急がねばならない
そんなときに限ってきれいな海岸線が見えたりするのだ・・。
写真?我慢できるわけがない。





車の量が多くなってきた。奈半利町の中心へ近づいてきたようだ。これまでの山道がうそのような光景が広がる。
                      
「おにいさん、お兄さん!」道の反対側の確か銀行の軒下だったと思うが、おばさんが手招きをしている。
「今日はどこに泊るの?」
「えっと27番下の宿です。」
「あそこはいい宿よ。バス停でも寝られるけどもう寒いしねえ・・。でもなんでお遍路になったの?」
ついに聞かれた・・。これまでいろんな方と会話をしてきたが、実はこの質問だけはなかった。そして、私自身これに返答することはできないのだ。自分でも答えを持っていない・・。
「ううんと・・・。わかんないんですよ、自分でも。」
「わかんなくてもいいじゃない。若いうちにやれることやってね。じゃあ、がんばって。」

わかんなくてもいいじゃない・・・・・・か・・・・・。おばさんたち、どうもありがとう。



奈半利川橋を渡った。川を照らす夕日ももはや限界のようであり、光量がなくなる寸前だった。
ふと見ると、向こうに鉄橋が見える。いい光景だ。ここから「ごめん・なはり線」が始まるのだ。
           



30分がたった。もう6時だ。知らない間に街灯のない暗い田舎道になっている。宿ではおばあさんが心配しているかもしれない。時折通る車のヘッドライトだけが頼りだ。





意識して早足で歩く。風の音がうるさい。うるさい・・・と言うか、うるさすぎる・・。
これは・・・風ではなくバイクの音だ。それも・・・ブウン!ブブンブン!とやたらとふかしている。暴走族ならいやだな・・。遍路ならある程度の金を持っていると思われるかもしれない。でも、もしかしたら単なる走り屋で、暴走族ではないかもしれない。そうだ、大丈夫だ。

ブン!ブン!ブン!





パラリラ 
          パラリラ
   
    パラリラ!






あかん!
完全に暴走族やんけ!おいおい、頼むで、ほんまに・・。
ところが、その音がどうも私をつけている気がするのだ。

だんだん音が近づいてきた・・・。


                                              

             

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