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みんな、ありがとう 普段着お遍路の記 
                2003年 冬編 第3回

船が港に着くのは6:35。なのにうれしがりの私は5:30には起きていた。

周りはしいんと静まり返っている。他のみんなは寝ている。当たり前だ。

ロビーに出てみる。無人だ・・・・。
乗客の中で一番早く起きてしまった
ようだ。


することがないなあ・・・。
あ、昨日買っておいたコンビニ弁当があった。
冷え切っていて実にまずそうだが、しかし・・・・・・
それはやはりバリマズだった。
                         
でもいいのだ。高知でおいしいものをいっぱい食べてやる。
なんといっても正月をまたいだ遍路をするのだ。それくらいは許されるだろう。

お食事の後、外へ出てみた。夏ならすでに朝日が昇り、歩き始めている時刻だ。
             
が、私の目には漆黒の闇しか見えなかった・・。



漆黒の闇・・・? 




いや、あの小さく光っているものは?




そうか・・。





四国大陸だ。






四国の灯火が見える!もう、すぐそばまで来ているのだ。


そして・・・あの暗い闇の中をわずかな灯火を頼りとして、すでに今を朝として歩き出しているお遍路さんもいることだろう。
そう思うと、体の中心が熱くなった気がする。




小さな旅人としての、


そして遍路としての火がこの時、ともった。





わずかな灯火が今、私を変えてくれた。
これからも、いろんなもの、人、景色が私に何かを与えてくれるに違いない。




寝台に帰ると、幾人かが起きていた。私も荷造りをする。
そしてまたすぐに外へ出た。先ほどまで私一人だったデッキにたくさんの人がいて、みんな向こうの港の光を見つめている。
「兄ちゃん、お遍路さん?」普段着だが杖を持った私に一人のおっちゃんが尋ねてきた。


「そうです。お遍路さんです。




うん・・。僕は・・・・・お遍路さん!




港に着いた。
どこに寝ていたのかとおもうくらいの人が降りていく。
私も暗い夜空を見上げながら数時間ぶりの地面を踏んだ。
一気に冷気が襲ってくる。南国土佐といえど、やはり12月であった。

港には迎えの人がたくさん来ていた。みんな車で出迎えている。
そして、ほとんどの乗客がその自家用車に吸い込まれていった。
数分後・・、港には私を含め数人の旅人が残った。ふっとさびしくなる。



私を待ってる人は、いない






向こう側にバスがいた。あれが室戸への足だ。
実はこのバスにいったん乗り込んだのだが、それは間違いで「安芸ヤマトゆき」が乗るべきバスであった。


      
がたがたゆれる市街地をずっと進む。時々数人の地元の方が乗ったり降りたりしたが、御免町以降にはやはり独りになった。
いつの間にか夜が明けていた。

いったん安芸で乗り換えて、またバス。待ち時間が実にもったいない。せっかく朝早くついたのに、歩きだせるのは10時前になりそうだ。これももったいない。早朝の雰囲気のなか歩きたかった。






安芸漁港



8:40のバスに乗り換える。
途中、今日泊るべき街が見えた。
ん?ここから室戸までは相当距離があるやんけ。一日でこれを歩けるものかな・・?

さすがに日が昇りきってるからだろう、たくさんの人が乗ってきた。でもお遍路さんは私一人だ。窓の外に白衣を着たお遍路さんが見えた。手を振ったが、気がついてはくれなかった。



室戸バス停着。9:55。

息を大きく吸い込んだ。

リュックの重みも、杖の違和感も何もかもが心地よい。
今から本当に私はお遍路さんになるのだ。

左の海からは潮のにおいがする。辺りの市場からは魚のにおいがする。それだけで、違う土地へきているという感慨が生まれてきた。
そして、小さな橋を渡りさらに小さな町を越えたところに25番札所が私を待っていた。



12月27日10:03 
25番霊場 津照寺 到着


これや・・・。この雰囲気・・。前回遍路終了から130日ぶりの霊場である。船の中で灯った火が、全身に染み渡る気がする。


この札所も、ここにある石段も、目の前を飛ぶ虫もみんな・・・・・


私を130日間待っていたのだ。




くだらない感傷といえばそれまでだがこの時の私は本当にそう思っていた。
本堂は100段ほどの階段を登ったところにある。そこからのながめもまた、美しかった。


あの海も、私を待っていてくれていたのだろうか?

もちろんだ、そうに決まっている。




26番への道にでる。国道55号線だ。
そう、あのでもおなじみの無限ルートが、130日ぶりにここでつながったのだ。
(普段着お遍路歩きの記 34回 参照)
あの時、雨にぬれながら、あるいは熱を持った日の光に襲われながら歩いた、寂寥たる孤独の無限回廊だ。
でも、僕はこの道が大好きだ。
この55号線も、何も変わることなく僕を待っていてくれた。
ただ、季節だけが違った。
あの時は汗をびっしょりかいた炎暑下の夏であり、今は寒風吹きすさぶ真冬である。


24番へ至る荒涼とした道とは違い、こちらの55号線は活気があり、海も灰色ではなく青かった。同じ室戸市でも随分違うものだ。
      
この海の青さよ。空の青さよ。そして雲も美しかった。太平洋は太平洋の名のとおりであった。

左手にこの素敵な光景を見つめながら私は歩いた。そして右に、もっと素敵なものを見つけた。
それは、これである。
思わず手でなでてしまった・・。
でも久々に見た遍路シールをなでたくなる気持ち、区切りうちをなさってる方なら、わかっていただけるのではないだろうか。
それだけではなく私は遍路シールに向かって心の中でおもわずつぶやいていた。
「ただいま。戻ってきましたよ。」



あまりに海が美しいため、今日はこれまでで一番たくさん写真を撮ったような気がする。
      
この笑顔。日常生活にはないさわやかさ(?)である。



「フェリーに乗ってた人やろ?」病院そばのバス停でひとりの年配のおっちゃんが話しかけてきた。
「よく分かりましたね。」
「その杖や、そんなに短いのあんまり無いからなあ。」
そうなのか。僕の杖、どうしてそんなに短いのか・・。どうしてだろう?



元川を越えた遍路道は途中から55号線をはなれ右に入る。
道はどんどん田舎に入っていく。

                    
この道の途中でさらに素敵な出会いがあった。今回も。
                                   
         

 四国八十八ヶ所お遍路セット(スターターセット)

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