みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 2003年夏編 第34回





一瞬、心臓が口から出かけた。それをあわてて押し込む間もなく
ぬお

びっくりした!!びっくりした!!」



叫び声が心臓と一緒に口から飛び出した。この湿った土のおかげで
まったく足音が聞こえなかった。誰もいないという先入観が私には
あったのだ。
だがもっと驚いたのは相手のほうだろう。おそらくは前方に自分と
同じようなお遍路さんがいるなあとしみじみ思いながら近づいて
きたに違いない。それが振り返りざまに、叫んだのである。
「あ、すいません、そんなつもりでは・・。」大変に善良そうな
おっちゃんが私に向かって頭を下げた。
「あ、いえ、こちらこそ叫んじゃって。」私はこう言った。
さびしい山道で同行者が生まれたようでうれしかったが、この足の
状態では迷惑に違いないと、追い抜いてもらった。





また、一人になった。






すでに午後3時を回っていた。昼をすぎて、雨がやむのではという
期待は薄れてきた。雨雲は磐石のようにそこに居座っていた。
よほど四国の空の居心地がいいのだろうか。何よりよろしくないのは
足元がぬかるみ、ややもすると膝の爆弾をつっつくことだ。
冗談抜きで爆発が起きそうだ。そうなったらこの旅はどうなるのだろう。
数日前のお遍路第一部よりもさらにコンディションが悪い。だが、
それに対抗する気力すら今の私にはない。目の前を風に耐えかねて
ぽっきりと折れた枝がぶら下がっていた。
その枝の向こうには、いかにものどかな風景が雨に
ぬれそぼっていた。


4時をすぎたころ、ようやく山道を脱して田んぼ道へ入った。
ほっとする。そばの用水路からは聞き飽きた濁流の音がする。
それでもあのくらい山の中から出てきたことで、救われた気がした。
ここで一発!写真撮影であろう。カメラを構えた状態でふと気づいた。
お墓がある・・。
あかん、撮られへん。
実は、今も心から拭い去れない疑問がある。遍路道にこんなに
たくさんのお墓があるのはなぜだろう?大阪を歩いていても
道沿いにお墓がある場所はほとんど見たことがない。これは
大阪が珍しくお墓はあちこちに点在しているのが日本の風景なのだろうか。
それとも遍路道にはやはり特別にお墓が多く存在してるのだろうか?
知りたい。

よってお墓のない場所を選んで撮影した。だが、これがまた難しいことであり
結局は面白くもなんともない場所での撮影になった。
ならば無理して撮らなくてもよいのであろうが、この点がぬぐえぬ
私の性でもあるのだ。


雨の勢いは嫌がらせのように強いままである。あぜ道に名前は知らないがきれいな花が咲いていた。
でも、もうどうでもよい。

早く宿だ!
 (お久しぶりです。byたこ君)







枝の上に青と緑の混ざったようなきれいな鳥が止まっている。
でも・・・・・・これもどうでもよい。早く宿だ!
早く休みたい!ぷ〜なのだ。





向こうから来た車の運転手が私の遍路姿を見て丁寧に頭を下げてくれた。こちらも下げ返そうと思ったが、車はもう行ってしまっていた。
あ〜も〜!これだって、これだってどうでもよいのだ・・・・・・。
宿じゃ!早くやすませろ〜!ぷ〜や、ぷ〜!




ふと横を見ると、立派なお寺がある。その山門にはこう書いてあった。

  四国二十二番霊場 平等寺 

あ〜も〜ど〜でも〜いいって〜いってるやろ〜!
ぷ〜してやる〜!



って・・・・・?え・・??
あ”〜!霊場にぷーしてしまった。そうか、ここが二十二番だったのか。

そうか・・・・・・。


時刻は4時半。すぐ横を見た。あれ?


今日宿泊予定の民宿がそこにあった。一刻も早く荷物を置いて休みたいと思ったが、プ〜してしまったつぐない、そしてなにより私はお遍路さんであるという自覚から、雨にぬれ足を引きずりながらも、心から感謝しつつ
私は休むより先に霊場をお参りした
のである。


なんとすばらしい遍路心であろうか・・・・・。ああ・・・・・・・。






・・・・・・・・・・・・・・っていいうのはウソで・・・・、
本当に私は宿に先に入ってしまいました。
               反省文(3枚目)  

   わたくしことピースケは十分に時間があるにもかかわらず 霊場を無視して、しかもぷ〜までしてしまい、そのまま宿にちゃっかりおさまってしまいました。
   二度とこのようなことはいたし・・・・・・・・・!
     2003年8月14日  ピースケ



さて、反省文をかいたおかげですべてを水に流した(?)私は宿にはいった。中には何度かお会いしたことのある坊主頭のお遍路さんと、かなり年配のご夫婦のお遍路さんがおられた。
この宿は奥さん一人で切り盛りしておられる。穏やかな物腰の奥さんがおずおずとこうおっしゃった。
「あの・・・・・・ちょっと広い部屋にお一人でさびしいかも知れんけど我慢してね。」
「いえ、いいんですよ、そういうの慣れてるし(?)」
私も訳のわからない返答をして部屋に入った。




ぬお!


マジで広い!数えてみたら24畳である。





しかもよく見ると舞台まである
ここは宴会場のようだ。





(↑マウスを当ててみましょう)

ううむ・・・・・。これは・・・すごい。こんなところで寝るのははじめてだ。
しかもテレビがないぞ。でもこれはこれで実に面白い。はじめての体験である。荷物を置いて、私は部屋の真ん中に座ってみた。
シーンとしている。この「シーン」は比喩ではない。本当に「シーン」という音が聞こえてくるのだ。



さてと・・・・・・。こうはしてられない。いかねば。私は再び立ち上がった。

早く行かねばしまってしまう。
あそこは5時で閉まるのだ。




そう、行った先はもちろん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
郵便局である。


霊場?               ご
                      め
                          ん
                              な
                                  さ
                                       い。

                                  
         
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