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            みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記

                                2003年夏編 第24回




                  時間はギリギリである。札所は後二つ、徳島駅でバスのチケットを

                  出発30分前までに買わねばならない。

                  旅でスケジュールに追われることほど、テンションの下がることもない。

                  が、もうどうしようもない。



                  わき目もふらず、立ち止まらず

             ここからはまっすぐ進むのだ。





                  私はそう決意して、決然と歩き始めた・・・・・・。















                 カシャ! (12時45分) 





    ぱちり★ (12時47分)








                   ガシャ♪(12時56分)   






                       
                 はい、チーズ!
  (12時57分) 



















                 あほか〜!俺!


                 あー、もう俺は何やってるねん!ほとんど数分おきに立ち止まって

                 三脚をカメラにセットして、必死に撮影してしまった。

                 だが、この透き通る青空と緑の稲の美しさをどうして素通りできよう。

                 すぐ横を国道がとおっていた。それと並行して農道があった。


                 Kさんが、「間にあうんか〜!?」と笑いながら三脚に向かっている

                 私を追い抜いていった。本当に間に合うんだろうか?

                 さすがにあほな私でもあせってきた。もう、写真はやめよう。

                 農道を外れ、国道に入りながら、そう決心した。













                         おや?











                     

                                ガッシャ〜ン!(13時)
                                  
                                

                                 やばい、また立ち止まってしまった。







         

                    はい。バター♪    


                     もう、めちゃくちゃである。上の写真などは、車道に三脚を

                     わざわざ立てて撮影した。車の切れ目がなくて困っていたが

                     ほんの数秒、国道が私一人になった。その一瞬の写真である。


                     などと解説してる場合ではない。本当に時間がないのだ。


                     進もう。あと200メートルだ。小さな住宅用の道に入る。

                     向こうのほうに見いている大きな建物がそうだろう。

                     民家と肩を寄せ合うようにして、道の左手に16番札所が

                     あった。


                                           

                                           16番霊場 観音寺 (8月10日13時12分。リミットまで138分)


                    ゆっくり休みたい。暑さにやられている。だが、やっぱり時間がそれを

                    許してくれない。山門脇の手洗い場で手と顔を洗い、一抹の涼をとった。

                    幸い団体様はここにはおられず、日曜日らしく家族連れの巡拝者の

                    姿が多く見られた。

                    次の17番札所までは約1時間。それでは実はバスには間に合わない。

                    私の計算では45分で到着しないといけない。こんな時間に追われる

                    遍路は遍路にあらずと、自分でも思う。でも、しょうがないのだ。

                    お寺の中をゆっくりする間もなく、私は小走りに進んだ。

                    こんなときに限って、遍路シールが見当たらない。代わりに「四国の道」の

                    石碑がそこかしこにあり、私を導いてくれていた。






                   頭上の太陽はまさに直角から私を照りつける。目に汗が入る。

                   それにリュックが重い。

                   いったい何が入ってるねん。これ。


                   完全な都会になった。目の前をパトカーがサイレンを鳴らして通り過ぎた。

                   商店街なのにアーケードがない。日曜の昼間なのに、通る人は少な

                   かった。この暑さをさけて室内にいるのだろう。


                   曲がり角を左折、再び住宅路となる。そこに一軒の本屋があった。

                   なにを血迷ったか、私はその中に入ってしまった。



                    涼しい・・・・・・


                   堕落とは思ったが、日射病になってもおもしろくない。だが、涼みに

                   店に入るのもいいことではない。とりあえず、バスの中で読む雑誌を

                   一冊かって外にでた・・・。


                   あ、重い・・・・・・・・・・。わざわざ荷物を増やしてどうするねん。まったく。




                   線路を越えた。地図によるとこのそばなのだが、見当たらない。

                   このつきそうでつかないという感覚が嫌だ。なぜか、遠い・・・・・・。

                                   
                                             (やはり単線 リミットまであと105分

                    それにしてもこの街では通行人がいない。本当にいない。

                    たった一人で歩いているという感じはこの遍路全体を通じて

                    私に付きまとうことになる。もっと後の行程になってやってくる孤独は

                    それでも桁違いであったが。




                  線路を越えて10分ほど走るとさらに小さな道に導かれる。

                  道標が目にはいった。やっぱりおろかにも写真を撮ってしまう。


                                    
                                    (趣ある石碑  リミットまであと96分)

                 ずいぶん古い石だ。いつの時代のものだろう。この矢印は

                 私に左にいけといっている。その指の向きにしたがう。




                 すこし向こうの住宅の奥に、遍路前半戦のゴール札所が

                 ついに見えた。


                   
                              (向こうに見えるのが札所  リミットまであと90分)


                   感慨にふける間もなくかけよっていく。暑い、足が痛い。

                   のどが渇いた。でも走った。



                   そして、ようやくゴール!本来なら1時間の道のりを

                   45分ほどで走ってきた。


                                    
                                      (17番霊場 井戸寺 14時3分 リミットまであと87分)


                     さすがに立って写真は撮れなかった。ゲロがすぐのどまで

                     来ているのを、むりに追い返した。



                     これほどまでにあせっているとはいえ、やはりここで区切り

                     と思うと、感謝と寂しさで胸がいっぱいになってきた。一番

                     札所の時よりも、もっと深く頭を下げて門をくぐった。


                                   



                    思いを込めて納め札を入れ、納経所に入ろうとしてとき、

                    バスの運転手らしき人に呼び止められた。

                    「兄ちゃん、学生か?」

                    「いえ、働いてます。」

                    「そうか。若いのにえらいなあ。」

                    えらいというのは、若いのに働いてるのがえらいという意味

                    だろうか。それとも遍路をしているのがえらいという意味だろうか。

                    ふとそんな疑問がよぎった。

                    しかし、バスの運転手さんもたいへんだ。団体がお参りしている間

                    ああして、ずっと待っていなければならないのだから。

                    そう、団体さんが・・・・・・・。






                    団体が来ている!!






                    私が納経所に入ったその直後に大量の納経帳を紫の風呂敷に

                    つつんだ若い添乗員が入ってきた。




                    でも、順番は私が先だった。マジでこれはセーフだ。団体様に

                    先を越されれば確実に帰れなくなる。杖を横の杖たてにいれた。


                    納経をしながら、徳島までのルートを訪ねた。

                    「後ろにバスの時刻表が張ってるわよ。バス停はすぐそこ。」

                    よかった、バス停が目の前にあったのだ。ええっと、次のバスは

                    15時16分・・・・・。げ!あと1時間は来ないのか?これでは

                    チケット購入のリミットに間に合わない。

                    「あの、それでは間に合わないのですが、他には・・。」

                    「タクシーがあるわよ・・。」

                    タクシーには乗りたくない。私の表情をみて受付の女性は

                    こう付け加えた。

                    「電車の時刻表はその横。」

                    なんや、電車があるんや。どれどれ・・・?14時48分・・・。

                    さっきの線路から20分ほとでこの寺に着いた。なんとか

                    間に合うだろう。一切の寄り道は許されないが。というより

                    この電車に乗れなければ大阪行きのバスはキャンセル扱いに

                    なってしまう。


                    私は納経所を飛び出した。ダメだと思っていても最後の一枚を

                    とりたかった。井戸寺の本堂を。



                    あ!!


                    おい!おまえ!じゃまや!

                    なんでこんなところにおるねん。

                    なんちゅうことするねん。ここはなあ、みんながお参りして

                    記念に本堂をバックに写真撮ったりするところやで。それやのに

                   ・・・・・・・ホンマにかなわんなあ・・。


                    しゃあないなあ。今回はワシ急いでるさかい堪忍したるけど、

                    二度とすんなよ。とりあえず、一枚だけでもとろか。

                    せやけど画面に入るがな、お前が。まあ、ええ。行くわ。






                                   
                                   (本堂とむかつくやつ  14時12分 リミットまであと78分)



                    もう体力も限界だった。だが、のんびり行くことは許されない。

                    5分ほど走った。



                    向こうからKさんがゆっくりやってきた。やはりゆっくり歩くと

                    こういう時間になるのだ。

                    どうもありがとう、Kさん。あなたと出会えて楽しかったです。

                    私は感謝の意を込めて両手を軽やかに振った。






                    両手を軽やかに振った??








                      両手?















                  なんで、両手使えるねん!
                                      こんなときに、やってもうた!

          どうしよう!?
      

                                                       (リミットまであと73分)

   
                                                                   

                                   






















          

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