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                    みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 
 
                                2003年夏編 第22回




                             終幕に向かう時間の流れは速い。

                             どこまでも続く遍路道、道に落ちる枯葉、

                             行き交う人々、そして思い出深い遍路シール。


                             この慈しみ深き光景との別れはもうすぐやってくる。

                             いつか私が何かに負けそうなとき、心の支えとす

                             るために、目に映るすべのものを、心にしっかりと

                             刻み込みたかった。

                             でも、それがなかなかできない。実にバカバカしい

                             努力ではあるのだが、それでも、もうこうなったら、

                             今見ているものをすべて覚えてしまいたくてしょうが

                             なかった。だが、どうしてもできない。当たり前だと

                             言ってしまえばそれまでだが、旅に出たときは、そんな

                             気になることだってあるのだ。






                             知らぬ間に雲が追っ払われた空は、宇宙まで見えそうな

                             透き通り方をしていた。


                             汗が滲み出してきたため、Tシャツ一枚になった。

                             また歩き出す。



                             道は微妙なアップダウンを繰り返し始めた。のぼりはもと

                             もと苦手だし、くだりは膝にくるのでやはり今は嫌いだ。

                             うしろから鈴の音が聞こえる。振り返ると宿で一緒だった

                             黄色いカッパの新潟のKさんだ。今日は黄色いカッパでは

                             なく白い遍路服のKさんである。

                             私のほうが早く宿を出たのだが、健脚なようで二時間ほど

                             で追いついてこられた。私は写真をとったりして遅くなるの

                             で抜いてもらった。別れ際にアミノサプリの粉末をもらった。

                             やはり皆さん粉末飲料を持ちながら歩いておられるのだ。




                             道が二つに分かれた。左折して21号線を行くルートと

                             右に曲がって207号線を行くルートだ。どっちでもいける

                             ようだが、札所を示す看板は21号線のほうにあったので

                             そちらを行くことにした。みるとKさんが207号線を行く姿が

                             あった。大丈夫だろうか?


                             山によって影ができたゆるやかな上り坂の後、道は川沿いを

                             カーブを描いている。角度が変わったため影がない。

                             暑い。


                             川の向こうにも道があった。いくつかの家並みが立ち並んで

                             いた。その傍らに四国に来て初めて見る巨大な工場があった。


                             同じ風景に飽きてきたころ、広野の町にさしかかった。

                             右側に民家が増えてきた。




                             左には田園風景が広がる。風がないため稲穂は気をつけ
  
                             をしたまま立ちつくしていた。そんなもうすぐ米になる稲穂

                             たちは私の目にみずみずしく、新鮮に映った。こんな田ん

                             ぼなど私の地元にも死ぬほどある。それが、遍路道から

                             みると、なぜか尊く美しく、そして命を感じさせる重さを見

                             せるのだ。この一本の稲にも育てている人の思いが入っ

                             ているのだ。私のうまれて初めて感じる、稲作への感謝だっ

                             た。




                             そんな感慨とともに、私はあることにぴったりの光景を探し

                             つづけた。



                             なかなかない。そのほとんどがガードレールに邪魔されて

                             いる。あったと思っても道に犬のウンコがおちてたりして、

                             舞台としてはふさわしくない。



                             こうして迷っているうちに、徳島市内に入った。数日前に

                             脱出した市へ再び突入。


                  





                             数十分が経過したころやっとピッタリの場所があった。ガー

                             ドレールはない。道にもウンコがない。そして何より、人が

                             通っていない。すかさず三脚を立てセッティングする。こうして

                             とられた写真がこれであった。










                                    


                           どうだろうか?予想通りだっただろうか?12番札所越えの

                           あとに一度やっているので、当てた方も多かったかもしれ

                           ない。犬のウンコにこだわったのもお分かりいただけたと思う。


                           なぜだか知らないがどうしてもこの写真が撮りたかったのだ。

                           田んぼの前の道路でねっころがる写真。ずっとこの

                           シチュエーションを目指していたのだ。

                           こんなことをしているから、私は進むのが遅いのである。




                           小さな目的を達成した私は再び歩き出した。にしても今日の

                           大きな目的である13番はまだだろうか?昨日の山越えの後

                           だけに根性は多少ついたつもりでいたが、20キロを起きぬけ

                           に歩くのはやはり辛いのだ。


                           あ、また素敵なものを見つけた。今度は注釈はなし。私の

                           価値観はこうであるということだけ申し上げておく。



                           


                          日本各地の郵便局でお金を入れたり出したりすることを

                          目的として旅をしている人がいる。上の写真をとった後

                          郵便局がみえてきた。そうだ、俺も一発やってみよう。

                          通帳に知らない街の局名が入るのは素敵ではないか。



                          そう思って近づいたが、小さな郵便局は日曜日には

                          キャッシュサービスすらお休みになっておられた。



                          角を曲がるといきなり13番札所、大日寺が現れた。

                          これもまた、ひどい!四国に来て一番あせった。


                                                                                                              


               
















                                                  

                         

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