みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記
2005年春編 第3回
5月の風はやさしい。緑濃き道を下る。
3日しかない旅だからこそ、今感じているものを全細胞に刻みたかった。
今踏みしめている土、頭の上にある木々、包み込む空気、遥か向こうにある海は、今だけのものであり、永遠に忘れえぬものだ。
この犬のことも忘れたくない。
この時の想いが声に出た。
「俺、いま充実してる。」
平地に出た。命が誇り高く、そして静かに存在していた。
稲穂の向こうにはきれいな家並みが見えた。
昼をすぎて気温が上がってきた。
人通りが増えてくる。59番は大きな寺のようだ。
「お兄さん、アイスクリンお接待します。」横のタオル屋さんから声がかかった。
「あ、はい、いただきます!」
お接待は断ってはならない、3年目でようやく自然に出てきた受容の言葉であった。
傍らのサイン帳に一筆ほしいといわれた。
この旅を通じて学んだことをかいた。
するとだ、この言葉をタオルに刺繍してくださるというのだ。
そんなことできるのか。
こうやってパソコン上で入力して・・・
それをうれしがってボタンを押す。
すると・・・
おお・・・・・・・
機械が勝手に・・・・
俺の書いた文言を刺繍していく!
すごい!
このタオルをお接待としていただいた。どうもありがとうございます。
このお接待をご存知の方も多いのではないだろうか。
そして
四国霊場59番札所国分寺 5月3日13:15到着
ここでおばちゃんの下さった弁当を頂く。
心の温かさが伝ってくるご飯だった。
今日はこれで札所は終わりである。
しかしだ。この時、あることに気付き始めていた。
遍路の素晴らしさは札所やゴールにあるのではない。その途上にあるのだと。
だから、俺の今おかれている状況は素晴らしいのだ。
そのことを教えてくれたのが、今は連絡すら取れないおばちゃんのお弁当だった。
緑も人の息吹も情緒も全てが濃い道を歩きながら考えた。
俺はこの旅を始めてもう3年になる。
ずっといろんなことに悩み、心震わせ、そして淋しがっていた。
今晩はどこに泊ればいいのだろうか、この坂はいつまで続くのだろうか。
雨はいつやむのか、台風はいつ去るのか・・・。
俺はどうしてこんなに孤独なのだろうか?
だが過ぎ去ってみれば全てが私の旅を彩る記憶であり経験だ。
旅空の下にある限り、「楽しきかな、人生」なのだ。
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