掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール 


            みんな、ありがとう 普段着お遍路歩きの記 2003年夏編 第16回






                            終わりのない仕事はないというが、その真っ只中にあるとき

                            どうしてもそうは思えないことも多い。

                            どこまで行ってもゴールがない。

                            道も景色もまったく変化がないのに、


                            私の体だけがどんどん変化していく。


                            燃えるように体は熱く、反面胃の辺りが異常に冷たい。体調の悪い証拠だ。



                            再び水を飲む。あと200cc。




                            目の前に急な階段が現れた。そうか・・・これか・・・・・。










                            ついたぞ!12番札所だ・・。






                            やったあ、やった・・・、












                            あれ?






                            んな訳ないよな。はいはい、最初からわかってましたよ。こんなに

                            はやくつくわけないしね。ということで、ここが一本杉庵ですのだ。




                                 




                            しかし、でかいなあ・・。弘法さんの像もでかいし、杉も大きい。

                            こんな山の中にどうやって建てたんだろう?


                            こんなに立派な像がある建物なのに無人であった。もうかれこれ

                            3時間以上誰にも会っていない。弘法さんの像の前でカッパの

                            ズボンも脱ぎ、汗でじゅるじゅるのズボンもはきかえる。

                            はあ・・・・・さらさらの肌触りは気持ちいい・・。



                            ふと横を見ると看板があった。あと3.8キロ?全然進んでない気が

                            するぞ。まあ、どうでもいい・・・・・。ぷ〜だ。






                            少しだけ平坦な道が続く。

                            上からどこかで聞いたギューンギューンと言う音が聞こえてくる。

                            はるか上空に高圧線が走っていた。地上では風は感じないが

                            あそこにはまだ台風の残り風が吹いてるのだろう。





                            しばらく下りが続いた後、家並みが見え出した。こんな山奥に

                            集落があるのに驚いたが、そのすぐそばを車道が通っていた。

                            そうか、みんなここを通るのか。私にとってはどうでもいいが・・。

                               




                            みかん畑の横で飼い犬に吠えられる。うるさいなあ。

                            でも、どうでもいいや・・・。ぷ〜だ。




                            久しぶりに大空を振り仰ぐ。抜けるような青空だ。これが台風一過か。

                            でも、つかれた、これもどうでもいい・・・・。ぷり〜だ。


                            いや、どうでもいいことないぞ。太陽が見えるではないか。

                            四国へ来て数えるほどしか太陽を見ていない。滅びたはずの

                            日の光がやさしく私に降り注いでいる。湿りきっていた体と心が

                            少しだけぬくもった気がした。


                        



                            この写真を撮っているときにチャイムの音がした。近くに学校でも

                            あるのかと思ったら、町の中にチャイムが鳴るようになっているよう

                            だった。したがってこの時点で午後12時。

                            世間の皆様にはお昼ご飯のお時間である。

                            私にとっては再び歩き始めるお時間である。



                             道はしばらく行くと驚くほどの急坂になる。



                             なに?この実に不気味な札は。




                                       

ここからが一番辛い、がんばろう





                             マジ?今までのよりも辛いのってありか??


                             

                             それは脅しでもなんでもなかった。むしろ親切であった。





                             目の前にこれから進むべき道が見えた。が、それは道という

                             よりもほとんど垂直に切り立った崖であった。


                             これ、本当に、道?崖やろ?







                              垂直とは言い過ぎかもしれないが疲れた体にはそれに匹敵する

                              角度である。

                              両手両足を使って登らねばならない。しかもだ。わすれちゃいけない

                              今日は台風明けだ。岩の上から、間から隙間という隙間から

                              じゃんじゃん水が流れ出している。うっかりすると転落する危険

                              がもちろんあった。岩をつかんだ腕が小刻みに震えている。

                              不思議なことに爆弾を抱えた右ひざは痛みがなかった。

                              ここで当日の日記を紹介しよう。実に弱気なことがわかる。

本当にすごい。今、俺は垂直の岩を登っている。しかも今日は雨上がり。かなり苦労する。それを越えると足が 限界に来ていた。一歩進んでハーと大きなため息。マジで凹んできた。もう絶対歩きは嫌だ。次は車で来たい!





                            この時の気持ちは今でもはっきり思い出される。「がんばろう」

                            とか言った言葉では覆せない疲労感や絶望感はあるのだと

                            このとき実感していた。

                            しかし、俺は車を持っていないのになんで車で来るなんて

                            決心してるのだろう?



                            垂直の崖を登り終わっても、体力を回復する猶予なく、さらに

                            登りになる。一歩ごとに休憩をしているので、ほんの十メートル

                            進むのに何分もかかる。水が底をつきかけている。あと2センチほど。

                            この2センチの水は、手をつけずに持っておいたほうがよさそうだ。


                            三度、車道に出た。もちろんそこを通ることは許されない。少しは

                            遍路道も平坦になるのだろうか?馬鹿馬鹿しい・・。絶対にこの先も

                            急なのぼりに決まっている。


                            ほら、あたり・・・。のぼってるし・・・・。どこまでいじめるのだろう?

                            この道は。






                            もはや、私の体は機械のように動いていた。痛いとかつらいとか

                            そんな人間的な感覚が入る余裕は消えていた。心もなくなっていた。

                            ただ、無意識な状態で足を交互に動かしていた。






                            突如、心が戻ってきた。道が平坦になり、砂利道が広がっていた。

                            砂利道、それは建物の存在を意味する。おそらく・・・・・そう・・・・

                            時間的に見てもここが12番札所焼山寺である。

                            よかった!すばらしい!

                    
「おめでとう、俺!かんぱ〜い!」そういいながら、

                            のこりわずかなペットボトルの水を飲み干した。もうここまで来たら

                            大丈夫だ。お寺で補給すればよい。ぬるくてまずいが、なぜか私には

                            甘美な水に感じた。



                                          ふと



                                    道端の看板を見た。



                                                   ほらね、



                                          ちゃんと





                                                 「焼山寺」の



                                                 文字がかいて

                                              あるでしょ?










                                    ほら、「焼山寺 あと1キロ」と・・・・・・。








                                    ゲ!?






















                                           



                            ここはゴールではなかった。まだあるんか?われ!

                            何度目の挫折かわからないが、私はまた座り込んだ。



          


                           そういえば、近くに建物の影も形もない。


                           もう一つおまけに、そういえば・・・・。



                           水、飲み干しちゃった!俺!




                                                                  


                                                   

   掲示板  日記帳  リンク 更新記録  メール 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送