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最初はめちゃかっこよく旅立ったのに、

次から次へとむちゃくちゃなことが起きて

結局これはいったいなんだったんだろうという変な旅の話


                                   



携帯・・・・・・・圏外
人通り・・・・・皆無
車・・・・・・・・水の中





このすごいシチュエーション。

でもまあ何とかなるだろうと思う楽観的な考えも我々の中にはいまだあった。

とにかくこの車をなんとかしなくちゃ。


A氏がさらにアクセルを踏む。
我々が反動をつけて後ろから思いっきり押しまくる。


ブスブスブスブス!!


ついにタイヤから煙が出てきた。





さすがに



ヤバイ気がする。



しかも・・・・・・・・・・


水かさが増している。
もし上流のダムの放水があれば一巻の終わりである。



そして日が暮れてきた。


-----------------第6幕  車だ!-----------------


助かる方法はただ一つ、ふもとに行ってJ〇Fとかを呼ぶことだろう。


しかしここは圏外であり、圏内となるふもとまではゆうに20キロはあり、
歩いていくとなると5時間はかかる計算であり、それは論外である。
まさに俺たちは救出の欄外にいるのだ。


「あ!あの角のところにそういえば車が停まってなかったか?」
車を必死で押していたために忘れていたが、確かに来る途中に一台の停車車両を見た気がする。
「行ってみよう!」




必死で走った。



果たしてそこに車はあった。




「うわ〜、たすかった。もしハイキングとかで来てる人の車ならそろそろ帰ってくるころやろう。」
「そしたらふもとに着いたときに電話をかけてもらえるな。」
「バンザーイ!バンザーイ!」
俺たちは思わず万歳三唱をした。



数秒後・・・・・。



「いや、あかん・・・。」
「なんで?」
「ほら。」A氏は不気味な事実に気づいていた。
彼の指差した先には、パンクしてぺしゃんこになったタイヤ・・・・・・。
よく見ると車にはさびがついており、車内も汚れていた。


これは・・・・・・・放置車両。



俺たちは、深い山の中で捨てられた車を囲んで、万歳三唱をしていたのである。



-----------------第7幕  押す!-----------------


「もう一回チャレンジしよう!」
「そうや、とにかく押すしかない。」

再び車に戻る。


エンジンをかける。
ぶにゅぶにゅぶにゅ!タイヤがから回りする。
知るか!押すぞ!

ブスブスブス!今度はタイヤから煙が上がる。
知るか!押しちゃえ!





音がした。



そして俺たちの足元にはバンパーが落ちていた。
ついに車が分解し始めた。

俺たちの魂も分解し始めていた。

-----------------第8幕  工夫だ!---------------



「落ち着こう。」誰かが言った。
「ネックはこの泥の中にタイヤが沈むことやろ。」
「そうや、タイヤの下に何かを敷こう。」


俺たちは辺りを散策し始めた。

川原にいくつもの石が落ちている。
それを拾ってタイヤの下に埋め込み始めた。これで何とかなるかもしれない。

1時間以上、拾っては埋め、拾っては埋め・・・。
男三人、山奥で石拾いをしている。


「これなら絶対に大丈夫や!」車の周囲は石を敷き詰められた遊歩道のようになっていた。
「本間や!俺たち天才やな。最初からこうすればよかった。」
「では、ドライバー様。どうぞ車を発進させてくださいませ。」
「うむ、ご苦労であった。」
A氏がエンジンをかけ、車を走らせた。



一瞬で、敷かれた石ははじけとんだ。
「うわお!」



1時間かけて並べた石は1秒で消し飛び、
車は10センチほど進んだ気がしないでもないこともない。

1時間で10センチ。
地上までは3メートル。ということは何時間かければ車は出られるというのだろう。



俺たちは本当に終わりだ。





                                                   まだ続く
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