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失われた学校、村、道、鉄道を訪れた日の記録

                        寒風吹きすさぶ山間の廃村を訪れた日 7


もはやなすすべはなかった。誰も助けてはくれない。
だが自分の面倒を見られる強さも残っていなかった。

ふと、前を見た。

車のヘッドライトが近づいてくる。
おお、良かった。
その車はまたうれしいことに、軽トラだったのだ。

「そんなところでなにをやってるの?え、道に迷った?大丈夫。おじさんがふもとの村まで連れて
行ってあげるよ。そのバイクは後ろの荷台に載せなさい。さ、君は助手席に乗って。」
なんと、雪が降ってきた。まさに危機一髪だ。
車の中はエアコンがきいていて暖かかった。十分後、車はガソリンスタンドについた。これでもう大
丈夫だ。私はトラックの運転手に何度も礼を言って、家路についた・・。もう、大丈夫だ。
















って、なるだろ?ふつ〜は!





ここまで苦しんだら・・。




もう、そろそろ誰か通ってもええやんけ!










今のは完全に私の妄想だった。相変わらず、一人で暗い山道で震えていた・・。
散々引っ張った割りに、すぐに、たすかってつまらないと思った方、おめでとうござい
ますなのだ。上の文で事実は雪が降ってきたことだけなのだ。





ということでこれより真の第七章が始まる。






さっきから降りだした雪はそれほど強くはなかった。だが、その分、空気が冷たい。
考えぬようにはしていたが、太陽はもう山の向こうに隠れてしまった。
こうしていてはどうしようもない。何をなすべきか考えた(一番最初の章、参照)。



ひとつ  バイクを押してともかくふもとまで降りる。
      ただし、動かないバイクほど手に負えない
      ものはない。それ以前に、「人里」はどこなの
      だ??


 ふたつ  バイクをここにおいて下まで降りる。ただし、
      またガソリンを持ってここまで戻ってこなく
      てはならない。そんなの・・・ぞっとする!


 みっつ  今まで喜んで見学していた廃屋に泊り朝が
      来るまで耐える。できるだろうか??



どれもいやである。


今すぐ救いが来てほしい・・。



私は覚悟を決めた。荷物の中からタオルを出し、地面に敷いた。
そして、リュックの中身をすべてだしメットインに入れる。タオルの上に
腰を下ろしリュックに足をいれた。本で読んだ防寒の方法だ。足から
体温は奪われる。

うろうろすれば状況はますます悪くなる。この気温だ。もう猶予はない。
できるだけ体力を消耗しないようにして、車を、または朝を待つのだ。

できれば朝の方はあまり待ちなくないが・・。
ただし、このまま寝るのは危険な気がした。よくドラマで遭難した人が
「眠ると死ぬぞ!」
と言ってるシーンを見る。あれは大げさなものだとも思っていたが、今なら
わかる。本当にこの寒さで寝てしまったら死んでしまう気がする。


遭難・・・。



ぞっとする二文字だ。だが、本当にそんな状況なのだ。


まだ、眠くはない。それより腹が減った。




目の前の空間を見つめる。明かりがほとんどない。暗い暗い森とその向こうに
あるであろう、黒い山。そして、どっちにいってもきりのない、道。
かすかに枯葉が動いている。
俺はなんでこんなところにいるんだろう。廃村探しなんかするんじゃなかった。
本当なら今頃は家でテレビでも見ているのに・・。いろんな悔恨が頭をよぎる。

そのうちに、自分の過去が浮かんできた。なぜか、小さなころベランダで死んで
しまったインコを思い出していた。あれは、真冬に部屋に入れるのを忘れてい
たのだ。かわいそうなことをした。大人になってからうちに来た鳥だったため、
まったくなつかなかった。そのときはかわいいとは思わなかったし世話もしなかっ
たのだが、いま思えばやはりかわいかった。あの鳥、何色だったろう??青だった
気もするし緑だった気もする。どうして思い出せないのか?どうしても、わからない。
おれは一体どうすればいいのか・・・?どうすれば思い出せるのか??

よく見ると目の前にいっぱい鳥が飛んでいるではないか。あれを捕まえてインコの
代わりにしよう。でも、なんでこんなに鳥がいるんだろう・・?ものすごい、羽の音だ。
ブンブン言いながら飛んでいる。



不意に目が覚めた。危ない。考え疲れて寝ていたのだ。寒い夜に鳥が飛ぶわけが
ない。でも、ブンブン言う音が続いている。これは羽音ではない。



では・・?



車のエンジン音である。夢ではない。耳を澄ます。間違いない。近づいてきている!
明かりが見えた。ヘッドライトだ。怪しまれないようにしつつも、確実に見えるように
手を振った。ただし、急に立ち上がる元気はなかった。

普通のセダンが近づいてきて停まった。
「どないしたん?道に迷ったんか?」人のよさそうなおっちゃんだった。スーツを着ていた。
もしかしたら先ほどの小さな集落の人かもしれない。帰宅中なのだろう。

「はい、ガソリンスタンドのあるところまで行きたいんですけど、この辺にないですか?」
「すぐそこやで。」
「近くですか?」

「今、私が来た道を五分も走ればでかい道に出るよ。」
「あの、よければ案内してもらえませんか?」
「かまへん、ついといで。せやけど、君、なんでリュックに足突っ込んで座ってるんや?」
「・・・・・・あ、これはリュックがぬれてたので乾かしてたんです。」(!)




本当にすぐだった。のぼりだと思っていた道はすぐに下り始め、やがて大きな道路に出た。
驚いたことにガソリンスタンドどころか、三階建てての学校に、これは何階建てかは忘れたが
マンションまでが建っている場所だった。

「兄ちゃん、ほな。きいつけな。」そういって人のいいおっちゃんはまた山の中に消えていった。
あわてて頭を下げたがもう車は見えなくなっていた。




みなさん、ここで私の廃村探しの旅の記録は終わりです。このときはまだ八時過ぎだったのです。
山の中では真っ暗でしたが、町に出るとうそのように人が活動する時間でした。
本当はこのあと、ガソリンを入れてまた廃校探しの旅に出ているのですが、そして、実はもうひとつ
廃校を見つけているのですが、この話も長くなりました。このあたりで、次の旅をかきたいと思います。

ただ、これだけは書かないといけません。私が遭難したと覚悟を決めた場所は、あとで地図を
見たら県道から一キロも離れていない場所だったということ。




つまり、私は人里の間近でリュックに足を突っ込み、寝たら死ぬなどと
思いながら遭難したと思い込んでいた
のです。








おいおい・・・。かっこわり〜。









廃村の写真は友達に見せましたが、このプチ遭難の話だけはどうしてもできなかった。
ネタにされるのは明白だからです。



写真を見るたびに気がかりになることがあります。
あの廃屋はどうなったのか?
あの、時間割はまだあそこにあるのか?
そしてなにより、あのオルガンはどんな音色だったのか。



もう、行くことはないだろう。
だからこそ、気になってしょうがない。

あのオルガンの伴奏に合わせてうたっていた子供たちの遠い日の歌声を
聞きたい。

           廃村を訪れた日 目次



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