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失われた学校、村、道、鉄道を訪れた日の記録



                         寒風吹きすさぶ山間の廃村を訪れた日 5


ガソリンメータのメモリは赤いゾーンに達している。すぐに止まりはしないだろうが、

相当やばい状況だ。あまりにハイテンションのため、ガソリンのことなど忘れていた。

いや、むしろ毎日なんの不自由もない環境に生きていることの弊害だろう。ガソリン

などなくなればすぐにスタンドに寄ればいいのだから。それが、この廃村では・・。

手袋の中の手がじっとりと汗ばんできた。やばいぞ、これは、本当に。l




前方の竹やぶの中になにかがちらりと見えた。どうも廃屋のようなのだ。どうしよう?

ガソリンは気になるが、今、その廃屋を見逃すともう二度とは来られまい。夕日が

真っ赤になり、逆に周囲の森は灰色になってきている。その森のかたわらに住居

表示があった。そしてその表示のすぐ上に廃屋がある。










やはりここは第二の廃村なのだ。






                 

多少見にくいが木々の間に家屋があるのがわかるだろうか?

放浪者の性が顔を出した。危機が迫っていても目の前の魅力あるものを追い求め

私はブレーキをかけた。森林は冬なお濃く、なかなか前へ進めない。廃屋は見え

てるのに近づいてこない。山の中腹に立っているその家につくまでに私は何度も

足を滑らし転倒しそうになった。それでも私は廃屋にたどり着いた。




この写真は道に面した側だが、山の上のほうを向いた壁がなくなっていた。さっきの

廃村とはずいぶん状況が違う。内部が完全に露呈されていた。廃屋といえども誰か

の所有物である。勝手に入ってはいけないのは当然なのだが、ここまで来ると外と

中の区別もつかない。私は建物内部に足を踏み入れた。もちろんかつて壁だった

ところから。


なんという美しさだろう。夕刻の光を背景に私を出迎えてくれた光景がこれである。




これに美しさを感ずるのは主観が強すぎるかもしれない。だが、このガラス窓を

背景に電灯のシルエットと横の壁を照らす淡い光に、なんともいえぬ感慨を

そのときは感じたのである。この電灯から垂れ下がる一本のひも、これさえも

美しく感じた。

床はほとんど底が抜けていたがこの部屋だけはなんとか無事であった。

私は横の壁に目をやった。カレンダーが垂れ下がっている。そうか、家族は

この年に引越しをしたのか。途方もない長い年月を「家」ではなく「廃屋」として

すごしたわけである。



廃屋と空き家の区切りがどこにあるのかなど私は知らないが、1968年までは

「家」であった。それが「空家」となり、壁が、床が徐々に壊れていった。そして

いつしか「廃屋」となったのである。だが、土でできた壁は壊れているのに

このカレンダーや日本地図、さらにはその下の書道(わかるだろうか?)

は無傷なのである。不思議な気がした。


私はふと壁の横に目をやった。




ふすまがある。この向こうはどうなっているのだろう??人間とはおろかである。趣に浸る私は

ガソリンのことなどもうすっかり忘れていた。それ以前に、人の家に勝手に入っていることすら

意識していなかった。迷わず私はとなりの部屋を訪れた。

「おお、これは・・・」


もう、下手なコメントはできない。ただ、人の息吹を強く感じた。三十年以上もよくぞここに残っていたものである。

小学校の時間割とプリントだ。丁寧に壁に張ったためだろう。はがれることなく、幾年月もこの場所に存在

していたのだ。おそらくは、今も。

わたしの眼前に、小さな女の子が現れた。もちろん、想像上の産物である。だが、その女の子は実にリアルに

浮かび上がった。この家を離れることを拒んでいるように思えた。くだららぬ妄想であるといえばそれまでだが。

なぜ、男の子ではなく、女の子なのか?その妄想はこの時間割表の横にある壁を見たことで生まれたのだ。

大切にしていたポスターをはった家と離れる刹那、その子は何を思ったのだろう。答えなど分かる訳ないのだが、

必死に考えていた。

どんなポスターか?最後にそれをお見せする。しばらくお待ちいただきたい。




壁の外をみた。かなり薄暗くなっている。本当のリミットだ。帰らなければ。




古くとも美しい格子戸が残っていた。ガラスが割れていない。

                        これも不思議だ。私はここから外へ出た。





あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










ガソリン!!どうしよう!!











まあいい・・。













乗ってから考えよう。





いいのか、それで?でも、どうしようもない。こんなところにガソリンスタンドが

あるほうが不気味だ。


そう思い、私は入って来た側とは反対のこの扉から外へ出た。

三十年前の家屋に入ったためだろうか、時間の観念が消えていた。自分のバイクがとめたとおりに、

しかも同じ場所にあることが不思議に思えた。

エンジンがかかるだろうか?

大丈夫だ。



ガソリンよ、もて!






何事もないような音を立ててバイクは走り出した。このまま、人里まで続くことを心から祈る・・・・・・・








・・・・・・・・・・どっこいしょ〜!




そうは行かなかった
のだ。皆さんの期待通り。

それについては、また次回。







あ、忘れるところでした。私が「女の子」を想像したその根拠となるポスターをお目にかけましょう。

期待はずれかもしれません、そのときは許してください。


では、どうぞ。













この人たち、いったい、誰?このキャラクターは何??(分かった方は掲示板で教えてください。)

        


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