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失われた学校、村、道、鉄道を訪れた日の記録



     地底探検 第2回




朝の10時前からすでに異郷の地に私たちはいる。なんともいえない心地よさ。
レンタカーではあるが、車に乗って知らない土地を走る。
大阪と違い、地方都市は駅前大通を外れるとすぐに緑の世界へと入ることができる。

                  
道もすいている。さらにすばらしい。こんなところで人ごみ・渋滞を見たくはない。
渋滞やら行列は大阪にいるときで十分やんけ。
心にも隙間ができている。赤信号で止まっていても向かいの信号をゆったりと見ている。

あなたは赤信号でとまっているときどちらを見ているか。
  A 自分の進むべき赤信号を普通に見ている。  

  B 横の青信号を早く変われと思いつつみている。




Bを選ぶのは大阪人だけなのだろうか。



いきなり人口密度が激増した。
これまでの過疎がウソのようだ。目的の秋吉洞が近づいてきたことがわかる。すなわちそこは観光地であるからだ。
左右にみやげ物屋が並んでいるおなじみの観光道を通ると正面に岩山が見えてきた。
来た。子どものころからあこがれていた大洞窟にいよいよ入るのだ。
        



入り口は細長い裂け目状であった。最初にこの中に入った人の勇気はどんなものだろう。
そして狭い入り口の奥に別世界が広がっていたとき何を思ったろう。
21世紀の今見てもこの光景には驚愕をするのだから。



そう、そのなかはたしかに別世界であった。




   

天井を見た。奥知れぬ闇夜のごとき岩盤がそこにあった。
横をみた。そこは地底湖。
ほんの数メートル進んだだけなのに、そこには地上しか知らない私にとって未知の世界が広がっていた。





さらに興奮する看板があった。




本道からそれた上向きのコースだ。はしごを上っていく。そして備え付けの懐中電灯を使うのだ。
ただし追加料金300円。


ううむ・・・・・・・・・・いきたいに決まっているのだが、




・・・・・・・・・・・・・・・大阪人にとってこの「別料金」というのが曲者である。
理屈ではなく本能的にさけてしまう。

が、またタビロイドさんの言葉に結論を見た。
「今しかいけないでしょう。」


短いけど重い言葉。


300円を良心的に箱に入れて懐中電灯を片手に岩を登っていった。

 

うっかりすると頭をぶつけてしまいそうな狭い空間。
足元はヌルヌルで脚を滑らしそうだ。それが楽しかった。
と思ったら、思いっきりしりもちをついてしまった。それもまた喜びだった。
                          
                        冒険コースの一番上の地点で。

この小さな登りルートの頂上から下を見た。さっきまで歩いていた道が見える。
まさに未曾有の巨大な別世界である。l



冒険コースを終えた私たちはさらに歩いた。





私は子どものころから本の虫であった。
ありとあらゆるジャンルの本を大量に読んでいた(数学・機械系をのぞく)。
推理小説が好きで、自然・動物分野が好きで、SFが好きで、果ては政治経済分野の本までも読み、わかったつもりでいた。
中でもとある図鑑に載っていた「百枚皿」の写真に魅せられていた。
黄色の光に照らされ、鍾乳石が皿上に何百枚も積み重なっている光景だ。
子ども心にこの不思議な光景はどこだろう、そしていつか見てみたい、そう思っていた。
月日は流れ、この写真が私の記憶に占める位置も極小になっていた。


数十メートル歩いたとき、私の目に飛び込んできたもの。

「あれ、これ、どこかで見たことある。」


 


あなたは「あ、この光景、どこかで見たな」と日常に不思議な感覚を持ったことがあるだろう。
それはデジャブといって精神の錯覚に過ぎないのだが、そしてこの刹那、私も眼前の光景の記憶をデジャブと思っていたのだが、数歩歩くうちに遥か昔の記憶がよみがえってきた。
これは・・・・・・・・・・少年期にあこがれていた光景ではないか、そんな気がしてきた。
さらに数メートル進んだ。
「気がしてきた」は「確信」に変わった。

           

間違いない。
小学校4年生のとき、二か月分の小遣いをためて買いにいった「「自然」」という本にあった写真。
これだ!
「百枚皿」という秋芳洞を象徴する鍾乳石である。

980円の図鑑が私に与えてくれた冒険心。地球上にこんな不思議な光景があるのかと教えてくれたもの。
9歳の私が勉強机に座り必死で眼に焼き付けた景色。
あの写真のままだ。

天井から滴り落ちるしずくと、少しずつ滲み出す水が鍾乳石を形作り、何万年もかけてこの奇跡を作り出したのだ。
あの私のすぐそばにある石は何万歳だろう?

どうして私が秋芳洞にこだわっていたのか、この時ようやくわかった。
幼少期の原体験がここにあったのだ。

9歳の私の記憶が私を秋芳洞へ導いていたとこの時気付いた。



しばらく100枚のお皿を見つめていた。
が、次々人がやってくる。



さらにあるいた。


目に映る全てのものが素晴らしかった。



信じられない光景。
地底なのにどこまでも広大で、どこまでも神秘的な景色。                                                      



もう一つ、どうしても見たいものがあった。9歳の私の琴線を揺さぶったもの。

その名を「黄金柱」

                                        

          

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