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 ■読みきり■ 楽しい死のバーベキュー 
           
一話完結 


-------------------はしがき-------------------





それは・・・・・・・、




いつのことか



もう誰も覚えていない。





どこの出来事かの記録も存在しない。

ただ、北風の吹く非常に寒い季節だったことだけは誰かの記憶に残っている。
これはそんな謎に満ちた、そしてアホな男たちの物語である。





  -------第一幕  悲劇の幕開け--------

「バーベキューしようや。」誰かが言った。
「おお、いいねえ、しよう、しよう!」誰かが返事した。
「場所は?」
「せっかくやから、うんと遠くの誰も来ない山奥でやろうや。」また誰かが提案した。
「すげえ!そのアイディア!行こう、山奥へ行こう!なあ、みんな。」




こんなクソがつくくらい寒いときにそんなところへ行って大丈夫だろうか?
その言葉がのど元まででかかったが、私も好奇心が芽生えてきたため賛成した。
みんなと呼ばれた者たちもみんな異論はなかった。

スーパーで普通のバーベキューで使う道具と材料を買った。
普通の牛肉と野菜、それに炭。何もかもが普通だった。




ただ、季節と行く場所が普通ではない気がするが、気にしないことにした。





全員がバイクに乗り、目的地へ向かって進む。
出発して約30分。

さむ・・・・・。

早く、熱い肉と、それを焼く炭火で温まりたい。







どんどん山道に進む。
陽射しが残っていない。山の稜線は暗い夜空と区別がつかなくなっていた。
エンジン音の隙間をついて、谷底の水音が聞こえてくる。
なんとも言えずさびしい気持ちになってくる。

だが、我慢だ。もうすぐ焼肉だ、焼肉!





アスファルト道路が砂利道に変わった。さらにそれは泥道に変わった。
いったいどこまで行くのだろう。

川の流れがさらに近づいたところで一行はとまった。
平地になっていていかにもバーベキューをしやすい感じだ。
私たちは手ごろな石を拾い集めて椅子の代わりにした。
誰かが食器を並べ、誰かが野菜を川の水で洗い(これは私だ、水が冷たかった・・。)誰かが石を組んでかまどを作りだした。

いよいよ点火である。炭にチューブ式の着火剤をかけて、ライターの火を点けた。



さあ、いよいよバーベキューだ!いえい!





・・・・・・・・・・?




あんぎゃ?





・・・・・・・・・・・・・・・つかない・・・・・・・。




正確に言うと着火剤に火はつくのだが、それ以上は広がらないのだ。
「お前、下手なんや。俺に貸してみ。」誰かが言った。
「こうやってな、まず着火剤をまんべんなくかけるわけよ、な?それから全体に渡って火をつけて回ると・・・・・・・・・・・・ほうら、




・・・・・・・・・・・・ほうら・・・・・・・・・・・?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

点かない!


バシュバシュと音を立てて着火剤が燃えるだけで肝心の炭にはつかない。

「なんでや、これ!すっげえむかつくぜ、このライター!

彼は切れてライターのせいにしているが、完全に自分の技術がないだけだと思う。
が、そんなことを言っている場合ではない。寒くてしょうがないのだ。
そしてみんな餓え始めた。

「腹減った〜!早く火をつけようや。」
「おお、がんばろうや。今度はさ、頭を使おうぜ。」
「どうするん?」
「俺が火を着火剤につけたら、
いっせいにみんなで息を吹きかける
ねん。」

「おお、いいね〜、それ!」今にして思えば正しくないと分かるのだが、このときはみんな寒さと空腹で正常な判断力を失っていた。





    ----------第二幕   あほども--------

「行くぞ・・・・・・・・よおし・・・・・・つけたぞ、吹け!」


ふー!ふー!


みんな必死で吹きかけた・・・・・・・。





あなたの期待通り、火は瞬時に消えてしまった。当然だろう、四方から吹きかけたらどうしたってきえる。だが、私たちは愚かであった。




 --------第三幕  もっとあほども--------


「あかん!息の勢いがたりない!もっとがんばれ!」
「おう!!」(全員腰に手を当てて、反対の手のこぶしを振り上げていた。)
「よおし・・・つけたぞ、吹け!」
ふー!!ふー!!
結果はあなたの思ったとおりであった。

「ん?ピースケどうしたん??」
私はめまいがして、その場にへたり込んでいた。当たり前である。一気に息を吐いたらめまいぐらいはするだろう。

「どうする?」
「おれ、すっげえいい方法思いついた。」また誰かが言った。
「確か肉を買ったときに、ラードをもらったやろ?」たしかに売り場にあった無料配布のラードを大量に持ってきてしまった。使うあてがあったわけではないのだが、とりあえず無料なのだ。もらって帰るのが買い物の基本だろう。
(おお、幾千の大阪人の賛同の声が聴こえる!)
「そのラードをまず、この網に塗りたくる。」

「うん、うん。」みんな必死で聞いている。

「そしてやな、着火剤に火をつけるとその熱でラードが溶けて、落下する。すると炭に脂が回って着火剤とのシェイクによって、火が点きやすくなり、さらに網も同時にラードの熱で熱くなって肉が焼ける。」
「おお!おまえ、天才やな!」


---------第四幕  最悪の展開-----------

ぬるぬるぬるぬる・・・・・。
必死でラードを網に塗りたくった。
「よし、火をつけるぞ。」
バシュバシュ!さっきと同じように火が点き始めた。網が熱せられて白いラードが透き通り始める。
お!うまくいくのではないか?
バチ、バチ!
ラードが溶けて下に落ち始めた。

バチン!バチン!

火がはじける!
わお、いい感じ!
「よし、もう大丈夫や!」誰かが自信なさげに言った。誰も大丈夫とは思っていないが、お互いを励ますためにみんなも同意した。おそらくはこれも友情の一つであろう。
「よし、肉を網にのせようぜ!」
みんなほとんど冷肉と化したカルビやハラミを網に乗せた。

     


      ジュワ〜!







・・・・・・・・・・・・・・・・・・と誰かが口で言った。





肉の焼ける音はしなかった。火はほとんど点いていない。着火剤が申し訳程度に色づいているくらいである。
が、この時の私たちは自分を励ましたいばかりに、実にあほな行動にでた。
「そうや、火と肉の距離が近ければ肉は焼ける!物理的事実や!」
「そうや、そうや!」
石のかまどをどけて、網を着火剤に接触するように直置きしたのである。


---------第五幕  見事完成--------


じゅるじゅる・・・・・・・。なんともいえない音が聞こえてくる・・・・・・。
それは食欲とは程遠い感じだ。

「肉の色が変わらんなあ・・。なかなか焼けてくれない・・・。」誰かが言った。



「いや・・・・・・・・・・・・こいつはもう焼けている・・・・・・・・・・。」アホが言った。


が、私たちはみんな同意した。
「そうや、もう焼けてるねん、これは。」
「万が一焼けてなくても、牛は生焼けでも大丈夫やって、おかんが言ってたし。」(註:おかん=お母さん。大阪弁です。)
「よし、とりあえず1口目や。みんな乾杯の用意や。」
それぞれが紙コップにお茶をついだ。
「かんぱ〜い!」
全員お茶を飲み、
そして・・・・・
・・・・・・・あの肉を口にした・・・・・・・・・・!

---------第六幕 ゲロまず----------


「うげぼ!・・・・・・これ、何の味?」
「これは・・・・・・、生焼けの肉の上にラードと着火剤をトッピングした味やな。」
「あんまりうまくないな。」
「うん。あまりうまくない。」

「もう、正攻法でいこうや。」ようやく誰かがそれを口にした。
「もう一回、かまどを組みなおして、ちゃんと炭を小さいのから大きいのに火が移るようにして、それから着火剤を薄く塗ろうよ。」やはり彼は頭がいい。私たちの中でも最も冷静である。


すでに1時間がたっていた。
その間、みんな必死で息を吹きかけたりラードを塗ったりしていたのだ。
寒さがより強くなる。誰かの時計の温度計が5度を表示していた。
それ以上に、マジで腹が減っている・・・・・・・。

私はみなに言った。「よし、かまどができたで!着火剤、ぬるで・・・。なあ、着火剤・・貸してや。」


「あのさ、ピースケ。


いいにくいけど・・・・・・


着火剤がもうなくなってる
わ。使いすぎたな。」



「げ?!いくらなんでも炭だけでどうにもならんやろ。」
ライターで根気良く炭をあぶってみたら?」
「無理やろ。」

計画性がまったくなかった・・。
このままでは火をつけることはできない。
こんな夜遅くの山奥では着火剤を売ってる店もあるまい。
どうするのだ? この大量の肉は? この野菜は? それ以上に私たちの空腹と寒さは限界に達しようとしていた。




「よし、これしかないな。みんな、命を俺に預けるか?」誰かが言った。


命を預ける? いったいどういうことなのだ?




   ----------第七幕  死の・・・ --------


お詫び
一話完結のはずが、筆力のなさで二回に分けることになりました。まことに申し訳ありません。


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